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誰でも簡単にできる!知っておきたい運動効果の評価方法5選

2018年度の介護報酬改定では重度化防止と自立支援がカギとなりますが、「運動の効果判定はどうすればいいの?」とお悩みの方も多いでしょう。
 本記事では、理学療法士の立場からリハビリ専門職以外でも簡単にできる5つの評価方法をご紹介しますので、ぜひともお役立てください。

運動の効果を評価する理由

通所介護(以下デイサービス)において、個別機能訓練加算を算定している事業所は多いでしょう。
しかし、運動を提供するだけで実際の生活改善に結びつかないと意味を成しません。
ここでは、デイサービスにおいて運動効果を評価する理由について説明します。

○利用者さんや外部への情報提供ができる

デイサービス事業所は年々増加傾向にあり、またその多くが小規模の地域密着型サービスに移行しています。
一人ひとりに合った個別のサービスを提供する事業所も多く、利用者さんや経験の浅いケアマネジャーさんはどこを選べばいいのか迷ってしまいます。
そんなとき、利用者さんがサービスを提供された結果、なにがどれだけ良くなったかを客観的に示せる指標があれば、判断がしやすくなります。
さらに努力した結果を数字で確認することによって、生活自体のモチベーションが上がる方もおられます。
また事業所にとっても、こうした実績を外部に提示することで、数多くある事業所との差別化を図ることができるでしょう。

○サービス提供者間での共通言語が必要

多職種での会議や医療機関からのサマリー情報などで、専門的な表現を多用する方がおられます。
しかし多忙な介護の現場では、なるべく簡潔でわかりやすい情報伝達を求める方が多いといえます。
そんな場合でも一般的に知られている評価方法を用いれば、利用者さんの運動機能の改善度合いもスムーズに伝えることができます。
こうした「共通言語」を使うことによって、迅速かつ正確な情報を共有でき、参加者各自がもつ専門的な意見を引き出すことが可能になるのです。

○生活目標設定のための指標となる

2018年度の介護報酬改定においては、「日常生活動作の維持または改善の度合いが一定の水準を超えた場合を新たに評価する」としています。
これに従えば、具体的な生活目標を定める際に、運動機能の改善効果を判定することは必須になるといえるでしょう。
効果判定を定期的に行うことで、利用者さんに必要な介助量や、日常生活の活動範囲を予想することが可能になるからです。
運動効果を評価する目的は、生活を改善するためであることを忘れてはいけません。

運動の効果を把握するための5つの評価方法

普段の業務が忙しいなか、煩雑な評価表の作成や記入は誰しも避けたいところです。
そこで、身のまわりにある備品で簡単に実施できる評価方法をご紹介します。
所要時間は3分もあれば十分可能ですので、ぜひお試しください。

1)TUG(Timed Up and Go test)

46cmの椅子から立ち上がり、3m先まで歩いたあとにUターンをして元の位置まで戻ります。
椅子に座るまでの所要時間が13.5秒以上では転倒リスクが高くなると報告されています。
この評価は足の筋力だけではなく、バランス能力とも関係しているため、利用者さんの日常生活を考えるうえで必要性は高いといえます。

2)CS-30(30-seconds chair-stand test)

なにかの暗号のようで難しい印象を受けますが、要するに「40cmの椅子に座った状態から30秒間に何回立ち上がりができるか」を評価する方法です。
両腕は胸のまえで組み、立ち上がるときに使用してはいけません。
15回未満では転倒リスクが高くなると報告されています。

3)10m歩行

10mの直線上を歩いたスピードを計測します。注意点としては、十分な加速ができず、また終了手前で減速するのを防ぐために、開始線手前と終了線の先に2mほどの余裕を持たせておく必要があります。
目安として、屋外を安全に歩くには12.5秒以内、一方で25秒以上であれば屋内歩行レベルが妥当と考えられています。
一般的に、歩行者用の青信号は秒速1m(10mを10秒)で歩くことを前提に設定されていることから、しっかりと評価して屋外活動における一つの目安にしておきましょう。

