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ケアマネジャーの雇用確保と離職対策のために管理者が行うポイント

6年後の居宅介護支援事業所の管理者要件厳格化に向けて、ケアマネジャーの雇用確保と離職対策を考えておかねばなりません。
特に特定事業所加算を取得していない小規模事業所については、厳しい時代がやってくると考えておく必要があります。

ケアマネジャーの雇用確保と離職対策

ケアマネジャーの仕事には魅力があるのか

ケアマネジャーの仕事には魅力があるのか

介護保険制度が改正されるなかで、ケアマネジャーに対する処遇や業務についても大きく変わってきました。
介護支援事業所においてケアマネジャーの雇用確保が難しくなっている現在において、ケアマネジャーがどのように捉えられているか見ていきます。

●ケアマネジャーの受験者数の推移と資格の魅力

2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度
受験者数 134,539人 124,585人 131,560人 49,332人 30,509人
合格率 15.6% 13.1% 21.5% 10.1% 18.5%

※介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況

ケアマネジャーの受験者数と合格者についてまとめてみました。
このデータを見てもおわかりの通り、2018年度(平成30年度)試験より急激に受験者数が減少していることがわかります。
この年度は、受験要件が厳格化され、それまで認められていた「介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)」で実務経験5年が認められなくなったからだといわれています。
その次の2019年度試験では、さらに減少しています。
2015年度とくらべると約10万人減であることがわかります。
この状況によって「介護報酬でケアマネジャーは処遇改善が受けられない」「負担感が大きい」といったことが、厚生労働省の社会保障審議会でも議題にあがるようになりました。
また2017年より介護支援専門員の研修は新カリキュラムとなって、研修時間が87時間に伸びました。
主任ケアマネジャーについても5年更新制になり、負担感が増したことも影響していると考えられます。

●ケアマネジャーは処遇面で魅力を感じられるのか

平成29年 平成30年
介護支援専門員の平均給与額 342,770円 350,320円
生活相談員等の平均給与額 312,390円 321,080円
介護職員の平均給与額 290,120円 300,970円

※介護従事者等の平均給与額等(月給者)※加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所の平均

厚生労働省の公表によりますと介護支援専門員の報酬は、上記の通りとなっています。
このデータは、全国の介護老人福祉施設や居宅介護支援事業所から集められたもので、「基本給」に含めて、「手当」「賞与」「残業代」も含まれた平均給与額となっています。
念のために生活相談員や介護職員の給与額も併記していますが、介護支援専門員の給与額は福祉事業所の中では看護師に次いで高くなっています。
このデータは「加算を取得している事業所」であることを考慮しておく必要があります。
加算を取得していない事業所は今後、基本報酬が下げられることが懸念されていますので、雇用促進が難しくなる可能性があります。
処遇改善はもちろんのこと、業務負担の軽減についても改善が期待されています。

ケアマネジャーの雇用確保が難しくなる3つの理由

ケアマネジャーの雇用確保が難しくなる3つの理由

  • ○過酷な労働環境
  • ○責任が重い
  • ○スキルアップの仕組みがない

ケアマネジャーは今後報酬面だけではなく、上記3つの理由によって、雇用確保が難しくなってくると考えておかねばなりません。
その理由をしっかりと理解した上で、今後の雇用確保対策を検討しなければなりません。

●過酷な労働環境

ケアマネジャーの事務負担が大きいことは以前から指摘され続けてきたことですが、厚生労働省でもようやく労働環境の改善について議論が始まっています。
それは間違いなく、介護支援専門員試験の受験者数が激減したからだと考えられます。
2019年10月に開催された「第83回社会保障審議会介護保険部会」には、日本経済団体連合会の常務理事である井上隆氏より「整備書類の削減」「手続きの簡素化」「IT化」などを要望する意見が提出されています。
過酷な労働環境の中で、十分にケアマネジャーの専門性が発揮されていないことが懸念されています。

●責任が重い

特定事業所加算を取得するために、ケア会議の開催、病院の医師や看護師、相談員との連携、事業所と家族間でのサービス調整、必要書類の作成など、負担となる業務は山のようにあります。
介護現場の中心には必ずケアマネジャーが存在します。
介護サービス事業所からすれば、現場において頼りになるのはケアマネジャーです。
それらの業務ためにスキルを身に付けて、磨き上げていかねばなりません。
そのため「責任がかなり重い」と感じるケアマネジャーも少なくないのです。
時間内で業務を終えることができず、残業しなければならないことも多くなってしまう現状があります。

