居宅介護支援事業所の報酬改定後の加算取得~安定的な運営のために
2018年(平成30年)の介護報酬改定は、居宅介護支援事業所(以下 事業所)においては、おおむねプラス改定といえますから安心された事業所も多いのではないかと思います。
しかし医療連携が色濃く出た報酬改定となり、今後もそのような流れになることは間違いありません。
ここでは、取得しておくべき加算について説明していきたいと思います。
特定事業所加算の取得は、事業所運営において最も大事
厚生労働省のデータを見ると、特定事業所加算(Ⅰ)の取得割合は全体の1%、(Ⅱ)では14.4%、(Ⅲ)では10.5%ととても低い取得率であることが分かります。
しかし居宅介護支援事業所の安定的な運営を考えるうえで、欠かせないのが「特定事業所加算の取得」になるのは間違いありません。
2018年4月からは(Ⅰ)~(Ⅲ)に加えて(Ⅳ)が増えることになります。
ただし加算取得していない事業所であれば、まず(Ⅲ)の取得を検討していくことが必要になります。
(Ⅲ)の加算取得においてネックになる1つ目は、主任ケアマネジャーの配置と常勤ケアマネジャー2名の配置になります。
計3名の配置については小規模の事業所であればハードルとなるかもしれませんが、利用者を獲得していける状況にあるならば、ぜひ目指すべきだと考えます。
主任ケアマネジャーの配置ができていない事業所であれば、ケアマネジャーの中から積極的に主任資格の取得をするよう支援を行うことから始めましょう。
小規模の事業所であれば研修費用や研修日程がネックになると思いますが、研修費用については助成金の活用ができます。
研修日の人件費についても、助成金が受けることができますから、活用すれば、勤務として研修に参加することが可能になると思います。
(Ⅲ)の加算取得においてネックになる2つ目は、「週1回のミーティング」「計画的な研修」「地域包括支援センター主催の事例検討会の参加」「実習受け入れ事業所」といった手間がかかる部分ではないかと思います。
しかし「週1回のミーティング」では、各ケアマネジャーからケースの状況報告などを確認する場にして、1カ月に1度程度、そのミーティング内に研修を取り入れていけば、「計画的な研修」も問題なくクリアできると思います。
また現行で(Ⅰ)のみだった地域包括支援センター主催の事例検討会の参加が、(Ⅲ)においても要件になります。
事例検討会については、地域包括支援センターが既に開催していると思いますから、日程調整を行い参加すればいいでしょう。
実習受け入れについては年に1回、3月だけですから、それほど多くはありません。問題なくクリアできるでしょう。
また同様に(Ⅲ)を取得している事業所であれば(Ⅱ)を、(Ⅱ)を取得している事業所であれば(Ⅰ)の取得を検討するべきです。
いずれの加算も、ケアマネジャーの人員確保が問題になりますが、安定的な運営を考えるうえではとても大きな加算になりますから、前向きに取得の検討をすべきでしょう。
なお(Ⅳ)の加算取得については、少々ハードルが高い事業所もあるのではないでしょうか。
退院・退所加算に必要な医療連携が年間35回と、ターミナルケアマネジメント加算を年間5回算定しているのが要件になります。
特にターミナルケアマネジメント加算については、がん末期の利用者の在宅対応ですから、事業所全体を確認して、可能ならば取得していくという感じになるでしょう。
入院時情報連携加算は、まず病院の相談員に連絡を
入院時情報連携加算については、単位数は変更なしで、退院・退所加算については報酬アップします。
2017年5月の時点で、この加算の(Ⅰ)については取得割合が25.3%、(Ⅱ)が8.3%となっています。
これも取得率は、とても低いことが分かります。
今回の介護報酬改定については、医療連携が要となりますが、今後もこの医療連携については進んでいくと思われます。
現時点でそれほど加算取得のハードルが高いわけではありませんので、積極的に取得できるようにしておく必要があります。
医療側の診療報酬においても在宅復帰率が導入されています。