4)Functional Reach Test

直立した姿勢から片方の腕を90°挙上して、前方に手を伸ばします。
その際、足の位置は開始位置から動いてはいけません。
挙げた方の指先の位置から、何cm前方まで伸ばせたかを計測します。
評価のたびに定規をあてて計測するのは大変なので、実施場所の横に目盛りを書いた紙を貼っておくと便利です。
伸ばせた距離が15cm未満の場合は転倒リスクが高くなります。

5)握力測定と片脚立位時間

• 握力
握力は難しい動きを必要とせず、誰でも簡便に測定できます。
腕の力の指標と思われがちですが、過去の研究から全身の筋力と大きな関連があることが明らかになっています。
基準値は、75〜79歳男性で35.07kg、女性で22.49kgとされています。
握る動作は日常生活で必要な場面が多く、急激な低下は自宅での活動量の減少が予想されるので、定期的に測定しておくことをおすすめします。

• 片脚立位時間
 どちらか片方の足で立ち、目を開けている状態で保持できる時間が5秒以内であれば転倒リスクが高いとされています。
しかし、バランス能力は60歳を超えたあたりから急速に低下するため、介護サービスを受けている後期高齢者では実施が難しい場合もあります。
一方で、介護予防事業など比較的元気な高齢者を対象としたスクリーニング検査としては有用といえます。
介護予防のために作成する運動計画の参考にもなりますが、実施の際は転倒に注意してください。

上記に挙げた評価方法は、主に立つ・歩くといった基本動作能力を見ています。
それぞれカットオフ値を記載していますが、数値以外のチェック項目にも目を向けることが重要です。
例として、

  • • 方向転換時にふらつきがないか?
  • • 立ち上がりの際に膝の痛みがないか?
  • • 歩くときにしっかり足が上がっているか?

などの項目はチェックしておくことをおすすめします。プラスαの情報があるだけで、その後に結果を活用できる範囲が広がります。
事業所ごとに評価方法と、そのほかのチェック項目を統一しておくとよいでしょう。

運動の効果判定をどう活用するか

評価方法を理解して実践したあとは、いかにアウトプットしていくかが重要となります。
ここでは、実際に評価した結果を業務でどう活用していくかを、2つの例を挙げてご紹介します。

○必要な福祉用具の検討

介護保険サービスを提供するなかで、ケアプラン作成時や認定区分変更の際にはサービス担当者会議が開かれます。
サービス利用中の方であれば、運動機能の評価が実施されていることで現在の生活状態が把握できます。
その情報を元に、転倒リスクが高い利用者さんに対しては、歩行補助具の検討や家屋改修の必要性などを提案することが可能です。
また、機能訓練を継続するなかで運動機能に改善が認められれば、福祉用具からの卒業も検討できるかもしれません。
自立支援・重度化防止にむけて、運動機能の効果判定は重要な役割を担っています。

○運動メニューの見直し

介護分野においては、時期的な問題から体の症状(麻痺など)が固定している方が多く、評価に基づいた運動を指導しても結果に結びつかないことがあります。
そんなときには、もう一度運動メニューを見直して「改善が可能であるか」、「ほかに運動方法はないか」、「目標設定は妥当であるか」を考え直す必要があります。
そのためにも、定期的に運動機能の評価を実施しておくことが望ましいです。

また、2018年度の介護報酬改定では生活機能向上連携加算が創設され、外部のリハビリ専門職と協働で計画書を作成することが評価されます。
その際に、事業所の介護スタッフが運動機能の評価を実施できていると、ミーティングも円滑に進めることができます。

まとめ

本記事では、運動の効果判定のために知っておきたい5つの評価方法と、効果判定をする必要性についてご紹介しました。
今後の介護業界において、運動機能の評価をすることは、自立支援と重度化防止に努めていくうえでは必須となります。
しかし、あれもこれもと導入すると、スタッフや利用者さんに過度な負担がかかりますので、各事業所に合った評価方法をいろいろと組み合わせて実施していただければと思います。

参照:
中村隆一 他(2002).臨床運動学 第3版 医歯薬出版株式会社
川端 悠士 他(2008).地域在住高齢者における転倒予測テストとしてのCS-30の有用性.理学療法科学,23(3),441-445.
身体的虚弱(高齢者)理学療法診療ガイドライン
公益社団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット

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