2021年介護報酬改定で入浴介助加算に新たな区分が新設!算定要件や算定のポイントを解説します
2021年の介護報酬改定では自立支援や科学的介護の促進がキーワードとなっています。
その流れを受けて、通所サービスで算定できていた入浴介助加算に新たな区分が新設されます。
今回は新たな要件が加わった入浴介助加算について、算定要件や算定のポイントを解説して、算定にオススメの入浴機器も紹介します。
目次
新たな入浴介助加算は2パターンある!それぞれの算定要件を解説
入浴介助加算は通所介護や通所リハビリでこれまで算定できていた加算の1つです。
そのため2021年の介護報酬改定では新設されるのではなく、新たな算定区分が設けられ2種類の算定区分ができます。
まずは、それぞれの算定要件を知っておきましょう。
●入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件
入浴介助加算(Ⅰ)はこれまで算定できていた入浴介助加算の算定要件と同じ内容となっています。
以下に要件を示します。
- ・入浴介助を適切に行うことができる人員及び設備を有して行われる入浴介助であること。
- ・入浴中の利用者の観察を含む介助を行う場合に算定できる。
- ・利用者側の都合で入浴を実施しなかった場合は加算を算定できない。
「観察を含む介助」とは身体に直接触れる介助をした場合のみ算定できるという訳ではないことを意味しています。
たとえば、自立した入浴動作を促すための声かけや転倒予防の見守り、気分不良などの確認といった介助でも入浴介助加算の算定要件を満たします。
一方、入浴方法によって算定可否が変わってくる場合があるため注意が必要です。
以下の表を参照してください。
入浴方法 | |
---|---|
算定可能 | 全身浴 全身シャワー浴 |
算定不可能 | 部分浴 部分シャワー浴 清拭 |
このように、体の清潔を保つといった目的は同じでも、あくまで加算算定の視点で見ると部分浴、部分シャワー浴、清拭は入浴に含まれず加算の算定ができません。
2021年の介護報酬改定では、これまで同条件で算定可能だった単位数が以下のように変更になっています。
- ・これまでの入浴介助加算→50単位/日
- ・入浴介助加算(Ⅰ)→40単位/日
これまでと同じ条件で入浴介助加算を算定しようとすると10単位の減算になります。
●入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件
入浴介助加算の(Ⅱ)の算定要件は入浴介助加算(Ⅰ)の要件に加えて、以下の3つの要件を満たす必要があります。
医師等が利用者の居宅を訪問し、浴室での利用者の動作及び浴室の環境を評価していること。この際、利用者の居宅の浴室が、利用者自身又は家族等の介助により入浴を行うことが難しい環境にある場合は、訪問した医師等が介護支援専門員、福祉用具専門相談員と連携し、福祉用具の貸与・購入・住宅改修等の浴室の環境整備に係る助言を行うこと。 |
利用者の居宅を訪問した医師等と連携の下で、利用者の身体の状況や訪問により把握した利用者の居宅の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成すること。 |
入浴計画に基づき、個浴その他の利用者の居宅の状況に近い環境にて、入浴介助を行うこと。 |
この中で「医師等」というのは、医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員などの職種です。
この加算の単位数は55単位/日ですので、これまでの入浴介助加算にくらべ高くなっています。
また、入浴介助加算(Ⅰ)と入浴介助加算(Ⅱ)を同時に算定することはできません。
入浴介助加算(Ⅱ)の算定をするポイント
入浴介助加算で現行の算定要件を満たすだけでは、減算になってしまうため、できる限り入浴介助加算(Ⅱ)の算定を進めていきたいところです。
そこで、入浴介助加算(Ⅱ)をスムーズに算定するためのポイントをいくつか挙げてみます。
●契約、送迎、他加算の要件のついでに浴室の評価を実施
浴室動作や浴室の環境評価のためには、利用者さんの自宅を訪問して行う必要があります。
入浴介助加算のためにこれらの業務を増やすのは、スタッフの負担が大きくなり、人件費もかさむ可能性につながり加算算定のメリットが少なくなります。
そこで、デイケアの契約や送迎時に少し時間をとって評価をすればそれほど手間や時間が増えません。
