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ペースメーカーが入っていても運動はできる?介護施設で気をつけたいポイントをご紹介!

一般社団法人日本不整脈デバイス工業会の報告によると、わが国では年間6万人以上がペースメーカーの新規植え込みをされています。
ペースメーカー手術を受ける高齢者も増えるなか、介護施設でも手術後の利用者さんを見かけることがあるでしょう。
本記事では、ペースメーカー留置後の方の運動において、押さえておきたい注意点について解説します。

ペースメーカーの役割は心臓の補助

ここではまず、ペースメーカーの役割について説明します。

●ペースメーカーは心臓に電気刺激を与えている

正常な心臓では、洞結節と呼ばれる部分から発生した電気信号が一定のルートで伝わり、心臓の筋肉が収縮します。
不整脈とは、本来とは別の場所から電気信号が発生したり、または必要な電気信号がルートのどこかで伝わらなくなった状態を指します。
ペースメーカーの適応となる不整脈では、心臓内での電気信号がうまく伝わらないため、心拍数が極端に少なくなる(徐脈)ことが問題になります。
脳への血流が低下すると目まいや意識消失を起こすことがあり、日常生活においても危険な状態といえるでしょう。
ペースメーカーは、心臓の中にリードと呼ばれる細い管を通し、心臓の電気信号を感知して、足りない分の電気刺激を補う役割をもっています。

●ペースメーカーが入っている場所

多くの場合、ペースメーカーは左鎖骨の下方で、皮膚と胸の筋肉(大胸筋)の間に埋め込まれます。
更衣や入浴の際に、「あれ、ここなんか膨らんでる?」とすぐに気付くことができます。
もし、情報提供書などにペースメーカー手術と書かれていた場合、左鎖骨の下部分を見てその有無を確認しておくとよいでしょう。

●特殊なペースメーカー

ICD(アイシーディ)と呼ばれる植え込み型除細動機器は、心室頻拍や心室細動といった命に関わる不整脈が起こった場合、リードを通じて電気ショックを行います
ICDはペースメーカーと同様にペーシング機能も有しているため、徐脈と頻脈に対応することができます。
体の表面から見ると、普通のペースメーカーよりやや大きめですが、一見して区別するのは難しいでしょう。

ペースメーカーが入っていても運動はできる

心臓の補助や緊急時の電気ショックなどの機能をもっているペースメーカーですが、「そんな人が運動をしても大丈夫?」と不安に思う方もいるでしょう。
ここでは、運動をしてもよい理由について解説します。

●装着することで心臓の機能は改善している

日常生活では、不整脈による目まいや意識消失などが問題となりますが、ペースメーカーの留置によって心臓の機能は改善しています。
目まいなどの上記症状だけではなく、体を動かしたときの倦怠感を感じなくなったという方も多いです。
つまり、ペースメーカーが入っているから不安なのではなく、逆に安心して運動ができるといえるでしょう。

●ペースメーカーを入れる理由は「元気に生活する」ため

整形外科を例に挙げると、膝の変形で歩くことがつらい方は、人工関節の手術をすると痛みが減り、快適な生活を送ることができます。
心臓の場合も同様に、ペースメーカーを入れることで目まいやふらつきを改善し、安心して日常生活を送ることが目標になります。
運動や外出が可能になると活動範囲も広くなるため、QOL(生活の質)が向上します。
手術後の方にとっては、安静にするよりも積極的な体力づくりに励むことが大切です。

●医療機関による遠隔モニタリング

介護スタッフの立場からは、「普段の生活で不整脈が出現しているのか」、「サービス利用中に気分が悪くなったけど」と不安に思うこともあるでしょう。
2018年の診療報酬改定ではICTを利用したさまざまな遠隔モニタリングに加算がつき、ペースメーカーの管理もその中に含まれています。
仮に、危険な不整脈や電気ショックの作動があると、医療機関にその情報が送信され、医師や臨床工学技士が内容をチェックします
必要な場合には、医療機関の受診を勧めてもらえるため、介護施設のスタッフとしても安心です。

運動するときに注意するべき3つのポイント

ここでは、実際に運動するときに注意しておきたいポイントについて解説します。

●腕や胸に負荷がかかる運動には注意

ペースメーカーは左鎖骨下に埋め込まれることが多いため、左腕の挙上や胸の筋肉を頻回に使用するトレーニングには注意が必要です。
デイサービスでは、風船バレーや輪投げなどのレクリエーションが実施されますが、反復して腕を使用する動作を行う場合は、あらかじめ主治医に確認しておきましょう
ペースメーカー手術後の合併症において、感染やリードの断線などが起こると再手術が必要になります。
更衣や整髪など日常生活動作に関しては問題ありませんが、リハビリメニューを考える際には過度な負荷がかからないように注意が必要です。

●低周波治療機器は禁忌!

ペースメーカー誤作動の可能性から、携帯電話やIH治療機器など電磁波を発生する機器の使用には注意喚起がされています。
これらは周波数が異なるため影響を及ぼすことはまれですが、携帯電話は本体から15cm程度、IH機器は50cm程度離しての利用が推奨されます。
しかし、介護施設でも使用する機会が多い低周波治療機器はペースメーカー装着患者には禁忌となります。
筋力トレーニングや疼痛緩和を目的とする場合は、ほかのリハビリメニューを検討しなければなりません。

●目まいや倦怠感には注意が必要

万が一、リードの断線やペーシング不全などで正常な作動をしなくなった場合は、徐脈による症状が出現することがあります。
意識がもうろうとしている状態や息切れなどの他覚症状、「脈が飛ぶ」などと本人から訴えがあった場合は、正常に作動していない恐れがあります
様子が変だと感じた場合、まずは看護師やほかのスタッフに応援を頼んでバイタルチェックを行います。
作動不全の場合は介護現場での処置は困難であるため、かかりつけの医療機関に連絡する必要があります。

ペースメーカー手術後も安心できる介護サービスを

ペースメーカーは留置しているから心配なのではなく、留置しているからこそ安心して運動ができます。
今後は心不全を有する後期高齢者が増加してくるため、介護施設においても循環器の病気に対応できる能力が求められます。
基本情報シートや情報提供書にペースメーカーの記載がないかをチェックし、植え込みをしている方の場合は主治医に注意点を確認しておくことが望ましいです。
過度な腕の運動や低周波機器の利用などに注意は必要ですが、運動メニューを工夫することで介護現場でも安全に運動をすることができるでしょう。

参考:
一般社団法人日本不整脈デバイス工業会:2017年ペースメーカー市場調査.(2018年8月19日引用)
日本循環器学会 他:ペースメーカ,ICD,CRTを受けた患者の社会復帰・就学・就労に関するガイドライン(2013年改訂版).(2018年8月19日引用)
総務省:「電波の医療機器等への影響に関する調査」報告書.2017.(2018年8月19日引用)

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