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ここで差がつく!優秀なPT・OTは必ず実践している患者の定量的評価のススメ

リハビリテーションは「定性的評価」で治療が行われていた部分がありました。
しかし近年では、Evidence-based medicine(EBM)が重視され、その根拠となる「定量的評価」が求められるようになっています。
患者さんにとっても大切な定量的評価。この記事では優れたPT・OTが行っている定量的評価について解説します。

1.リハビリには「根拠」が必要

昨今ではさまざまな分野において、経験や慣習などではないEBMの提供が求められています。
リハビリ分野におけるEBMは、科学的根拠のある治療を個々の患者さんの意向に沿って適応させ、より良いリハビリを提供することにあります。

リハビリが提供する医療は、薬のように定量化されたものではありません。
その評価や治療法は、施設の設備や用いる機器、理学療法士(以下PT)や作業療法士(以下OT)のアプローチの仕方によっても異なります。

しかし、EBMが重視されるこれからの医療においては、科学的根拠のあるリハビリを行い、それを数値化して明らかに変化があったことを証明していく必要があります。
その結果を用いて新たなEBMの作成や裏付けを行うことは、これからのリハビリテーションを発展させていくうえでも重要なのです。

2.PT・OTは必須!患者の定量的評価のやり方

先述したように、EBMが重視される近年では、数字のように明確なもので治療効果を示す必要がありますが、実際にPT・OTが臨床の場で行う定量的評価には、どのようなものがあるのでしょうか。

患者さんの身体機能を把握するうえで欠かせないものが、さまざまな「評価」です。
しかしそのなかでも定量的評価が可能なものと、そうでないものが存在します。
たとえば動作観察などは評価として重要なものですが、改善度合いが目に見えてわかりにくいため、定量的評価が難しいといえます。
以下では、具体的な評価項目について解説します。

1)身体機能の定量的評価

(1) ROM

関節の可動範囲を、角度形を基本軸と移動軸に当てて測定します。
測定値は5度刻みで表示します。治療前後の測定により、治療効果を判定できます。

(2)MMT

MMT(徒手筋力検査法)は、検査者であるPT・OTが徒手によって個々の筋力に抵抗を加え、6段階で評価を行うものです。
これにより、筋力や日常生活動作の定量的評価が可能になりますが、検査者の技術や抵抗を加える箇所によっても数値が変わるため、誤差が生じやすいといえます。
ただし、重力に抗して全運動範囲を動かせるMMT3以上の場合は、ハンドヘルドダイナモメーターなどの検査機器を用いることで客観的なデータが得られます。

(3)FRT

Functional Reach Testの略語で、被験者のバランス能力のテストです。
両足を軽く開き腕を90度に挙上して、足を動かさずにどれだけ前にある物をつかめるか、その距離を測定します。
爪先立ちは可とし、cmで表示します。重心動揺と相関が高く、再現性も高い簡便な方法です。

(4)TUG

Timed Up & Go Testの略で、慢性期脳卒中患者において足底筋力、歩行能力・耐久性との相関が高い検査です。検査方法は椅子から立ち上がって3mの範囲を往復し、椅子まで戻って来るまでの所要時間を測定します。

(5)握力

腕を下垂して握力計を持ち、被験者の示指PIP関節が90度となるようにグリップの握り幅を調整します。左右2回ずつ交互に測定し、その値はkg未満で切り捨て、結果の良い方を測定値とします。

(6)Barthel Index

基本的ADLを、整容・食事・排泄・起居動作・移動能力・更衣動作・入浴・階段昇降などの10項目で、100点もしくは20点満点で評価します。
定期的に測定することで、治療効果の判定が可能です。

2)認知機能の定量的評価

(1)GCS(Glasgow Coma Scale)

意識レベルの評価をする際に用いられる指標です。
開眼・言語・運動に分けて点数化したもので重症度が一目でわかります。観察結果を記入する際、「覚醒度が低い」といった検査者の主観的評価だけではなく、GCSのような客観的データをカルテに残しておくと、その後の評価や比較に役立ちます。

(2)HDS~R(長谷川式認知症スケール)

「年齢・見当識(時間・場所)・3単語の即時記銘力」と、「再生・計算・数字の逆唱・物の記銘力・言語の流暢さ」の9つの項目を30点満点で評価します。認知症の診断に有効です。

