訪問看護師が伝授!多職種間でも良好な関係を築くためのポイントは3つ
よりよい医療・介護の実現のためには多職種連携は欠かせませんが、立場や考え方の違う職種同士が足並みをそろえるのは難しいものです
では、どうすれば多職種連携はうまくいくのでしょうか。
今回は良好な多職種連携に必要なポイントと、筆者が行っている工夫をご紹介します。
目次
相手を知って尊重する~他職種の理解~
多職種が連携するのはなぜ難しいのでしょうか。
筆者は看護師ですので、看護師になるために必要な教育を受けてきました。
それは他職種も同様であり、それぞれが職種特有の考え方をもとに仕事をしています。
だからこそ「他」職種が増えるほど「多」職種連携は難しくなるのです。
それでも多職種連携が必要な理由は、ひとりの患者・利用者さんに多職種が関わる意味を考えると分かるのではないでしょうか。
●多職種が関わると総合力がアップする
事例)次郎さん(仮名)90歳
脳梗塞の後遺症で右まひと嚥下障がいがある。
家族と暮らしているが、日中は独居。
「自分でできることはしたい」「最後まで家で暮らしたい」という強い希望がある。
次郎さんにどんな職種の関わりが必要と考えられるか、表にまとめてみました。
職種 | 支援内容 |
---|---|
医師 | 再梗塞予防の薬物療法、日常生活指導など |
歯科医師 | 嚥下機能評価、義歯の調整や虫歯治療 |
ケアマネジャー | ケアプラン作成 |
看護師 | 状態観察など |
理学療法士・作業療法士 | 日常生活にかかわる動作のリハビリテーション |
言語聴覚士 | 嚥下訓練や、食べやすい食事形態の工夫やアドバイスなど |
介護士 | 掃除や調理など |
施設スタッフ | デイサービスやショートステイ |
次郎さんのようにまひのある方には作業療法士や理学療法士、嚥下障害には言語聴覚士というように、専門の職種による評価と訓練が求められます。
また、日中は独居なので、施設の利用も検討されるでしょう。
どんなに個人のスキルが高くても、ひとりでできることには限界があります。
他職種が持つ専門性を理解、尊重して協働することは、ひいては患者・利用者さんの利益になるのです。
総合力は自分ひとりより、多職種が連携したときのほうがずっと上です。
自分が持っている情報は提供しよう!情報共有は良好なコミュニケーションの第一歩
筆者が多職種間にぎくしゃくした空気を感じるのは、情報共有ができていないときに多いです。
例えばスポーツをするとき、チームメイトに情報や作戦を伝えないことはありません。多職種はチームメイトでもあるのですから、患者・利用者さんについての情報は共有する必要があるのです。
また、情報を伝えるとき、筆者は職種によって内容を変えることはしていません。
全員につながるよう、専門用語を使いすぎないように注意しながら、基本的にメンバー全員に同じ情報を伝達します。
これで「私は聞いていない」という不必要な誤解を避けることができますし、相談もしやすくなります。
自分から積極的に発信するのは少々勇気がいりますが、経験上、たくさんのやりとりをしたケースで多職種連携がうまくいかなかったケースはありません。
多職種間の共通の関心は患者・利用者さんのことですから、情報提供は多職種間のコミュニケーションツールには最適といえます。
●在宅では電話ではなく、極力文章での連絡にする
病院など同じ組織間なら、連絡手段は電話が一番早くて確実ですが、在宅ではそうとはいえません。
異なる事業所から集まったメンバーがチームを組んでいるのですから、相手の都合に配慮する必要があるからです。
筆者は緊急時以外、極力電話連絡を控えており、できるだけ伝言もしません。
伝言を頼み、間に人を挟んでしまうと、どうしてもニュアンスが変わってしまうからです。
文章ではうまく伝えられないという方もいるかもしれませんが、筆者はこれを「必要な情報を的確に伝える練習」と考えています。
また、文章には報告だけなのか、確認してほしいことなのか、折り返し連絡が欲しいのかを明記し、自分に連絡がつく時間をいくつか提示しています。
実際に筆者はこの方法で行き違いになることもなく、スムーズな連携がとれています。
「私の価値観」になっていませんか?多職種の共通目標は「患者・利用者さんがどうしたいか」
多職種連携がうまくいかない最大の要因、それはそれぞれが自分の価値観で行動してしまうことにあります。
患者・利用者さんになにか問題が起きたとき、関わっている人全員が解決に向けて行動しようとします。
ところが、他職種の理解の項で述べたように、立場が違えば意見も違うものです。
意見が対立し、問題解決への方法が一致しないことも良くあります。
もちろん、患者・利用者さんを思う気持ちがあればこそ起こる対立でもあるのですが、一度原点に戻って考えてみてください。
その意見は「患者・利用者さんがどうしたいか」が根底にあるでしょうか。
筆者もですが、いつの間にか「自分がどうしたいか」になってしまうことがあります。
たとえば、お風呂が嫌いでシャワーしか浴びてこなかった人に、入浴の利点を力説して「入浴させたい」というのは、患者・利用者さんのためでしょうか。
お風呂嫌いな方が、お風呂でリラックスできるとは考えにくいです。
にもかかわらず、「入浴はいいもの」という自分の価値観を押しつけているだけではないでしょうか。
多職種がうまく連携するためには、共通の目標を持つことが必要であり、その目標の中心は患者・利用者さんでなければなりません。
問題解決に向けて意見に相違が生じたら、目標は何だったのかを全員で確認することが大切です。
まとめ
一人ひとりが自分の職種に与えられた役割を遂行し、チームのことを考えて行動すれば、意識せずともいつのまにか良い連携が取れているものです。
しかし日本看護協会では、多職種がサービスを提供する際の課題の特徴として、対立を避けたいという思いや相手の立場への配慮や遠慮から発言や提案をあきらめてしまうことをあげています。
連携がうまくいっていないときこそ、積極的に自らチームに働きかけてみてはいかが
でしょうか。
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参考:
日本看護協会 多職種連携と倫理(2018年2月3日引用)