地域密着型通所介護の経営は始めやすい?あえて小規模で運営するメリットとは
超高齢社会にともない、ビジネスとして介護分野を考える方は増えています。
なかでも、地域密着型通所介護は経営を始めやすいメリットがあり魅力的ですが、反対に注意すべき点もありますので、参入を考えている方はこの記事を読んで全体像を把握しましょう。
地域密着型通所介護を経営するメリットとは?
さまざまなメリットを紹介する前に、地域密着型通所介護がどのようなサービスなのかを確認してから本題に入りましょう。
●地域密着型通所介護とは?
サービス内容は基本的に一般の通所介護(デイサービス)とほとんど同じです。
- ○送迎
- ○バイタルチェックなどの健康管理
- ○食事の提供と介助
- ○入浴介助
- ○機能訓練 など
しかし、目的や仕組みに違いがあり、経営する場合にはとても重要な部分になるでしょう。
まずは地域包括ケアシステムの一環ということもあり、利用者は同じ市町村に住む方に限定され、定員は18名以下の小規模にする必要があります。
通常規模や大規模の通所介護よりも利用単位が高く設定されており、個別機能訓練加算や入浴加算は同様の規定です。
要介護3で7〜8時間利用の場合(2021年4月時点)
- ○地域密着型:1,028単位
- ○通常規模:896単位
- ○大規模:857単位
- ○個別機能訓練加算:(Ⅰ)イ56単位、ロ85単位 (Ⅱ)20単位
- ○入浴加算:(Ⅰ)40単位 (Ⅱ)55単位
ほかの地域密着型サービス同様に運営推進会議が義務付けられ、おおむね半年に1回以上実施しなければなりません。
管轄が都道府県ではなく市町村になるため、事業に関する細かなルールや実地指導などは地域の役所が行うことになります。
●比較的低コストで建物や設備が用意できる
定員の人数に応じて建物の面積が決められているため、少人数であれば施設も小規模で済みます。
設備に関する基準
- ○食堂と機能訓練室を兼ねたスペース(利用定員×3平米の面積)
- ○相談室(相談内容が外に漏れないように配慮)
- ○消火設備(消防法そのほかの法令などに規定された設備)
- ○事務室 など
一般的にはこれらが基準に含まれますが、各市町村によって条件が異なりますので、必ず事業所のある地域に確認してください。
これらに加えて、送迎車や機能訓練で使う備品、車いすで使用できるトイレ・浴槽などは当然準備しなければなりません。
省スペースでも使い勝手が良く、さまざまな方に適応できるリハビリ器具としては、OGWellnessの「Medergo」シリーズなどがおすすめです。
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地域密着型通所介護は定員が少ないため全体的に用意する設備の数は少なく、初期投資の額はほかの施設サービスよりも抑えることができるでしょう。
古民家を改装して施設にしている事業所も多く、オープニングスタッフも少なくて良いため開設しやすいのがメリットです。
経営者が管理者やプレイングマネジャーを務めることで、人件費の割合を大幅に削減できるのも利点でしょう。
●人員基準をクリアしやすい
地域密着型通所介護の人員基準は、定員10名以下と11名以上で体制が異なりますが、基本的には下記のスタッフを満たせば運営可能です。
- ○管理者1名:常勤(経営者が従事可能で市町村によっては兼務も可)、無資格で可能
- ○生活相談員1名:社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、社会福祉主事、介護支援専門員
- ○介護職1名:無資格でも可、生活相談員か介護職のどちらかは常勤でなければいけない、定員16名以上では増員する必要がある
- ○機能訓練指導員1名:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師
- ○看護師:定員10名以内だと必須ではないが介護職の代わりになる、11名以上では1名必要だが病院などと密接な連携を図っている場合は確保されているものとみなされる
こちらも詳細は各市町村に確認する必要があります。
機能訓練指導員や看護職は常勤の必要はないため、パートなどで人材を集めやすいのもメリットでしょう。
●需要が高い
2025年には団塊の世代が75歳以上になり、今後はさらに高齢者の割合が増えることで、各地域での需要は高まることが予想されます。
地方のほうが高齢者は多い傾向にあるものの、これからは都市部でも必要性のあるサービスなので、さまざまな地域でより一層需要が高まることでしょう。
