介護助手を効果的に利用する方法~介護施設で人手が足りないなかで、介護助手に何ができるかを考える
介護人材が不足しているなかで、働き方と人材確保の課題を克服するために、厚生労働省において「介護現場革新会議」が行われています。
介護現場革新会議では、介護職員が行う業務の中で、高齢者や子育て中の女性、障害者などでもできる「介護助手」の業務に注目しています。
どのような取り組みが行われているのか、お伝えしていきましょう。
目次
介護助手を効果的に利用する~介護施設で人手が足りないなかでできること
- ●人手不足の中で介護人材をどのように確保していくか
- ●ロボット技術やセンサーなどを介護助手が活用する
厚生労働省の「介護現場革新会議」においては、これらのポイントを中心に議論されています。
わが国は、急速に少子高齢化が進んでおり、これからさらに高齢者が増え、介護人材が必要になるにもかかわらずその確保に苦しんでいます。
そのような状況の中でも、介護サービスの質を落とさないようにするためにどうすべきか議論されています。
特に人手不足については、外国人労働者の受け入れなどが積極的に行われていますが、まだまだ充足できていない状況が続いています。
厚生労働省の調査において、2020年で約26万人、2025年では約55万人の介護職員が新たに必要になると考えられています。
そのような状況からみても、新たな対策を講じなければなりません。
●人手不足の中で介護人材をどのように確保していくか
介護現場革新会議では「介護職員の業務の洗い出し」「切り分け」「役割分担の明確化」に取り組まれています。
介護職員の業務は、排泄介助や入浴介助、食事介助といった身体介護だけではなく、声かけ、見守り、掃除、洗濯、シーツ交換、機能訓練、記録など、さまざまです。
これらの業務のうち、専門性が高くないものは、介護スキルを持ち合わせていない元気な高齢者や子育て中の女性、障害者などが担えるものもあります。
それらの業務を「介護助手」として担うことができれば、介護サービスの質を下げずに、効果的に利用できる可能性があると考えられています。
●ロボット技術やセンサーなどを介護助手が活用する
介護ロボットは介護職員が操作するものになりますが、元気な高齢者や子育て中の女性などであっても担うことができると考えられています。
介護現場においては、積極的にロボット技術やセンサー、ICTなどが導入されています。
これらを導入することによって、介護職員の身体的な負担、見守りに対する負担、記録やデータ管理に対する負担などを大幅に軽減させることができます。
また負担軽減によって、介護職員の専門性を高めることができるようになるでしょう。
介護助手を効果的に利用する~パイロット事業での事例
「介護現場革新会議」においては、人材難の中でも介護の質を維持・向上させるための取り組みとして、「介護助手」を有効に活用することを推奨しています。
介護助手をうまく配置することによって、介護職員が専門性を発揮できるようになり、負担を減らし働きやすくすることが可能になります。
全国7つの自治体では「パイロット事業」として、実際に取り組みが始まっています。
その事例についていくつかご紹介していきましょう。
○宮城県における介護助手を導入した事例
宮城県においては「介護助手導入支援事業」として予算を組み、介護分野に対して就労意欲のある、元気な中高年や高齢者を介護助手として採用しています。
宮城県は対象者に対して説明会を実施し、3カ月間、介護助手として雇用しています。
介護助手としての業務は「シーツ交換」「清掃」「食事の配膳」「片付け」などで、週3回、1日4時間程度の就労となっています。
○北九州市における介護助手を導入した事例
北九州市は全国平均よりも高齢化率が高いため、介護人材の確保については喫緊の課題として取り組まれています。
そのため介護イノベーションとして、介護ロボットの導入を積極的に推進しています。
このパイロット事業においては、介護ロボットを使いこなす新たな人材として、元気な高齢者や子育て中の女性、障害者などを介護助手として採用しています。
2018年には対象者に対して「介護ロボットマスター育成講習」を実施し、実際に移動支援機器などの操作ができるようになっています。
取り組みの中で、高齢者でも介護できる「同世代介護」を確立し、また出産や子育てで介護現場から離職した人材の掘り起こしを目指しています。
介護施設で人手が足りないなかでできること
冒頭からお伝えしてきた介護現場革新会議における各自治体のパイロット事業は、人手が足りない介護施設にとってヒントとできるのではないでしょうか。
特に介護助手を導入することは、とても有効な手段だと考えます。
パイロット事業の事例を参考にして、実際に一法人でも取り組むことができることがないか検討してみてはいかがでしょうか。
●介護職員の業務分析から介護助手の業務をつくり出す
介護施設における介護職員の業務は生活の流れに沿って行われるため、身体介助だけではなく、声かけや傾聴などのコミュニケーション、様子観察、見守り、掃除、洗濯など多岐にわたります。
すべての業務が専門性が高いという訳ではありませんので、その中で元気な高齢者や子育て中の女性などが行える業務も少なくありません。
「シーツ交換」「掃除」「洗濯」「ゴミ出し」「食事の配膳・下膳」などであれば、介護施設の業務として最低限のスキルさえあれば、介護助手でも行える業務です。
しかもこれらの業務を切り出せば、「週1回~短時間」の勤務も可能となります。
このくらいの勤務日数であれば、高齢者や障害者であっても大きな負担となることはなく、子育て中の女性であっても働きやすいのではないでしょうか。
●ロボット技術やセンサーなどを積極的に導入し介護助手に担ってもらう
北九州市のパイロット事業においては、これらのロボット技術の研修を高齢者などの介護助手に実施し、実際に70代の介護助手でも移乗介護ができるようになりました。
また一方では、天井走行リフトがあるにもかかわらず、積極的に活用していないという介護施設が見受けられます。
その理由を尋ねると
- 「介護職員が介護したほうが早い」
- 「リフトを操作するほうが手間」
といった答えが返ってきます。
しかしそれではいつまで経っても介護職員の負担を軽減させることはできません。
介護ロボットには、移乗や移動に関するものだけではなく、見守りができるセンサーや排泄のタイミングを掴むことができる機器などさまざまなものがあります。
導入費用が負担となるのであれば、床走行式電動介護リフトなど比較的安価で販売されているものもありますので、検討してみてはいかがでしょうか。
導入時は大変かもしれませんが、介護職員の負担はどんどん軽減されていきますので、介護職員のストレス軽減だけではなく利用者にとっても大きなメリットとなるでしょう。
人手が足りないなかで介護助手を効果的に利用する
多くの介護施設では介護職員の採用が困難であるといった意見が多くあり、実際に人手不足を感じている施設が少なくありません。
そのような中で介護現場革新会議で議論されている介護助手の導入は、新たな介護の担い手として活用できるものではないでしょうか。
また労働意欲のある高齢者や子育て中の女性、障害者などにとっても、働きやすい仕事だと考えられます。
このような取り組みを介護施設でも導入を検討してみてはいかがでしょうか。
参考:
厚生労働省 介護現場革新会議(第4回)資料.(2020年2月25日引用)
厚生労働省 介護現場革新会議 基本方針.(2020年2月25日引用)
厚生労働省 介護人材の確保・養成・定着に向けた宮城県の取組とパイロット事業の実施について.(2020年2月25日引用)
北九州市 介護現場革新会議資料.(2020年2月25日引用)