訪問介護の「通院等乗降介助」の使い方~介護タクシーを利用した便利な通院の方法
介護タクシーとは、移動が難しい要介護高齢者が車椅子などのままでも車両を活用して外出ができる在宅介護サービスの一つです。
利用者の通院が難しくなってきたのであれば、訪問介護の「通院等乗降介助」を活用することが可能です。
今まで通っていた病院に受診し続けることができるようになります。
目次
介護タクシーには介護保険サービスと保険外サービスがある
特に高齢者が介護が必要な状態となってしまうと、外出に不安を感じるようになり、どうしても億劫になってしまったり、自宅に引き籠もりがちになってしまいます。
介護タクシーは一般のタクシーとは違い、車椅子などのまま乗降ができ、乗降の介助を受けることも可能となっています。
ケアマネジャーが知っておきたい基本内容をお伝えしていきます。
●基本的なサービス内容
自宅から目的地まで移動ができます。
一般的なタクシーのように後部座席に乗降するのではなく、ワゴン車など介護車両に対して、リフトなどを利用して車椅子などのまま乗降できるようになっています。
車椅子などを、事業所に用意してもらうことも可能です。
そのため利用日にあわせて、福祉用具を手配しておく必要はありません。
運転手は、介護職員初任者研修など一定の研修を終了していたり、介護福祉士など介護資格を所有しています。
そのため車両の乗降に必要な介助を受けることも可能です。
●介護保険サービスと保険外サービスに区別されている
基本的にどのような目的でも活用することができますが、その利用内容によって介護保険サービスとそれ以外に区別されています。
通院などの移動に対しては介護保険を適用させることができ、それ以外の移動目的においては保険外となっています。
介護保険適用の場合には、一部負担で利用することができますし、それ以外であれば全額自己負担での利用となっています。
全額自己負担で利用する場合には「送迎料金」「運賃」「介助のための費用」「車椅子などのレンタル費用」などが必要となります。
●福祉タクシーとは違う?
似たようなサービスに「福祉タクシー」と呼ばれるものがあります。
これは身体障害者が対象となっている移動サービスで、要介護高齢者は利用できません。
市町村などの一部負担制度などが利用できる場合もあります。
介護の研修修了や資格を取得した運転手から乗降介助を受けることができますが、運転手が資格を所有していない場合には、家族や付き添いが必要となっています。
介護タクシーを利用した訪問介護「通院等乗降介助」の使い方
訪問介護には排泄や入浴などの「身体介助」、洗濯や調理などの「生活援助」に加えて、通院などのために利用する「通院等乗降介助」があります。
ほかのサービスと同じように担当のケアマネジャーが作成するケアプランにサービスを位置づけしておかなければ、利用することができません。
実施指導などにおいて、指摘されるケースが多いことから、アセスメントに必要な内容をみていきましょう。
●「通院等乗降介助」の概要
先ほどの章でもご説明した通り介護保険サービスであり、一部負担で利用することができます。
次に掲げる内容のサービスとなっています。
- 1)運転手が乗車や降車の介助を行う
- 2)乗車前後や降車前後に移動など必要な介助を行う
- 3)通院先の病院や外出先において必要な手続きなどの介助を行う
アセスメントによって、これらの介助が必要であることを明確にすれば、報酬算定が可能です。
運転中の移動時間は、介護保険対象外となっています。
また院内介助については、病院スタッフが行うものですから原則的に算定は不可となっています。
●「通院等」の対象になるもの
介護保険適用で利用するためには、目的に沿った利用でなければなりません。
日常生活において必要なもので、さらにケアマネジャーが作成するケアプランに位置づけられていなければなりません。
利用目的は次の通りとなっています。
- 1)病院やクリニックなどへの受診やリハビリなど
- 2)日常生活に必要な買い物
- 3)生活に必要な費用を銀行で引き下ろす
- 4)選挙に投票に行く
- 5)役所に介護保険の申請に行くなど