●さまざまな事業展開も可能
経営が順調にいき、ノウハウが蓄積されれば事業拡大することもできるでしょう。
隣町に同様の施設を開業することや、地域の需要に合わせて訪問介護を立ち上げるなど、状況に合わせた事業展開が可能となります。
地域密着型通所介護を経営する注意点について
多くのメリットはありますが、もちろん注意する点もありますので紹介します。
●大きな収益は難しい
メリットでもあるコンパクトさは、裏を返せば事業単体では収益に上限があることを意味します。
規模を大きくすれば利益を増やすこともできますが、同時にリスクが高まり地域密着型の恩恵はなくなるでしょう。
そのため、最初から大きな規模の運営を考えている方には不向きだといえます。
しかし、利用者を着実に確保して経費も適正であれば十分な利益を得ることができ、事業を拡大していくことも可能なので、長期的には大きな収益を目指すこともできるでしょう。
●人員が少ないからこそ注意も必要
少ない人員で基準を満たせる代わりに、一人ひとりに求められるスキルが高くなります。
それぞれに役割はあるものの、誰もが通所介護の業務全般を任せられる状態が理想になるでしょう。
欠員が出ることでの損害も大きく、人材不足で廃業する会社も少なくないため、教育環境や働きやすい職場づくりが重要になります。
●信用を獲得するまでは苦しい状況も有り得る
通所介護に限らず、ほかの地域密着型サービスや大規模な施設などの競合がすでに存在していると、新規参入の小規模な事業所は利用者獲得が難しい可能性があります。
しかし、地域包括ケアシステムを重視する考えもあり、地域包括支援センターや市民病院の地域連携室などに営業を行い十分に認知されることで徐々に利用者は獲得できるでしょう。
今後より良い経営を目指すためのポイント
地域から求められる施設をつくるためには、差別化と地域貢献が重要になりますので、それぞれについて説明します。
●競合との差別化
需要の高い分野なので今後も競合が増える可能性はあり、どのように差別化できるかは重要な課題になります。
特徴を明確にする例を下記に挙げますので参考にしてみてください。
- ○常勤の機能訓練指導員を配置してリハビリに特化する
- ○OG Wellnessの「Medergo」のような高水準の機材を豊富にする
- ○レクリエーションや認知症関連の資格を有したスタッフを配置する
- ○重度の介護度に対応した入浴設備がある など
コンセプトに合わせて、しっかりと強みを生かした経営を行うようにしましょう。
●地域包括ケアシステムとしての活躍
運営推進委員会の実施などから、地域や利用者のニーズを細かく把握して、求められるサービスの提供を目指すことが重要です。
また地域包括支援センターなどとも連携を図ることが大切で、さまざまな情報を収集しながら、オープンな経営と地域貢献を重視した考えを持ちましょう。
地域密着型通所介護の特徴を理解して計画的な開設を
地域密着型通所介護は、今後地域で高齢者を支える仕組みとして重要視されており、需要が高く比較的低コストで開業できる施設です。
参入しやすいメリットがあるものの、競合との差別化や優秀な人材の確保と教育体制が重要なため、決して簡単なビジネスではありません。
それでも、これからは全国的に求められる仕事であり、社会貢献度も高いビジネスといえますので、ぜひ多くの方に目指していただきたいです。
参考:
介護給付費単位数等サービスコード表(案)(令和3年4月施行版)地域密着型サービス(2021年5月22日引用)
介護給付費単位数等サービスコード表(案)(令和3年4月施行版)介護サービス(2021年5月22日引用)
板橋区 健康生きがい部 介護保険課 施設整備・事業者指定係 平成31年4月1日 地域密着型通所介護ハンドブック(2021年5月22日引用)
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執筆者
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総合病院に6年間勤務し、脳神経外科や整形外科のリハビリテーションを中心に、急性期・回復期・慢性期を経験。その後、介護支援専門員の資格を取得して家族と共に介護事業を設立。代表取締役であると同時に、現場では機能訓練指導員・介護職・ケアマネジャーを勤めプレイングマネージャーとして活躍。現在は、経営業務をメインに記事の監修やライターとしても活動中。
保有資格等:作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員