アメリカのシニア向け展示会訪問レポート:地域の会社貢献度、介護ヘルパーサービスの違い
アメリカの市町村が開催するシニア向けの展示会を訪問してきました。
会場内をブースで区切り、医療保険会社、地域の病院・クリニック・公的機関、老人ホームやヘルパー斡旋会社、各種団体などがサービスについての説明、案内などを行うものです。
アメリカにおける高齢者への地域の取り組み、ヘルパーサービス、日本との違いなどについてお話ししていくことにしましょう。
目次
アメリカのシニア展示会の概要とは?
アメリカの地方都市で行われるSenior Expoと呼ばれるシニア向けの展示会に参加してきました。
一体どんなサービスを受けることができるのでしょうか。
●シニア展示会(Senior Expo)は高齢者やその家族のために市が開催する展示会
シニア向けの展示会は、市町村が1年に一度開催する高齢者やその関係者が必要な情報を得られる展示会となっています。
筆者が今回参加したシニア展示会は、約60の地域の情報を展示するブースを無料で見学することが可能なものでした。
開催場所は市の施設であるスポーツセンターと併設するコンサートホールの一部を使用して行われました。
●シニア展示会ではエンターテインメントや高齢者への配慮も充実
シニア展示会では、ブースごとにノベルティーグッズや飲み物、ちょっとした軽食までさまざまな特典があり、ダンスフロアではダンスまで行われ、参加者を楽しませてくれます。
もちろん医療保険会社やヘルパー派遣会社、老人ホームや整形外科系のクリニックなどはサービスの説明、パンフレットの配布なども行ないます。
ノベルティーグッズの中でも、医療保険会社のブースではペットボトルや薬のキャップなどを力を入れなくても開けることができる自助具の一つであるキャップオープナーが配られたりと、高齢者への配慮が盛り込まれています。
本人も家族も気軽に参加できる展示会。地域の産業が行う高齢者サービス
このシニア展示会は、入場料は無料で市の中心部にある施設内での開催なので、誰でも気軽に参加することが可能です。
実際に出展している地域産業のサービスをご紹介しましょう。
●地域産業のさまざまな高齢者向けの取り組み
地域産業や公的機関もさまざまなサービスをシニア向けに提供しています。
- ○市の消防署による防災キャンペーン
- ○地域のスーパーマーケットがオンラインオーダーを説明(車で受け取りブースに行くと積み込みもしてくれます)
- ○地域の病院による高齢者への運動推進活動
- ○アルツハイマーの非営利団体による疾患の啓蒙活動
- ○市が提供するガーデニングクラブへの勧誘、図書館での高齢者向けの活動を紹介
- ○介護ヘルパー派遣業者によるサービスの説明
このように、地域の産業によるものや政府が行う高齢者への社会福祉の紹介など、QOL向上のための取り組みについて知ることができます。
ほかにも、アメリカは日本とは異なり医療保険を自分で選択できるため、医療保険会社は自社の高齢者向け商品のメリットのPRや保険プランなどを提示します。
●シニア展示会でインフルエンザの予防接種も行える!
アメリカの大手スーパーマーケットには薬局が併設しており、処方薬や応急処置が必要な方のための診療所のようなものを併設しているところもあります。
その薬局が展示会に参加しており、保険証があればインフルエンザの予防接種も行うことができるようになっていました。
インフルエンザの予防接種ブースにはナースが1名常駐し、氏名や住所、ワクチンでの副作用の履歴や既往歴、妊娠などに関する質問に答えるとその場で接種できます。
医療制度が異なるので日本では同じように行うことが難しいですが、買い物のついでに、また展示会などで予約なしで接種できるのは嬉しいです。
筆者が感じたアメリカと日本の違い:介護ヘルパー斡旋会社と保険制度の違い
このシニア展示会を通じて筆者が感じたことは、日本とアメリカの介護制度の違いと介護ヘルパー事業の違いです。
実際どのような点が異なるのでしょうか。
●アメリカに公的な介護保険はほとんどなし。ヘルパーの派遣も多くは自費
アメリカには日本における介護保険のような公的な高齢者のための医療制度はほとんど存在しません。
アメリカにおいての介護保険は、自己負担や個人加入のものがほとんどであり、介護にかかる金額はかなり高額となります。
ナーシングホーム(日本でいう老人ホームのようなところ)などで、必要なケアなどのサービスを付加することにより負担額も増加します。
また、日本の介護保険などにおいてヘルパーさんなどが行う業務である家事補助、食事の宅配などは医療に含まれず、個人での負担が必要となります。
(出典:アメリカにおける長期介護をめぐる動向)
●アメリカの介護ヘルパー派遣会社における疾患別ヘルパーサービス
アメリカは日本とは異なる医療保険制度の違いから、病院での入院期間も非常に短くなっており、自宅での介護が必要となりますが、仕事を持った家族などはできない場合もあります。
今回筆者が参加したシニア展示会の1ブースでは、ヘルパー派遣会社が自社の商品をPRしていました。
アルツハイマー病や認知症・パーキンソン病・外科手術後と対象を分け、ヘルパー派遣をしている会社でした。
ヘルパー向けの対象疾患に応じた知識などを記したWebサイトや市民講座などにより、対象疾患を深く知ることもできます。
アメリカにおけるヘルパー派遣会社の対象疾患別のサービスは、対象者を絞ることでより専門的で手厚いケアをすることを目的としています。
多くの経験のあるヘルパーさんなら家族を預けるのも安心です。
地域社会から高齢者や家族への情報提供により、より良い介護へ
日本においても公的介護保険や、さまざまな高齢者向けのサービスなどの情報を知り得る機会は非常に限られており、地域社会レベルでの情報を得る機会は少ないのが現状です。
このような展示会や地域産業のシニア向けのサービスなどを知る機会を得ることで、高齢者とその家族が介護について知ることができ、本人の希望にあったサービスを受けられます。
今後、日本でも同じように高齢者向けのサービスに関する情報を知り得る機会が増えることを望むばかりです。
参考:
アメリカにおける長期介護をめぐる動向 国際長寿センター.(2018年11月22日引用)
Family Caregiver Alliance Parkinson’s Disease and Caregiving.(2018年11月22日引用)
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執筆者
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1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士