また、通所介護における個別機能訓練加算や通所リハビリにおけるリハビリテーションマネジメント加算では、利用者さんの自宅へ訪問することが算定要件に含まれています。
このように別加算ですでに自宅への訪問が必要であるならば、別加算を算定するための訪問をしたついでに入浴動作や浴室の評価を行うことで、効率よく要件を満たすことができます。
●自立を促す介護を再確認しよう
近年の介護報酬改定の流れとして、要介護者の介護度を軽減したり、自立を支援したりすることに対して高い評価をする傾向になっています。
そのため、介護サービスの基本である、「利用者さんの持っている残存機能を最大限引き出す介助」を改めて実践することが重要です。
今回の入浴介助加算もその点が評価される加算です。
入浴に限らず、トイレや整容などのADLは自立を促す介護を日頃から実践していけば、加算算定のために改めて意識を変えたり、介護方法を変えたりといった必要は無くなります。
●入浴環境を整えよう
入浴介助加算(Ⅱ)は個浴が必要になるため、事業所の現状に応じて入浴環境を整える必要があります。
大きな工事や変更をしなくても、個浴や入浴の工夫ができる方法があるので、次の見出しで詳しく解説します。
自立支援を促すために入浴機器を導入しよう
自宅と同じような環境、つまり個浴を積極的に実施して、利用者さんの能力に応じて自立した、介助の少ない入浴を実現するためには入浴機器の導入がオススメです。
そこで加算算定のために導入したいオススメの入浴機器を紹介します。
●浴槽の設置不要で個浴を実現!テヌートは入浴介助加算にオススメ
入浴介助加算(Ⅱ)の算定には個浴が必須ですので、浴槽がない場合設置の必要があり、大きなコストがかかります。
しかし、OGウェルネスの介護浴槽「テヌート」を導入することで、工事不要でさまざまな利用者さんの個浴に対応ができます。
歩行が十分できる方は背もたれや回転シートを活用して、より安全な入浴を検討しながら自立に向けた入浴が実施できます。
また、搬送車を利用した入浴も実施できるため、座位が不安定な介護度の高い利用者さんでも個浴での入浴が実現可能です。
このように、テヌートは幅広い利用者さんに対して入浴介助加算(Ⅱ)の算定を可能にする入浴機器です。
※テヌートに関する詳しい紹介は「小規模高齢者施設向きの介護浴槽「テヌート」!座位が不安定な方も安心安全な入浴」をご参照ください。
●自立をサポートする福祉用具を揃えよう
介護浴槽だけでなく、さまざまな福祉用具を活用することで、身体機能が低下した利用者さんでも自宅での入浴につながります。
そのため、実際に事業所でも自宅での入浴に活用できるような福祉用具を揃えて、利用者さんの状態に合わせて活用するようにしましょう。
具体的には以下のような福祉用具が活用できます。
- ・シャワーキャリー
- ・シャワーベンチ
- ・浴槽内いす
- ・浴槽用手すり
- ・バスボード
これらの器具を利用して入浴を施設で入浴していき、自立もしくは家族が行えるほどの介助量で入浴できれば、同じ用具を自宅で活用することで、自宅での入浴が可能になります。
また個浴で少しでもできるだけご本人様の力で入浴していただき、スタッフの介護負担を軽減するためにも、これらの福祉用具は積極的に使用していきたいものです。
少しの工夫で算定は可能!積極的に入浴介助加算(Ⅱ)を算定しよう
通所サービス事業所にとって、これまで算定していた加算が減算になることはできるだけ防ぎたいところです。
算定に必要な入浴環境の把握や個浴の実施は少しの工夫で達成できる業務です。
今回ご紹介した算定のポイントや設備の導入について検討していただき、これまで以上の単位である入浴介助加算(Ⅱ)を算定していきましょう。
参考:
OG Wellness オージオトロン EF-160/EF-260(2021年2月27日引用)
厚生労働省 令和3年度介護報酬改定の主な事項について(2021年2月27日引用)
リハビリ・介護施設の施設基準や診療報酬・介護報酬(2023年4月30日引用)
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執筆者
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整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級