(3)MMSE(ミニメンタルステート検査)

見当識(時間・場所)・3単語の即時・遅延再生・計算能力・物の名前・文章の復唱・3段階の口頭での命令・文章書字、図形模写・書字命令の11項目を30点満点で評価します。 HDS-R同様、認知症診断に有効です。

(4)TMT(Trail Making Test)

注意能力の持続や視覚的探索などの評価をします。専用の紙を使用し、被験者は不規則に並んだ1〜25までの数字を、数字順に線で結んでいきます。
できるだけ早く正確に結んでもらい、その早さを測定します。
AとBの2種類があり、両方の検査を行うことでより複雑な認知機能を評価できます。

3.定量的評価をレベルアップさせる3つのポイント

普段PT・OTの皆さんが行っている評価法に、ちょっとした工夫もしくは機器を使うことで、測定精度のレベルアップが可能になります。
そのポイントを3つご紹介しましょう。

1)機器を使う

たとえばROMやMMTなどは、検査者間・検査者内での信頼性が低く、検査結果にいくらかの誤差が生じます。
しかし、ハンドヘルドダイナモメーターなどの機器を使用すれば、客観的なデータをとることができるので、検査値の信頼性も高くなります。
また、同一条件(機器や状況)で行うことにより、評価の基準を統一化することができるため、こうしてだされた評価は、他施設間のアカデミックなデータとしても有効になります。

2)推奨グレードの高い評価法を使用する。

各疾患における身体初見の評価方法には、推奨グレードが存在するのをご存じでしょうか。推奨グレードの高い評価法は信頼性と妥当性が保証されたもので、エビデンスの高い治療評価を得られます。

3)技術のスキルアップ

なにより大切なのは、マニュアルにのっとった評価をすることです。たとえばMMTを行う際の肢位や固定部位、抵抗を当てる場所などが違うと、当然結果も異なってきます。
評価手技がおろそかになっては、正確なデータは得られません。

機器を使った定量的評価では、毎回信頼度の高い評価をだすために、「同じ機器」「同じ固定部位」といった評価方法の統一が肝要になってきます。
検査者によってやり方が違うなど評価方法にズレが生じないように、検査者同士の信頼関係を向上させることも大切です。

4.「評価の見える化」は患者さんのメリットにもなる

定量的評価は、評価者であるPT・OTにのみメリットがあるのではありません。
評価される側の患者さんにも大きなメリットがあります。

たとえば、「筋力がつきましたね」と主観的な評価を伝えられるより、握力計などで測った数値を提示される方が成果を実感しやすくなります。
また、日常生活動作に関しても「この数値が○から○に改善しています」と根拠を示すことができるので、リハビリに対する満足度も上がり、患者さんのモチベーションアップにもつながります。

5.まとめ


定量的評価は、EBMに沿った治療を患者さんに提供し、治療効果のさらなる向上を図ることを可能にしてくれます。
正確なデータが得られれば、患者さんへのフィードバックもより効果的なものになります。また、評価基準を統一化し信頼度を高めることで、施設間における誤差を解消することも期待できるでしょう。

定量的評価はPT・OTにのみ利点があるのではなく、患者さんにとっても大きなメリットがある評価法です。積極的に臨床現場に取り入れて、より良い医療を提供しましょう。

参考:
日本理学療法士協会
日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会
推奨グレードの決定およびエビデンスレベルの分類
新たに考案した起立・バランステストがTimed_Up_and_Go_testに代用できるか ―CGAinitiative「Dr.SUPERMAN」開発のための歩行・バランス機能評価
健康長寿ネット・正確な握力の測定方法
日本老年医学会
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/tool_03.html” rel=”noopener
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/tool_09.pdf
アメリカ心臓協会 BLS,ACLS講習会
意識障害2 意識障害の評価法 | JCS,GCS,ECSとは
日本老年医学会 認知機能の評価法と認知症の診断
日本老年医学会 認知機能の評価法と認知症の診断
公益財団法人日本医療機能評価機構
Trail_Making_TestとMini-Mental_State_Examinationとの関連
公益社団法人日本理学療法士協会 エビデンスレベルの分類

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