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認知症

認知症ケアにAIを活用できる?予防や介護に役立つテクノロジーの例をご紹介

介護ロボットをはじめとして、介護の手助けをしてくれるテクノロジーは続々と開発されています。
認知症の予防や介護において、AIをはじめとする技術を活用する試みも始まっています。
介護施設での導入を検討することはもちろん、利用者さんが在宅へ戻るときに、ご家族へ選択肢を提示することができるようになります。
今回は、認知症ケアで活躍するテクノロジーについてご紹介します。

認知症ケアで活躍するテクノロジー

認知症支援のテクノロジー 1:コミュニケーションロボット

認知症の予防や進行防止には、社会的に孤立しないことや会話の機会を持つことが大切になります。
しかし、慢性的な人手不足に悩まされている施設も多く、最低限の介助をするのが精一杯になっている場合もあるでしょう。
高齢者や認知症の方の支援において注目されているコミュニケーションロボットを2つご紹介します。

●トヨタ自動車の傾聴・対話ロボット「ポコビィ」

トヨタ自動車の傾聴・対話ロボット「ポコビィ」
引用:トヨタ自動車

トヨタ自動車は、国立長寿医療研究センターの監修のもと、「ポコビィ」というロボットを開発しました。
ポコビィは、動物のぬいぐるみのようなロボットであり、マイクやカメラが内臓されています。
高齢者の毎日の出来事について聞いたり、思い出話を聞いたり、スケジュールをタイムリーにお知らせしてくれたりします。
相手の目を見て話を聞き、文脈や感情を理解して、自然な間で応答することも可能です。
会話では、カウンセリングでも使われている「マイクロ技法」を応用し、傾聴・対話を行うようになっています。
認知症の発症リスクを高める要因として、「社会的孤立」が挙げられます。
ポコビィのような傾聴ロボットとの会話の増加によって、孤立感が和らぎ、認知症の発症や進行を防ぐことが期待されます。

トヨタ:高齢者のためのロボット ポコビィ

●レクの司会やダンスもできるロボット「パルロ」

レクの司会やダンスもできるロボット「パルロ」
引用:富士ソフト

パルロは、介護施設や病院にも導入実績の多い、人工知能テクノロジーを活用したロボットです。
さまざまな日常会話ができるロボットであり、会話した時刻と内容を記憶します。
過去に話した内容も覚えているため、それを話題として提供することで、会話が弾んでいきます。
高齢者と会話をしながら顔や名前、性別、生年月日を覚えていくこともでき、積極的に話しかけてくれます。
また、話をするだけでなく、レクで司会の役割を担ったり、ダンスやクイズ、ゲームをしたりすることも可能です。
旗揚げゲーム、ご当地クイズ、体操など、さまざまなレクの司会を担うことができるため、介護士の負担軽減にもつながります
会話や運動が減ると認知症が進行するといわれていますが、パルロがいれば会話や活動のきっかけになります。
購入プランだけでなく、レンタルプランもあるため、介護施設で使ってみて利用者さんの反応を確かめることも可能です。

FUJISOFT:palro

認知症支援のテクノロジー 2:見守り

認知症の方は徘徊することがありますが、特に在宅介護の場合に自宅の外を探すとなれば、介護者にとって負担となります。
高齢者や認知症の方の見守りに使える製品も増えてきているため、ライフスタイルに合ったものを検討してみると良いでしょう

●認知症の方の徘徊対策に役立つGPS端末「iTSUMO」

認知症の方の徘徊対策に役立つGPS端末「iTSUMO」
引用:アーバン警備保障株式会社

iTSUMOは、GPS端末であり、認知症の方の居場所を家族に知らせてくれます。
ベルトや靴、バッグ、杖など、いつも身につけるものに装着することで、徘徊してしまったとしても居場所を特定できます。
居場所はメールで知らせてもらうか、地図上に表示させることが可能です。
タブレット端末、スマートフォン、パソコンから居場所を確認でき、指定したエリアの範囲外に出ると通知される仕組みになっています。
なお、ケアマネジャーがiTSUMOの使用をケアプランに含めることで、介護保険を使って利用できるようになります

