デイサービス経営にお悩みのかた必見!ホームページなどを使った、研究成果の発表が黒字化への突破口!?
厚生労働省の統計によると、2016年9月時点でデイサービス事業所数は43,406件であり、1年間で1,746件の新規事業所が開設されています。
この現状に、経営者の方は「自社を選んでほしい!」、「ほかの事業所に利用者さんをとられたくない」とお悩みではないでしょうか。
本記事では、ほかの事業所との差別化をはかるために、研究活動が有効である理由を解説します。
集客力の低下にどう立ち向かう!?
「どう営業すればいいのかわからない」とお悩みの方のため、ここではまず情報発信の必要性について解説します。
●情報発信の相手は身近な人から!?
口コミなどが商品の売り上げを左右する時代、どんな情報においても、広く発信するためのスタートはまず身近な人からです。
1)利用者さんやそのご家族
まずは直接的なターゲットとして、利用者さんやそのご家族が対象となります。
自社へのアクセスはケアマネジャーさんからの紹介が中心ですが、インターネットが普及した現在では多くの人が容易に情報収集できるようになり、自社サイトも重要な位置づけとなっています。
ホームページが手抜きであったり、事業所のアピールポイントが記載されていなければ、利用者さん側は魅力を感じないでしょう。
2)地域のケアマネジャー
デイサービスの集客に関して、キーマンとなるのは地域のケアマネジャーさんであることは間違いありません。
しかし、事業所への電話連絡やポスティングによる効果については、同じような活動をしている事業所も多いので、自社も数ある事業所の一つという扱いになります。
具体的な方法に関しては後述しますが、多忙なケアマネジャーさんに注目してもらうには、情報を一方的に送るだけではなく、その後にホームページを検索してもらえるような努力が必要となります。
●魅力的なサービスを提供しているか?
チラシやホームページでは素晴らしい理念を掲載しているのに、実際に利用してみると期待したサービスではなかったと落胆される方もいます。
筆者の経験をもとに、よくある失敗例と有効例を挙げてみます。
1)失敗例:個別リハビリをアピールしている事業所
ホームページや事業所案内などに「一人ひとりに合ったリハビリ」と記載していても、実際は全員が同じメニューのマシントレーニングをしていることがあります。
特に、病院を退院した利用者さんは「個別リハビリ=マンツーマン」と思っている方が多いですが、事業所側は「個別リハビリ=集団体操以外の運動」と解釈していることもあります。
2)有効例:創作活動に力を入れている事業所
デイサービスにおいて、机上での作業活動はよく見られる取り組みですが、実際はその場の作業だけで終わってはいないでしょうか。
たとえば、完成した作品を地域の公民館に展示したり、事業所の休日を利用して展示会を開催したりと、取り組みを外部に公開することは有効です。
さらにその実績をチラシ・ホームページ・SNSなどで積極的にアピールすることで、より集客効果が見込めるでしょう。
自社におけるサービスの効果をいかに発信するか?
自社のサービス内容が魅力的であっても、それが周知されなければ何の意味もありません。
ここでは、情報発信の重要性について解説します。
●利用者さんやご家族に対しては体験談・感想が効果的!
サービスの効果判定をする方法はさまざまありますが、ターゲット層をどこに設定するかによって発信手段は異なります。
しかしどのターゲット層であっても、利用者さんやご家族は「快適な時間が過ごせるか」「楽しんで通えるか」を重要視する傾向があります。
ホームページや折り込みチラシに、「最初は不安だったけど、今は楽しんで通えています!」という感想や、「こんなデイサービスなら毎日来たいです!」など、生の声を掲載することによって、事業所選びに迷っている利用者さんとご家族をひきつけるのではないでしょうか。
●サービス効果の判定はリハビリ専門職が発信すべし!