「通院のみ」と考えている方やケアマネジャーが多いのですが、利用目的はかなり広く設定されていることがわかります。
●「通院等」の対象とならないもの
- 1)仕事や趣味などの移動によるもの
- 2)理美容の利用
- 3)冠婚葬祭
- 4)通常利用している店舗以外での買い物
- 5)休診時に通院してしまった場合
先ほど説明した対象となるもの以外では対象になりませんが、特に4や5においては実施指導において報酬返還の対象になってしまうことが多いので注意が必要です。
「通常利用している店舗以外での買い物」と判断されるケースにおいては、「生活圏外」や「耐久消費財の購入」が判断材料とされることが多くなっています。
「耐久消費財の購入」とは、「長期にわたって使用する商品」のことを指しており、その定義としては「耐用年数が1年以上のもの」とされています。
ただし自己負担で利用することはできますから、効果的に活用すると外出支援に結び付けることができます。
介護タクシーを利用した「通院等乗降介助」知っておきたい事例
自宅から病院などの目的地まで、病院などでの手続き、病院などの目的地から自宅までの移動に必要な介助を含んでいます。
ただし運転中は対象となりません。
実際にどのような活用ができるのか、事例を用いて説明していきます。
●「自宅~病院~自宅」までの通院と乗降介助を受けることが可能
病院に受診やリハビリなどで通院する場合の、移動のためのサービスを利用することができます。
でかける前の起き上がりや車椅子などへの移乗も含めて介助を受けることができます。
そのまま車椅子などで移動し、車両に乗車します。
病院に到着すれば、降車介助を受け、病院に受診するための必要な手続きなども支援内容に含まれています。
病院で受診後には薬の受け取りや費用の支払いなども含め、自宅に戻るまで必要な介助を受けることができます。
自宅に到着すれば、車椅子から自宅ベッドに移乗し、安静な体位を取るまでがサービス内容となっています。
この一連の流れについては「通院等乗降介助」での算定となり、身体介護中心型での算定はできません。
●要介護4や5の利用者で乗降介助の前後に時間を要する場合
基本的に通院等乗降介助については、身体介護中心型を算定することはできません。
ただし要介護4や5の利用者で、乗降前後に身体介助が必要となる場合には身体介護中心型において算定することが可能となっています。
20~30分程度の身体介助が必要となるならば、身体介護中心型を算定するようにしましょう。
もちろん身体介護中心型を算定する場合には、アセスメントとともにケアプランに位置づけされている必要があります。
●病院内で病院スタッフから必要な対応が得られない場合
基本原則として、病院内の介助については病院スタッフが行うものになりますから、院内介助については介護報酬として算定することができません。
ただし大多数の病院においては、一部ボランティアなどを配置している病院以外では、なかなか病院スタッフの介助を受けることはできない現状があります。
病院に介助を依頼しても、断られることが多いのではないでしょうか。
そのような状況を考慮して、利用できないと考えているケアマネジャーや居宅介護支援事業所が少なくありません。
しかし「病院から介助スタッフが出せない」「介護者の付き添いが必要」などといった旨の主治医からの指示書によって、院内介助の算定が認められることがあります。
市町村によってその判断が異なりますから、まずは保険者に相談してみて利用を検討してみるといいでしょう。
「通院等乗降介助」の制度を理解し効果的に利用する
介護タクシーはかなり普及しているものの、訪問介護の「通院等乗降介助」を利用するケースは、ニーズはあるもののまだまだ多くありません。
それは介護報酬の算定要件が複雑になっていたり、通院であるにもかかわらず院内介助が算定できないという部分にあるからです。
しかし移動が困難な高齢者にとっては必要なサービスであるために、効果的に利用してみてはいかがでしょうか。
関連情報:
リハビリ・介護施設の施設基準や診療報酬・介護報酬(2023年4月30日引用)