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地域のみんなで重錘バンドを使った体操をしよう!リハビリに役立つ実践方法や効果を紹介

一人では運動できなくても、サロンなど地域住民で集まって体操ができれば、楽しく続けられます。
そこで、おすすめなのが重錘バンドを使った体操です。
誰でも簡単に負荷をかけた運動ができる、重錘バンドのメリットやリハビリの方法を知りましょう。

重錘バンドの体操がおすすめの理由は「負荷」と「手軽さ」

重錘バンドのメリットとして、「負荷がかけられる」ことと「手軽に使用できる」という点があります。
効果的に活用するために、重錘バンドのメリットを理解しましょう。

●重錘バンドの特徴

重錘バンドがどのような器具なのかを理解するために、オージーウエルネスの重錘バンドの特徴とメリットを表にまとめます。

特徴 メリット
250g、500g、750g、1kg、1.5kg、2kg、2.5kg、3kg、4kg、5kgの10段階の重さ 装着する部位や負荷の量を細かく調整できる
マジックテープ式で装着 装着が簡単
中には鉄の粒が入っているカバーはナイロン製 環境に良く耐久性に優れる

●一人ひとりに合わせた負荷が調整できる

筋力を向上させるためには、「少しきつい」と感じるくらいの負荷をかける必要があります。
また、同じ負荷で続けるのではなく、徐々に負荷を上げることが重要です。
その点で、重錘バンドは重さの種類が多くあり、一人ひとりに合わせた負荷の調整が簡単にできるため、効果的に筋力を向上させることができます。
重さの設定の目安は以下を参考にしてください。

  • ◯10回連続でできれば負荷を強くする
  • ◯負荷を強くして10回がきつければ前の負荷に戻す
  • ◯3回同じ強さで行うことができれば負荷を強くする
  • ◯痛みがある場合は負荷を軽くする

●だれでも手軽に使用できる

重錘バンドは筋力を向上させる器具ですが、大きなマシンにくらべて、複雑な装着や器具への乗り移りが必要ありません。
そのため、誰でも簡単に装着ができます。
筆者も、100歳を超えるような利用者さんに対して、重錘バンドを自分で装着して、リハビリを行ってもらっています。

誰でもできる重錘バンドを使った体操5つ

重錘バンドを使えば、誰でも簡単に負荷をかけた運動を行うことができます。
ここでは、椅子に座ってできる体操と立って行う体操を5つ紹介します。
運動は重錘を足首につけて、ゆっくりと力が入っている部位を意識しながら行いましょう。

●座って膝伸ばし体操

太ももの前にある筋肉(大腿四頭筋:だいたいしとうきん)を鍛えることで、立ち座りが楽になったり、膝の痛みを軽減させる効果があります。

◯方法

1.椅子に座ってゆっくり膝を伸ばす
2.膝を伸ばしきったら、つま先を上に向ける
3.ゆっくり膝を曲げる

◯回数とポイント

左右10回ずつを2セット行いましょう
膝を伸ばした後につま先を上に向けることで、効率的に大腿四頭筋を鍛えることができます。

●座って太もも上げ体操

脚の付け根にある筋肉(腸腰筋:ちょうようきん)を鍛えることで、脚が前に振り出しやすくなったり、姿勢を保ちやすくなります。

◯方法

1.椅子に座ってしっかり背すじを伸ばす
2.姿勢を保ったままゆっくり太ももを上げる
3.上げた太ももをゆっくり下ろす

◯回数とポイント

左右10回ずつ2セット行いましょう。
骨盤を起こすように姿勢を保ちながら行うことで、腸腰筋を効果的に使うことができます。

●座ってかかと上げ体操

かかと上げの運動はふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋:かたいさんとうきん)を動かし、歩行でしっかり地面を蹴ることができることに加えて、むくみの対策にもなります。

◯方法

1.椅子に座って両足をしっかり地面につけます
2.かかとをできるだけ上げてふくらはぎに力をいれます
3.ゆっくりかかとを下ろします

◯回数とポイント

左右同時に20回を2セット行いましょう。
意識してふくらはぎにしっかり力を入れることで、第2の心臓であるふくらはぎから心臓に血液が戻り、むくみを和らげます。
余裕があれば、立って行うとより筋力アップに効果的です。

●立って脚の横上げ体操

立って運動を行うことで軸足になる脚が片脚立ちになりバランスをとる運動ができるとともに、動かすほうの脚の筋力を高めることもできます。

◯方法

1.椅子の背をもって両足で姿勢良く立ちます
2.姿勢をまっすぐ保ちながら片脚を横にゆっくり上げます
3.上げた脚をゆっくり戻します

◯回数とポイント

左右10回ずつ2セット行いましょう。
脚を横に上げるとき、しっかり真横に上げて、お尻の横の筋肉(中殿筋:ちゅうでんきん)に力が入るように意識しましょう。
また、脚を上げたときに、体が横に倒れないように姿勢を保つことで、効率よく脚を鍛えられます。