自社のアピールポイントとして、もう一つ重要なことは体の機能の改善効果を提示できるかです。
厚生労働省の統計結果から、機能訓練指導員としてリハビリ専門職が配置されている事業所では、日常生活自立度の改善効果は高いとされており、今後は従来の「維持」という概念から、「自立支援」へとつなげていくことが望まれます。
デイサービス利用後の下肢筋力の変化や、歩行速度と自宅での転倒歴の増減などをわかりやすくデータ化することにより、事業所の機能改善効果の質を証明することにつながります。
しかし、統計処理やデータ分析などは、ある程度研究に関するスキルを身につけておかないといけないので、リハビリ専門職が担当するとよいでしょう。
デイサービスで実践できる!2つの研究テーマについてご紹介!
研究とは「なんだか難しそう」、「習ってないからわからない」と拒否反応を示される方もいるかもしれません。
しかしここでは、研究=マーケティングの一環と捉えていただき、集客力を高めるためのひとつの手段としてご検討ください。
●利用者さんへのアンケート調査
一般的な販売戦略において、顧客の満足度や求めるサービスを理解することは重要ですが、それは介護事業でも同様です。
通常、商品(介護サービス)が売れない原因は、商品の品質だけではなく、販路(ターゲット層への情報発信)や購買意欲(利用者の希望)を理解していないと、いくら努力しても実を結びません。
そこで、利用者さんやご家族に率直な意見を聞くことにより、隠されたニーズや課題点を明らかにしていくのです。
ポジティブな回答ならホームページに掲載し、ネガティブな回答なら改善案をスタッフとともに検討する作業が重要です。
なお、アンケートをとる際には、匿名化してホームページに掲載させていただく可能性について触れ、同意を得ておくことをおすすめします。
この調査に関しては、事業管理者がリーダーとなり、現場にいる介護職を中心に進めてもよいでしょう。
●サービス提供後の運動機能や生活能力の変化
自社のサービスを利用することで、どのような効果があったのかを客観的に示すことが大切です。
以下に研究テーマの例を挙げてみます。
1)理学療法士による個別訓練は利用者さんの歩行能力を改善する
機能訓練指導員として理学療法士が配置されている事業所では、筋力やバランス能力の評価をもとに、その方に合った歩行練習や歩行補助用具の選定も可能です。
比較対象の設定が難しいですが、厚生労働省が発表しているデータなどと比較して、自社のサービスは効果的であることを数値化することが重要です。
学術雑誌に掲載するレベルのデータを作成するには労力が必要になりますが、デイサービスの利用前後で、歩行能力の簡単なデータを収集することはそんなに難しいことではありません。
リハビリ専門職は、授業や卒業研究などで統計学を学んでいるため、自社におけるサービス提供の効果判定を指示してみてはいかがでしょうか。
2)運動能力に応じた個別メニューを実施した結果、〇%の利用者さんが自宅での転倒予防につながった
多くのデイサービスでは、セラバンドでの筋力トレーニングや、椅子に座った状態での体操などに取り組んでいますが、なかなか効果判定まで実施できません。
しかし、「〇%の方で転倒が予防できた」と誰が見てもわかりやすい結果が公表されていると、その事業所のサービスの質が高いことがうかがえます。
利用者さん側にとっても興味深く身近な課題であり、事業所選びの大きなポイントになります。
まとめ
本記事では、黒字化に向けてデイサービスでの集客に研究や情報発信が有効である理由と、その代表的なテーマについて解説しました。
ほかの事業所との差別化を図るためには、利用者さんやケアマネジャーをターゲットにした情報発信と、サービス効果の判定を客観的な数値で公表することが効果的です。
また、自分たちのサービスが目に見える結果で表されると、事業所全体のモチベーションも上がるため一石二鳥といえるでしょう。
利用者さんのニーズや機能改善効果を研究し、積極的な情報発信を行っていくという視点をもって、事業運営に取り組んでみてはいかがでしょうか?
参考:
厚生労働省 平成27年介護サービス施設・事業所調査の概況.(2018年2月8日引用)
厚生労働省 通所介護および療養通所介護(参考資料)(2018年2月8日引用)