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訪問介護の課題。それはホームヘルパーとご利用者の適切な関係づくり。最新現場の取り組み

訪問介護では基本的にヘルパーが単独でご利用者宅を訪問します。
ヘルパーの仕事の様子を、事業所側がリアルタイムで確認することは難しいことです。
つまり事業所は、ヘルパーとの信頼関係が成り立ったうえで、活動をお願いしていることになります。
今回は、そんなヘルパーとご利用者さんとの適切な関係づくりと、そのために必要な事業所のケア、そしてヘルパーの介護力向上のために現場で取り組んでいる具体例をご紹介していきます。

マンツーマンでの介護のメリット、デメリット

筆者が訪問介護ヘルパーとして働き始めたとき、「ヘルパーにとって在宅介護は、とてもぜいたくな業務だ」と感じました。
通所や入所施設での勤務経験から「ひとりのご利用者と向き合うことができる」訪問介護をそう感じたのです。
訪問介護のメリットはほかにもあります。
マンツーマンのケアでは、ご利用者と「顔が見える関係」をつくりやすく、その結果ご利用者の変化を細かく捉えることが可能になります。
また、ご利用者とお付き合いをする期間が長くなれば、ケアにも慣れてご利用者の癖や物の配置、ケアするときの注意点などをしっかり把握できるので、介護の動きもスムーズになります。
一方デメリットとしては二つほど挙げられ、一つはご利用者とヘルパーが個人的に関わりすぎてしまう可能性が高くなることでしょう。
個人としての関りが深くなることで、ときにはご利用者を依存的にさせてしまうことがあるのです。
なかには「ヘルパーの○○さんが休みなら誰も来なくて良い」という考えをもってしまい、ほかのヘルパーを強く拒絶される方もいます。
そしてもう一つのデメリットは、もしヘルパーが虐待などを行っていても発見しにくいという点です。
どちらもマンツーマンでの介護で第三者の目がないことが問題となってしまうケースです。
そんなメリットとデメリットですが、これらはまさにコインの表と裏の関係といえます。
マンツーマンでは、ご利用者との距離を縮めやすい一方、ほんの少し距離感を間違えただけでご利用者を依存的にさせたり、虐待などの重大な状況を見えづらくさせるなど、その「加減」によっては良いほうにも悪いほうにも作用するからです。
そんなヘルパーとご利用者との距離を適切に保ち、良いケアを提供するにはどうすれば良いのでしょうか。
まずは事業所の取り組みから考えていきましょう。

ヘルパーとご利用者の良い関係づくりへ介護事業所の取り組み

メリットを高め、デメリットをなくす努力

前述したように、事業所はヘルパーが活動中にどのようなケアを行っているかリアルタイムで確認することはできません。
そのため事業所のサービス提供責任者は、積極的にヘルパーと対話し現状の把握に努める必要があります。
ヘルパーが指示書通りにケアを行っているか、ご利用者とヘルパーとの関係はどうなっているか、適切なケアの提供のためにこうした対話は欠かせません。
しかし、ご利用者に目立った問題がない場合、どうしてもヘルパーとの連絡は少なくなりがちです。
事業所側からの介護指示をヘルパーがきちんと理解しないままケアにあたってしまうということもあり、そうしたことを防ぐためにもサービス提供責任者はこまめにヘルパーとコミュニケーションを取って、「なぜそのケアが必要なのか」を説明していく必要があります。
また、実際にケアにあたっているヘルパーからの情報を、適宜ケアマネジャーと共有していくことも大切です。
ご利用者の状態は日々変化していき、どんなに良いケアプランであったとしても、最新の情報をもとに、ケア内容の修正を行っていかなければなりません。
こうしたコミュニケーション不足を解消し、ヘルパーを含むご利用者の現状を把握するために、事業所側は以下のような対策を行っています。

  • ●複数のヘルパーが訪問するシフトづくり
  • ●長期間同じヘルパーが担当しないように入れ替えをする
  • ●サービス提供責任者が訪問に入って状況を確認する

