中小の介護サービス事業所に必要な人材獲得経路~転職エージェントの活用について
介護人材不足のなか、人材の獲得に困っている介護サービス事業所は多くあります。
ハローワークや新聞折り込み求人に広告をだしても、なかなか求職者が集まらず、多くの事業所は頭を悩ませています。
そんななか、いま求職者側に増えているのが転職エージェントや転職サイトの利用です。
今回は、介護人材の獲得経路の一つ「転職エージェント」のメリットと、その利用方法についてお伝えしていきます。
目次
職員募集で多くの事業所が利用している採用経路の実態
福祉医療機構が行った調査によりますと、特別養護老人ホームが介護人材を獲得するのに利用している採用経路は、96.1%でハローワークが圧倒的に多くなっています。
次に多いのが職員からの紹介となっており、そのほかを見ていきますと、
- 「法人のホームページ」
- 「合同説明会参加・出展」
- 「学校訪問(就職課等)」
- 「資格取得実習受け入れ」
となっています。
実際に採用担当者に話を聞いてみると、ハローワークにはとりあえず求人をだし続けているが、ほとんど求職の連絡はないという事業所が多くあります。
特別養護老人ホームを運営している大規模法人であれば、介護福祉士や実務者研修などの資格取得実習受け入れを積極的に行い、いい人材であれば採用面接を受けるよう声をかけています。
しかし中小の事業所では、そもそも養成校からの実習受け入れの依頼はまったくありません。
また、合同説明会には多くの事業所が参加しますが、ここでも求職者が集まる事業所は大手がほとんどです。
大規模法人では、中小の事業所ではなかなか実現できないような企画を打ち出し、多くの求職者を集めています。
実際に中小の事業所では、さまざまな試みをしても人材を集めることができない、という苦しい実態があります。
そんななか、徐々に利用が増えてきている求人媒体が「転職エージェント」「転職サイト」の存在です。
まずはこれらの媒体がどのようなものなのか、解説していきましょう。
転職エージェントは求職者にメリットが多い
転職エージェントとは「人材紹介会社」のことで、求職者に対してキャリアカウンセリングを行い最適な職場を紹介する、というシステムになっています。
ちなみに「転職サイト」は、登録をすればすぐに自分で仕事を探すことができるもので、キャリアカウンセリングなどの「適性を測る」といったサービスはほとんどありません。
ただし介護転職サイトと呼ばれるものには、転職エージェントの機能を有したサイトも多数存在します。
なにより特筆すべきは、この転職エージェントには求職者にとって多くのメリットがある、という点です。
担当のアドバイザーから求人を提供してもらうだけではなく、求職者の希望などを確認しながら、その求職者にとってベストな求人を紹介してくれます。
また、担当のアドバイザーは地域にある介護サービス事業所の採用担当者と連携を図っているため、入職しなければわからないような内部事情まで把握していることも少なくありません。
つまり、雇用条件などの書類上の情報のほかに、職場の雰囲気や管理者の人柄などを考慮したうえで、求職者の希望や性格などにマッチしている介護サービス事業所を紹介することができるのです。
また、初めて介護業界に転職する求職者でしたら、介護業界で働くために必要なノウハウや履歴書の書き方、面接の心得まで教えてもらえます。
これだけのサービスを受けたとしても、求職者に料金がかかることはありません。
それどころか就職祝金まで支給している転職エージェントもあります。
転職エージェントへの報酬は「完全成功報酬型」と呼ばれ、紹介した求職者が採用されれば「紹介料」という形で介護サービス事業所から支払われることになっています。
介護サービス事業所においてもメリットの大きい転職エージェント
転職エージェントは、求職者にとってとてもメリットの大きいサービスですので、利用される方は増えているように思います。
実際に便利なサービスですから、今後も利用者数は増えていくでしょう。
事業者から見ると、求職者だけにメリットがあるように思うかもしれませんが、そんなことはありません。
なぜならこの転職エージェントは、「介護サービス事業所の希望をかなえるために存在している」といっても過言ではないからです。
求職者は、自分が働きたい職場を紹介してほしいと思っています。
しかし転職エージェントは、求職者が働きたいと思う職場をただ勧めるのではなく、採用が得られそうな職場をまずは紹介します。
もちろん求職者の希望がないがしろにされるわけではなく、「求職者」「介護サービス事業所」「転職エージェント」すべてがWin-Winの関係になることを柱としているのです。
さらに前述したとおり、この転職エージェントの利用は採用が決まった時点で料金が発生する「完全成功報酬型」のところが多く、事業所にとってはとても効率よく人材募集を行うことが可能といえるのです。
さまざまな条件のなかで求人をだすことが可能
介護サービス事業所によっては、正職員の求人ではなく、アルバイトやパート職員だけを募集しているところも多いと思います。
また、職員の配置を急いでいることから、やむを得ず派遣職員の導入を検討しているところも少なくないでしょう。
転職エージェントも、その特性は会社によって異なり、正職員の求人に強いところ、アルバイトやパート求人に強いところなどさまざまです。
派遣職員については、人材派遣業を運営されている会社になりますが、正職員やアルバイト、パートとともに、派遣についても紹介している転職エージェントもあります。
事業所が求める形態によって、これらをうまく活用していくと良いでしょう。
またその規模についても、全国的に展開する大手の転職エージェントから、地域限定の転職エージェントまであります。
地域にある転職エージェントであれば、その地域にある介護サービス事業所と密な連携をしているところもあり、介護職員に定評のあるエージェントなどもあります。
大手の転職エージェントでは、求職者数は多いですが、かなり多くの案件(事業所)も抱えているため、そこで求職者を獲得するのは確率的にどうしても低くなりがちです。
地域の転職エージェントであれば、求職者数は当然少なくなりますが、地域密着型ですので、その地域で働きたい求職者が現れれば当然紹介される確率も高くなります。
そうした転職エージェントの強みや特長を生かしながら、求人をだしていけばいいでしょう。
まずはインターネットを活用して、転職エージェントを探してみましょう。
求人者用のサイトには、必ず採用担当者向けのページが用意されています。
条件なども記されていますので、それらをしっかりと確認してから登録をしましょう。
簡単な情報を登録するだけで、転職エージェントから連絡があります。
その後、求める人材や条件といった詳細を相談することになります。
まとめ
スマートフォンなどの普及により、介護求人媒体にも変化がありました。
求職者にとっては、以前とくらべてより手軽に多くの介護求人を探せるようになったのです。
この転職エージェントの活用はこれからもどんどん増えてくるといえます。
特に中小の介護サービス事業所にとっては、採用経路も増やしていく必要がありますので、ぜひとも活用していただきたいサービスといえます。
参考:
独立行政法人福祉医療機構 「介護人材」に関するアンケート結果(2018年2月9日引用)