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介護職員同士の人間関係での離職対策~離職を減らすための人事考課制度の活用

介護職は、一般的に離職率が高いというイメージがあります。
厚生労働省のデータをみると、2016年で16.7%。
全産業平均をみると11.4%ですから、やはり離職率が高いのは間違いないでしょう。
ここでは離職を減らすためのマネジメントについて、人間関係にスポットを当てて考えていきたいと思います。

介護職員の人間関係の実態について

介護職員の離職理由を見てみると、多い順番で「結婚・出産・育児」「法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」「職場の人間関係に問題があった」となっています。
人間関係は第3位で、離職者全体の24.7%となっています。
実に4人に1人が人間関係によって、離職していることになるのです。
この「人間関係」という結果に対して管理者などが想像するのは、
「介護職は、夜勤を含めた変則勤務があり業務量も多く、職員は疲弊して周りに気を配る余裕すらない状態なのかもしれない」
といったことかもしれません。
しかし、そういい切れるのでしょうか。
そもそも人間関係のマネジメントを「十分に行っている」と答えられる法人は、どれくらいいるのでしょうか。
管理者やリーダーによっては、人間関係はあくまでも個人の問題であり、法人が行うマネジメントとは関係がない、と考える方もいるでしょう。
確かに性格は、個人個人で合う合わないという問題はあるかもしれませんが、職務であるケアは、それぞれが協力して行うものですから、チームとしてまとまりをつくりだすことは可能といえます。
職員全員が自分自身の職責を理解し、ひとつの目的に向かうことができれば、個人の問題よりもチームワークを優先できる職場になるのではないかと思います。
次項では、管理者が意識しなければならない、人間関係とチームワークについてお伝えしていきたいと思います。

先輩職員が新人職員を教育するプリセプター制度の悪循環

たとえば、なかなか思うように業務が覚えられない職員がいるとしましょう。
先輩職員が丁寧に指導しているにも関わらず、新人職員はなかなか仕事を覚えてくれません。
この新人職員に悪気はまったくなく、一生懸命取り組もうとしているのですが、手際が悪いままです。
だんだん先輩職員もイライラしはじめ、口調も厳しくなっていきます。
最初は丁寧だった説明も荒っぽくなってきました。
そしてこの先輩職員は、周りにいる職員に「いつまでたっても仕事を覚えてくれない」と愚痴をこぼすようになります。
すると、周りの職員も同じような空気感になってしまい、いつしかこの新人職員の周りからほかの職員がいなくなってしまいました。
この状態を放置していると、ひょっとしたらこの空気を察知して、この新人職員は離職してしまうかもしれません。

現場では、こんな事例がそれほど珍しいことではないように思います。
先輩職員が新人職員の業務に就きながら指導する方法を「プリセプター制度」といいます。
このプリセプター制度は、指導する先輩職員も、自身の業務を見直せるという大きなメリットがある半面、通常業務以外の仕事が増えるというデメリットもあります
先ほどの事例でいいますと、このデメリットのほうが前面にでてしまったといえるのではないでしょうか。
先輩だからといって新人職員の教育係を任せきりにし、一人の職員に負担がかかりすぎると、目的が果たせないままこのような結果に至ってしまいます。
しかし実際には、こうした悪循環を招いている例が少なくないのが現状です。
このプリセプター制度については、きちんとしたシステムを整えてから運用していく必要があります。
次は、このプリセプター制度の運用方法についてお伝えしていきたいと思います。

新人職員の教育よりもまず既存職員の教育から

そもそも先輩職員は長く業務に携わっているため、ほとんどの業務を滞りなくこなせるのは当然のことです。
そんな先輩職員が教育係になるのは自然な流れだといえますが、だからといって、先輩であれば誰でも新人教育ができるかといえば、これはまた別の問題になります。
先輩職員で、人よりも効率的に業務をこなす人でも、人に業務を伝えることは苦手という人も少なくないでしょう。
こうした問題を解決するためには、現場のリーダーが中心となって、新人教育に当たる職員のための「標準マニュアル」を作成する必要があります。
教育係は、行きあたりばったりでできるほど簡単なものではありません。
そのため、教育係となる先輩職員の基準を定めたり、OFF-JT(職場外研修)を組み込むことも必要になるでしょう。
そしてこのマニュアルのなかで、最も大事にしなければならないポイントは、「事業所全体で教育していく」という姿勢を示すことであり、管理者はひとりが強い負担を感じることなくプリセプターを務められるよう配慮しなければなりません。

このような取り組みを行っていくことにより、プリセプターとなる先輩職員も、次第に事業所のために新人職員を育てなければならないという責任感が生まれてきます。
そしてこの気持ちが、職員の介護業務に対するモチベーションをあげていくためにはとても大切になるのです。
このように、新人職員の育成を行うためにはルーティン業務だけではなく、まずは既存職員に対してのしっかりとした教育システムが重要になるのです。

教育システムを具体的な評価につなげていくための人事考課制度

新人育成には欠かせないこの教育システムですが、これをつくるだけでは運営を軌道に乗せたり、離職防止につなげることはできません。
それは先ほどもお伝えしましたが、いくらプリセプターの標準マニュアルなどがあっても、指導にあたることによって先輩職員の負担が増してしまうことは確かだからです。
さらに新人職員は新しい仕事をどんどん吸収していって評価されますが、先輩職員は「できて当たりまえ」であり、指導という業務に対し評価はされません。
これでは、新人職員の離職は防げても、今度は先輩職員の離職が増えかねません。
そのため、新人職員を育成していく過程で、それらがきちんと評価につながる仕組みをつくっておく必要があるのです。
新人職員を指導育成することが自分自身の評価につながるなら、たとえ通常業務がプラスになったとしても、モチベーションを落とすことなく業務を行うことができます。
多くの法人では、これらを人事考課制度のなかに組み込んで、正当に評価ができるようにしています。
人事考課制度は、主に現場の上司が面談をして評価を行います。
面談では、プリセプターに対する評価はもちろんのこと、職員が抱えている悩みなども聞きだすようにすれば、課題を早期に発見することができ、解決に向けた行動をとることも可能になります。
人事考課制度を導入し運営が軌道に乗ってくると、指導は評価に変わり、職員の悩みも消化され、それらがやりがいとなってどんどん新しい発想も生まれてくるようになります。
冒頭の話に戻りますが、介護職員の離職原因に「法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」「職場の人間関係に問題があった」という内容が多く挙がっています。
この2つは相互に影響を及ぼしているように思えます。
人事考課制度をうまく活用して、人間関係での離職軽減に役立てていただきたいと思います。

まとめ

職員がスキルアップできるようなシステムが構築されているのならば、事業所運営に対する不満や人間関係に対する不満は随分軽減されます。
介護職員は、やりがいを感じたいと思い、介護の現場に入ってくる人がほとんどです。
そのやりがいを感じられるような職場であれば、必然的に職員間での連携も強化されていき、モチベーションを維持しながら業務に就くことができるでしょう。

参考:
厚生労働省 介護人材の確保について(2018年2月8日引用)
公益財団法人 介護労働安定センター 2016年度(平成28年度)介護労働実態調査結果(2018年2月8日引用)
厚生労働省 2016年(平成28年)雇用動向調査結果の概況(2018年2月8日引用)

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