iTSUMO:iTSUMOとは

●小さなボタンが位置情報をとらえる「Me-MAMORIO」

小さなボタンが位置情報をとらえる「Me-MAMORIO」
引用:MAMORIO株式会社

製薬会社のエーザイとMAMORIOが共同で開発した「Me-MAMORIO」は、ボタン型のデバイスであり、認知症の方の見守りに役立ちます。
GPS内臓のデバイスでは大きさが気になる場合も、ボタン型であればサイズが小さく目立ちません
Bluetooth4.0を搭載しており、介護者が居場所を確認することができます。
位置情報を知るには、スマートフォンにアプリケーションをインストールする必要があり、地域に設置された固定受信装置に近づいたときに認識されます。
認知症の方が徘徊してしまったときに、どこにいるのかわかる仕組みになっています。
また、Me-MAMORIOは高齢者や認知症の方だけを対象としたサービスではなく、鍵やバッグ、メガネケースなどにつけて落とし物を防ぐ目的でも使用できます。

MAMORIO:製品トップ

認知症支援のテクノロジー 3:介護者の支援

認知症ケアにおいては、ご本人だけでなく、介護者の支援にも目を向ける必要があります。
介護者・介護士の負担を軽減するアシスト機器も増えていますが、AIの用途は幅広いです。
次に、介護者の支援にAIを応用する試みについてご紹介します。

●動画を用いたユマニチュードの技術指導

動画を用いたユマニチュードの技術指導
引用:株式会社エクサウィザーズ

認知症のケア技法であるユマニチュードは、介護士が習得しておきたい技術のひとつです。
株式会社エクサウィザーズでは、ケアの場面を撮影した動画をもとに、ベテランの指導者が遠隔でアドバイスするサービスを提供しています。
このアドバイスを蓄積していくことで、将来的にはAIを用いた助言を可能にする見込みとなっています。
介護士の認知症ケアの技術を高めていきたいものの、研修に参加したり、直接指導したりする時間が取れない施設では、このようなサービスを利用することも視野に入れてみましょう。

エクサウィザーズ:ユマニチュード®の技術指導

●学習支援や人材育成に役立つ「AIさくらさん」

学習支援や人材育成に役立つ「AIさくらさん」
引用:株式会社ティファナ・ドットコム

「AIさくらさん」は、一般企業でも用いられている人工知能を搭載したシステム。
音声による接客、コールセンター業務など、さまざまな仕事を担っています。
介護現場では、AIさくらさんのデータベースを、介護士を育成するツールとして活用することも可能です。
そして、日本語、英語、中国語、韓国語に対応可能となっているため、外国人労働者に対する教育にも応用できるでしょう。
また、介護に関して必要な情報があれば、音声やテキストで質問することによって、すぐに回答が得られるため、効率よく業務を進められます。
データベースは更新可能であるため、内容を陳腐化させず、人材育成のツールとして使用していくことが可能となります。

AIさくらさん:【人工知能(AI)×介護】AIさくらさんは介護業界における人材不足を解決します!

テクノロジーを有効活用して上手な認知症ケアを

介護現場では人手不足に陥っていることが少なくありませんが、テクノロジーを上手に活用すると、負担が軽減される可能性があります。
すでに普及しているもの、現在開発中のものがありますが、今後も認知症ケアのための技術は続々と登場してくるでしょう。
認知症ケアに関する新しい情報を収集しながら、ニーズに応じて導入を検討してみてください。

なお、AIの活用に関する法整備についてはこちら(医療分野におけるAI活用の法整備はここまで進んでいる)をご参照ください。

AIが作成するケアプランについて知りたい方はこちら(AIによるケアプラン作成の現状と将来性。AIはケアプランをどこまで作れるのか?)をご一読ください。

  • 執筆者

    高木雪絵

  • 作業療法士の資格取得後、介護老人保健施設で脳卒中や認知症の方のリハビリに従事。その後、病院にて外来リハビリを経験し、特に発達障害の子どもの療育に携わる。
    勉強会や学会等に足を運び、新しい知見を吸収しながら臨床業務に当たっていた。現在はフリーライターに転身し、医療や介護に関わる記事の執筆や取材等を中心に活動しています。

    保有資格:作業療法士、作業療法学修士

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