●スキルアップの仕組みがない

ケアマネジャーには現任研修や更新研修が義務化されてはいますが、あくまで最低限の研修であって、これがスキルアップのための仕組みであるとは言い切れません。
これらの研修は、講師からの一方的な講義になりがちですので、研修の内容については厚生労働省においても懸念されています。
そのため地域包括支援センターによる地域ケア会議が、ケアマネジャーのスキルアップの場の一つであると考えられています。
この地域ケア会議は活発化してはいるのですが、さまざまな会議が行われていることから混乱が生じている地域も存在します。
地域ケア会議の在り方については、今後も議論を深めていく必要があります。

ケアマネジャーの雇用確保と離職対策のために

ケアマネジャーの雇用確保と離職対策のために

  • ○スキルアップの仕組みづくり
  • ○主任ケアマネジャー研修受講の推進
  • ○特定事業所加算の積極的な取得

ケアマネジャーの資格の魅力が低下しているなかですが、各事業所において雇用確保と離職対策にはしっかりと取り組んでおかねばなりません。
管理者要件の厳格化については先送りとなりましたが、そのための準備をしておかないと、事業所の存続に関わる問題に発展しかねないからです。
そのポイントとして3点お伝えします。

●スキルアップの仕組みづくり

居宅介護支援事業所に配置されているケアマネジャーの人材育成に取り組んでいくことがとても大切になります。
もちろん地域ケア会議など、スキルアップにつながる地域連携も必要になりますが、日常的に必要になるケアマネジメントについては事業所内での取り組みが重要です。
また地域で行われている各種研修会については、積極的に参加できるようにしておかねばなりません。
実践的な研修の場においては、経験豊富な主任ケアマネジャーなどからスーパービジョンを受けることができますので、成長のよい機会となるでしょう。

●主任ケアマネジャー研修受講の推進

主任ケアマネジャーになるには、70時間の研修を受講する必要があり、更新時においては46時間の研修を受講する必要があります。
居宅介護支援事業所が大規模の法人であるような場合であれば、研修受講することもそれほど難しくないかもしれません。
しかし個人や少人数の居宅介護支援事業所であれば、業務を優先して研修受講できないということもあるでしょう。
そのため主任ケアマネジャー研修受講を推進していくために、複数のケアマネジャーを確保したり、地域の事業所や地域包括支援センターと連携しておくことが必要です。
ケアマネジャー育成に積極的であれば、スキルアップできる仕組みが構築されているとして、雇用推進の上においてもPRできる材料となります。

●特定事業所加算の積極的な取得

特定事業所加算Ⅰ 特定事業所加算Ⅱ 特定事業所加算Ⅲ
2017年(平成29年) 3.1% 35.3% 14.2%
2018年(平成30年) 3.0% 37.2% 13.9%

※特定事業所加算の取得状況

特定事業所加算の取得は、主任ケアマネジャーの配置や常勤専従のケアマネジャーの配置、24時間の連絡体制、計画的な研修など高いハードルがあります。
しかし報酬を引き上げるものとなりますから、今後ケアマネジャーが就職や転職する上での条件となることは間違いありません。
また特定事業所加算を取得している事業所においては、地域の事例検討会議などにも参加できますので、スキルアップすることも可能です。
個人の居宅介護支援事業所においても、まずは特定事業所加算Ⅲの取得を目指し、雇用を進めるなかで特定事業所加算Ⅱの取得を検討することが大事です。
まだまだ加算取得している事業所は多くはありませんが、管理者要件の厳格化も明確にされていますので、これから必然的に取り組んでいかねばならないことなのです。

まとめ

ケアマネジャーの雇用確保と離職対策は、これからの居宅介護支援事業所の運営を行う上で管理者が行わねばならない超重要課題であることは間違いありません。
管理者要件の厳格化は6年間の先延ばしとなりましたが、この6年後に向けて取り組んでおくことで安定した運営につながります。
そういう意味において居宅介護支援事業所は、6年後が大きな分岐点になるのではないでしょうか。

参考:
厚生労働省 2018年度(平成30年度)介護従事者処遇状況等調査結果.(2020年1月21日引用)
厚生労働省 居宅介護支援事業所および介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究事業.(2020年1月21日引用)
厚生労働省 介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について.(2020年1月21日引用)
厚生労働省 居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究事業.(2020年1月21日引用)
日本経済団体連合会 常務理事 井上隆氏から社会保障審議会に向けての意見提出.(2020年1月21日引用)
ケアマネジャーの資質の向上のための方策等に関する調査研究事業.(2020年1月21日引用)
厚生労働省 主任介護支援専門員研修ガイドライン.(2020年1月21日引用)
厚生労働省 介護給付費分科会 参考資料.(2020年1月21日引用)

  • 執筆者

    井上 歳行

  • 特別養護老人ホーム責任者、居宅介護支援事業所の管理者を経て、介護コンサルタントを行っております。

    保有資格等:介護コンサルタント、主任介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

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