病院としても積極的にこの加算を取得していくために、在宅のケアマネジャーと連携したいと考えています。
ただ病院の相談員は在宅介護サービスについて、詳しくない人も多くいますので、ケアマネジャーからの入院時連携がとても大事だと考えます。
在宅ケアマネジャーとしては、在宅の利用者さんが入院となったという状況になれば、病院の相談員にすぐに電話連絡をしてほしいと思います。
病院の相談員に連絡しておけば、次は入院時に相談員が退院後の在宅復帰について相談しやすくなります。
入院中に退院支援の連携を図ることができれば、退院・退所加算を取得できることになります。
入院時情報連携加算については算定要件が変更になっていて、加算(Ⅰ)では入院後3日以内の情報提供、加算(Ⅱ)では入院後7日以内の情報提供が必要です。
この算定要件の変更のポイントは、提供方法は問わないということであるといえます。
今までは(Ⅰ)においては医療機関の訪問が必要になっていました。
どうしても日程的に訪問できなかったり、場所が遠かったりすることで(Ⅰ)の算定ができなかったケアマネジャーも、電話やFAXなどでの情報提供により(Ⅰ)の算定ができるようになりました。
事業所において、この入院時連携加算の取得は積極的に行うべきだと考えます。
入院時連携加算を取得するための情報提供は、専用の書式を作っておくと便利です。
自治体によっては様式があったり、手引きがあったりしますので活用するといいでしょう。
病院の相談員が、ケアマネジャーからの情報提供により、患者の在宅時の実情や利用している介護サービスを把握できれば、退院支援が行いやすくなりますから、とても重宝されるでしょう。
退院・退所加算~カンファレンスなしでも加算取得が
退院・退所加算については、2017年5月の時点で取得割合は21.5%となっており、これも低い数字です。
カンファレンスの参加ありなしに関わらず、報酬額がアップとなっていますので、ぜひとも取得しておきたい加算です。
この加算については、算定要件の変更はありません。
カンファレンスありの場合で、連携3回の算定を行う場合は、担当医も含めたカンファレンスの必要がありました。
これは今回も同じですが、病院側の在宅復帰率にも関わるものになりますから、病院からのカンファレンスの提案が多くなるのではないかと考えます。
それにより加算の取得が以前よりもスムーズになるのではないかと思います。
加算取得をスムーズに行うためには、先ほども申しました入院時での連携が大事になると思います。
入院時に病院に連絡し、必ず担当の相談員、主治医の確認を行っておくことで、その後のカンファレンスの参加がスムーズになるでしょう。
入院時に病院の相談員に対して、カンファレンスの開催を伝えておくと、病院内で調整をしてもらえるでしょう。
短期の入院の場合では、医師を交えたカンファレンスの開催がない場合もあります。
この場合、医師抜きのカンファレンスでも加算取得できますし、カンファレンスなしでも相談員や病棟の看護師などと連携することで加算取得することができます。
カンファレンス参加なしでも2回の加算が取得できますから、確実に取得するようにできると思います。
まとめ
もし積極的に加算取得をしていない事業所が、今回の報酬改定においても加算取得をしないとしても、基本報酬がアップしていますから、実質的には収入が上がることになります。
しかしこの状況は、次の報酬改定には通じないと考えます。
恐らくは今後の医療連携の布石であって、加算の取得要件がさらに厳しくなったり、場合によっては基本報酬が下げられて、新たな加算が創設されるようなこともあるかもしれません。
そのためには、今回の報酬改定によって積極的に加算取得を行うべきだと考えています。
それが今後の安定的な事業所運営につながるものだと考えるからです。
なお報酬改定については、別記事(居宅介護支援の今後~介護報酬改定から考える方向性と事業所運営)においても、お伝えしておりますのでぜひご覧ください。
参考:
入院時情報提供用紙 京都府共通様式(2018年3月5日引用)
厚生労働省 第142回介護給付費分科会 居宅介護支援(参考資料)(2018年3月5日引用)