これらの対策の目的は多角的な視点でご利用者の様子を観察することです。
特定のヘルパーと関係が深まることを避け、介護指示書に変更が生じていないか、ヘルパーが介護指示書の意図をしっかりと理解して、サービスを提供しているかなどを見定めます。
このような対策によって、ヘルパーとのコミュニケーションを重視し、個々の「介護力」を高める意識を、事業所側も再認識することができます。
ご利用者に、より良いケアを提供するために、事業所はこうした「知る努力」を強く求められるのです。

ヘルパーの介護力を高める取り組み

ヘルパー側から訪問介護というケアを考えてみましょう。
訪問介護では、ヘルパーはひとりでご利用者のお宅に伺う場合がほとんどです。
ひとりでの仕事が中心となるヘルパーの不安とは、一体どんなものでしょうか。
「自分のケアのやり方は間違えていないだろうか」
「こんなとき、ほかのヘルパーはどうしているのだろうか」
「急になにか問題が起きたとき、自分ひとりで対応できるだろうか」
訪問介護ではデイサービスや入所施設のように、すぐそばに相談できる人はいません。
「ちょっと手伝って」と助けを求めることもできません。
なかには孤立感を持ってしまうヘルパーもいるため、そんなヘルパーの孤立を防ぐ手立てが必要になってきます。
そこで事業所側は、積極的に意見をだしてもらえる雰囲気や場所をつくり、ヘルパーが抱える不安や心配ごと、改善するための意見などに耳を傾け、それらをお互いが共有できるように工夫をすることが大切です。
以下に、その具体的な取り組みを二つ挙げてみます。

●ヘルパー同士が意見交換できる場を

担当者会議とは別に、担当ヘルパーが集まってご利用者についての意見交換をするカンファレンスを実施することも有効です。
ヘルパーは個人での仕事が多い関係で、同じご利用者を担当していても「直接会話するのは初めて」という場合がほとんどです。
カンファレンスを実施するには、ヘルパーのシフト調整、カンファレンス参加時の給与はどうするかなど課題も多くあります。
しかし、実際にヘルパーが顔を合わせて自分の意見を出し合った結果「ご利用者の現状」を明確に捉えることができます。
カンファレンスでだされる意見は、担当者会議とは違い、ご利用者目線からの意見ともいえます。
そしてこれらの意見をもとに、サービス提供責任者が足を運び、ご利用者のケアを行うことで、現状をより正確に確認することができ、サービス内容の見直しも可能になります。

●介護研修会の実施

ヘルパーのなかには、自分が提供している介護技術に不安を持つヘルパーもいます。
きちんとした方法でケアを行わないことは、ご利用者を危険な目に遭わせてしまうことにもつながります。
また、誤ったケア方法はヘルパーの腰や肩を痛めてしまう原因ともなり、貴重な戦力を失うことにもなりかねません。
こうしたことを防ぐために、介護研修会の実施はとても有効です。
また担当者別の垣根を越えてヘルパー同士が交流する場にもできます。
ヘルパー同士で「こんなときはこうしている」という意見交換を行うことで、対処法を知ることができたり、自分のケアを客観視する良いきっかけにもなるでしょう。
研修会の内容はトランスファー、排泄介助、認知症状への対応など、事前にヘルパーからアンケートをとっておくと、ヘルパーが抱えている悩みを知る手立てにもなります。
ヘルパー同士の横のつながりをつくる課程は、ヘルパーと事業所との連携を強めることにも活用できるのです。

まとめ

施設介護の職場では人間関係に悩まされることも多く、単独で行う訪問介護は「ひとりで仕事ができるのでいい」という声をよく聞きます。
しかし「ひとりでやれる」ことは「好き勝手やっていい」ということではありません。
訪問介護は、ヘルパー活動という「点」が、情報交換という「線」でひとつになり初めて提供できるケアです。
たすきをつなぐ駅伝のように、個別に活動するヘルパーがひとつのチームという意識をもつことによって、結果を左右することになるのです。

参照:
ホームヘルパーQ&A(日本ホームヘルパー協会)(2018年2月14日参照)
介護従事者等の現状②(厚生労働省)(2018年2月14日参照)

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