職員のプライバシーもしっかり守りたい。介護現場で気をつけたい個人情報保護
入居者さんのプライバシーを守ることは、職員の義務です。
では、職員の個人情報は守られているでしょうか。
今回は、入居者さんが職員のプライバシーを侵害したケースを紹介します。
お互いが適切な距離感でいられるように、対処法も考えます。
目次
ご家族様からFacebook申請されることも。入居者さんからのプライバシー侵害
筆者の職場で起きた、入居者さんからのプライバシー侵害の実例をご紹介します。
●その1 福島旅行のことは話していないのに「あんただけハワイに行ってずるい!」と逆恨み
筆者が体験したケースです。
福島県に旅行した際、職場のお土産としてスパリゾートハワイアンズでお菓子を購入しました。
入居者さんには、誰にも話していません。
お土産を配った翌日、とある入居者さんの部屋にうかがうとなぜかそのゴミがありました。
「あんた、うちらだけここに閉じ込めておいて、自分だけ海外旅行とはいい身分だな!」
筆者は驚きました。
知らないはずの情報が漏れ、さらに入居者さんの認知症によって事実が曲解されているのです。
誠実に説明はしたのですが、入居者さんは声を大きくするばかりでした。
「そんなんだから、結婚できなんだぞ!」
まったく違う、筆者のさらなるプライベートを暴露してすっきりした入居者さんは「まあクッキーはおいしかったぞ、ありがとな」と笑顔になりました。
その笑顔に、筆者はぞっとしました。
●その2 Facebookアカウントにご家族様からの申請が!
ある職員はとても気さくで、入居者さんに自分の娘さんのことまで話してしまうひとでした。
娘さんが行っている部活動のことも毎日のように話しており、自身のFacebookでも紹介していました。
ある日、入居者さんのご家族様と思われるアカウントから友達申請がありました。
仕事の愚痴も書いたことがあったので、拒否したいのですが下手な対応をするわけにもいきません。
慌てて仕事の愚痴は消し、本名ではないアカウントを作り直したそうです。
どうして個人情報は漏れ、広まってしまうのか。女性特有の現場に鍵が
前章でご紹介したようなプライバシー侵害の原因は、以下の4つが考えられます。
- 〇現場の職員がうっかり入居者さんに話してしまう
- 〇刺激の少ない閉鎖的な環境で、入居者さんが面白い話を望んでいる
- 〇自由な生活をしている職員を、入居者さんがやっかんでいる
- 〇職員に好意があり、秘密を探ろうとしている
介護の現場では女性スタッフが多く、どうしても陰口や噂話がつきまといます。
自分だけが知り得た情報を、誰かに話してしまいたくなる気持ちは、人間なら少なからずあるものです。
ついうっかり、職員が入居者さんに話してしまうことで、ほかの職員へのプライバシー侵害が始まるのです。
あるいは、職員の会話に入居者さんが聞き耳を立てている場合もあります。
入居者さんは外出の機会が少なく、自由が制限されています。
そのため、施設の外の話や職員の変化に敏感で、日々刺激を求めている傾向があります。
入居者さんが入手した個人情報によっては、自由な生活をしている職員をうらやましく思い、やっかみの感情を持ちます。
さらに、認知症の入居者さんや耳が遠い入居者さんに情報が渡ると、あいまいな認識で噂が広がります。
結果、まったく身に覚えのない中傷が施設全体に広がることとなり、職員が傷つくトラブルに発展するのです。
もちろん、入居者さんが職員に好意を持っていれば前述のトラブルは回避されます。
しかし、「職員のことをもっと知って仲良くなりたい」という感情が生まれ、秘密を聞き出そうとするケースがあります。
情報の入手に成功した入居者さんは、「自分だけが好きなひとのプライベートを知っている」という優越感を誇示するために、ほかの入居者さんにわざと言いふらします。
ときには、ご家族様が職員を気に入り、個人的に近づこうとすることも。
前章で紹介したご家族様からのFacebook申請は、ご家族様が入居者さんを利用して職員の個人情報を引き出すことで、関係を深めようとしていたものでした。
プライバシー侵害から身を守るにはどうしたらよいのか、今から気をつけたいこと
職員の個人情報を保護するために、介護現場で気をつけたいことは以下の2つです。
- 〇知られてもかまわないことしか話さない
- 〇入居者さんの生活をもっと充実させ、職員へ関心を向かわせない
●知られてもかまわないことしか話さない
信用している職員からでも、自分の個人情報が漏れる可能性はゼロではありません。
知られたくない秘密は、絶対に介護現場では話さないようにしましょう。
とはいえ、職員や入居者さんと適切な関係をつくるには、ある程度の自己開示によって信頼を得る必要があります。
知られてもかまわないことと、知られたくないことを明確にし、会話に注意を払いましょう。
また、職員同士の噂話や悪口には参加しないようにしましょう。
誰かの意見に同意しただけで「〇〇さんも言っていた」と、入居者さんに伝える職員がいる可能性があります。
●入居者さんの生活をもっと充実させ、職員へ関心を向かわせない
入居者さんは、閉塞的な環境で不満を抱えていることが多いです。
その不満を取り除き、入居者さんの生活を充実させることができれば、職員への関心も薄くなるはずです。
入居者さんの楽しみや好奇心を引き出すためには、日々の状態をよく観察し、職員と共有する必要があります。
ひとりで考えるより改善点が見つかりやすくなるので、ぜひやってみてください。
入居者さんの前向きな話をすることで、職員同士の後ろ向きな話をする時間を減らすメリットもあります。
入居者さんとより良い関係を築くために
入居者さんは、施設内の生活で不自由を感じています。
入居者さんに妬まれる話、知られて嫌な気持ちになる話は、職員にもしないようにしましょう。
職員に関心を向かわせないように、入居者さんの生活を充実させることも重要です。
ほかの職員と一緒になって、入居者さんにできることを議論する時間を増やしましょう。
結果的に、職員の個人情報が保護され、プライバシー侵害の機会を減らすことが可能になります。
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執筆者
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俳句や文章を書く、現役介護福祉士。
サービス付き高齢者向け住宅で、訪問介護をしています。
入居者様ひとりひとりの人生に寄り添い、個性を失わせないような介護を目指して、日々邁進中です。
日々の実体験を踏まえ、現場に特化した目線で、皆様のお役に立てるような身近な介護情報をお届けしていきます!