●立って脚の後ろ上げ体操

横上げと同様に軸足のバランスと上げる方のお尻の筋肉(大殿筋:だいでんきん)を鍛えられる運動です。

◯方法

1.椅子の背をもって両足で姿勢良く立ちます
2.姿勢をまっすぐ保ちながら片脚を後ろにゆっくり上げます
3.上げた脚をゆっくり戻します

◯回数とポイント

左右10回ずつ2セット行いましょう。
脚を上げるときに、姿勢が前に倒れたり、腰がそらないように注意しましょう。
また、脚を上げたときはお尻が引き締まるのを意識しながら行いましょう。

重錘バンドを使ったリハビリの効果と地域での実践ポイント

重錘バンドを使ったリハビリを地域で行うことで、いろいろな効果がみられています。
そこで、体操の効果と筆者が行っている地域での実践例を紹介します。

●体操の効果は「筋力アップ」や「痛みの改善」

Bakerらは地域で重錘を使った体操を行った結果、膝を伸ばす筋力や痛みが改善したと報告しています。
また、島らが地域に住む高齢者に対して、重錘バンドを使用した筋力強化トレーニングを行った結果、筋力が向上したと報告しています。
以上のように、重錘バンドは筋力の向上や膝の痛みの改善といった効果のあるリハビリができます。

●地域で実践するポイント5つ

地域ですでに重錘バンドによる体操を行っている場所はたくさんあります。
筆者の働く広島市では、重錘バンドを使用した体操が多くの集会所で実践されています。2016年12月の16カ所から2017年9月には265カ所と9カ月で15倍以上の場所で体操が実施され、現在も増加中です。
そこで実践している、地域で体操を実施するためのポイントを紹介します。

1.週1回からでもOK

最初から高い目標を立てても、なかなか継続できません。
重錘バンド体操はまずは週1回からでもいいので、毎週継続することがポイントです。

2.簡単な体操なのでどこでも実施可能

先程紹介した体操であれば、椅子さえあれば場所は問いません。
そのため、場所はあまり考えずに、集まりやすい場所で実施しましょう。
近所の井戸端会議の1回を体操の会にしてもよし、町内会の集まりで定期的に実施してもいいです。
面白い例では、いつもみんなで集まる喫茶店で体操をしているという例もあります。

3.声をかけやすい人から誘おう

決して大人数から始める必要はありません。
一人で行うより知り合いと行えば楽しく運動が続けられます。
まずは、声をかけやすい人から誘って、複数人で体操しましょう。

4.回数を数えながら行って血圧上昇を予防

力を入れて息をこらえると、血圧が上昇してしまいます。
回数を数えることで、呼吸を止めずに運動ができるため、血圧上昇を予防できます。
各運動とも、4つ数えて上げて、4つ数えて下ろすようにして、ゆっくり数えましょう。

5.みんなで効果を実感し合おう

みんなで体操をすることで感じたことを共有することができ、モチベーションを保つことができます。
筆者の関わるグループも、「杖がいらなくなった」、「脚が軽くなった」といった体の変化や、「体操がみんなで集まるきっかけになって楽しい」、「定期的にみんなの顔が見られて安心」といった効果を共有して、毎週いきいきと体操教室を続けられています。

重錘バンドで気軽に体操を続けて健康になろう

重錘バンドは誰でも簡単に扱えて、適度な負荷がかけられる便利な器具です。
ただし、一人で運動を行っても、なかなか継続することができません。
しかし、重錘バンドを使って、近所の人や家族を交えて体操を行えば、簡単に楽しく体操を続けることができます。
みんなで重錘バンドを使った運動を行い、個人が健康になるのはもちろん、楽しく元気な地域にしましょう。

※必ずお使いの製品の添付文書および取扱説明書をご確認の上、ご使用いただきますようお願い致します。

参考:
オージーウエルネス 重錘バンド GF-130(2019年12月3日引用)
介護予防・重度化予防実践の手引き 地域リハ資源活用の好事例集.広島県老人保健施設協議会:53-70,2018.
島浩人,池添冬芽,他:地域在住の高齢者における低負荷運動トレーニングの介入効果ー運動機能、精神機能に及ぼす影響についてー.第40回日本理学療法学術大会 抄録集,2005.
Baker KR, Nelson ME, Felson DT, et al.: The efficacy of home based progressive strength training in older adults with knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. J Rheumatol 28: 1655-1665, 2001.

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