楽しみながらできるデュアルタスクトレーニングとは?
デュアルタスクとは2つのことを同時に行うことを指します。
デュアルタスクができなくなると料理が難しくなったり、歩行時に転倒したりと日常生活でさまざまな問題が生じます。
デュアルタスクトレーニングは脳の前頭葉を活性化させるトレーニングなので、認知症の予防につながります。
今回は高齢者が楽しみながらできるデュアルタスクトレーニングの方法を解説します。
デュアルタスクトレーニングとは?
デュアルタスクトレーニングとは2つ以上のことを同時に行うことで認知機能の維持・改善を図るトレーニングです。
生活場面でデュアルタスクが必要な場面は多く、料理をしたり、誰かと会話しながら散歩をすることにもデュアルタスクが必要です。
デュアルタスクについての詳しい解説は「二重課題(デュアルタスク)のトレーニング例は?リハビリ室ですぐに使える訓練のアイデア3つ」をご確認ください。
楽しみながらできる!デュアルタスクトレーニング5選!
デュアルタスクトレーニングといえば、散歩をしながら計算をしたり、数を数えながら3の倍数だけ手を叩くなどが例として挙げられますが、計算問題はできないと苦痛に感じる方もいます。
「トレーニング」と聞くと難しい内容ではないか、自分にできるか、と不安になる方もいます。
トレーニングを始める前に「間違ったとしても効果がある」ことを説明すると、安心して参加でき、ゲーム性のあるトレーニングを選ぶことで参加のモチベーションも上がります。
今回は、高齢者の方が楽しみながらできるデュアルタスクトレーニングを5つご紹介します。
●歌体操
1)内容
歌体操とは、歌を歌いながら簡単な体操をする運動です。
高齢者の方にとってなじみのある曲を選ぶのがポイントです。
季節の唱歌(春が来た、かえるの合唱など)や、青い山脈、365歩のマーチ、憧れのハワイ航路などはテンポのよい曲であるため歌体操におすすめです。
組み合わせる運動は全身を大きく動かす粗大運動を選びます。
足踏み運動や腕を上げ下げする、肘を曲げ伸ばしするといった運動を組み合わせましょう。
2〜3小節ごとに運動を変えると注意の切り替えが必要となり効果的に認知機能を鍛えられます。
2)必要なもの
オーディオ、CD、歌詞、歌詞を貼るためのホワイトボード
3)グループの人数
10〜20名程度(場の広さで人数を変えます)
●古今東西ゲーム×足踏み運動
1)内容
あるお題を出して順番に答えていく古今東西ゲームに足踏み運動を組み合わせます。
お題は「赤いもの」や「果物の名前」、「花の名前」など、参加者が比較的答えやすいものにするとよいでしょう。
グループに参加している方の認知機能にあわせてお題を変更します。
なるべく足踏みが止まらないように気をつけてリズムよく答えていくと効果的です。
足踏みは一定のリズムでしながら、手を2回叩いた後にお題に答える行程を順番に回していきます。
椅子は円に並べると次に誰が答えるかがわかりやすくなります。
2)必要なもの
人数分の椅子
3)グループの人数
10〜15名程度
●旗上げゲーム
1)内容
赤と白の旗を左右に持ち、指示された通りに旗を上げ下げするゲームです。
注意の切り替えが必要になります。
各チームから1名ずつ前に出て行い、スタッフの一人は指示をし、もう一人のスタッフは正解数を数えます。
正解数の多いほうのチームが勝ちというルールで行うとゲーム感が増してより楽しめます。
指示のテンポを徐々に速くすると段階付けができ、スピード感のあるゲームになります。
2)必要なもの
紅白の旗、椅子、得点を書くホワイトボード
3)グループの人数
各チーム5名程度
●右手?左手?お手玉キャッチ
1)内容
二人組で向かいあって立ち、投げる人は相手が右手でとるか左手でとるかを投げる直前に口頭で指示します。
お手玉をとる人は投げる人が指示したほうの手でとります。
下肢筋力が低下している方やバランス機能が低下している方は、椅子に座ってすると転倒を防げます。
徐々に投げるスピードや投げる間隔を速くしていくと段階付けすることができます。
お手玉の代わりにハンカチやビニールひもを使うと、空中に浮いている時間が長くなり、キャッチもしやすくなります。
重心移動をともなうトレーニングであるため、足場の安定した場所で、隣との間隔を空けて行い、転倒に注意します。
2)必要なもの
お手玉やハンカチ、ビニールテープ、椅子(必要であれば)
3)グループの人数
スタッフ1名につき2〜6名
●ワン!ニャー!ゲーム
1)内容
足踏みをしながら「イヌ」と言われたら「ワン!」、「ネコ」と言われたら「ニャー!」とリズムよく答えます。
最初は足踏みの速さをゆっくりにして行い、徐々にスピードを上げていくと段階付けができます。
慣れてきたら、「ブタ」や「ウシ」、「ヒツジ」など、動物の数を増やしていくとよいでしょう。
2)必要なもの
人数分の椅子
3)グループの人数
10〜20名程度(場の広さで人数を変えます)
参加者が笑顔になれる場を作り、楽しんでトレーニングをしよう
参加者が笑顔になれる場を作るにはトレーニングの内容を参加者が楽しめるものにすることが重要ですが、スタッフの声かけも重要です。
個人にかける言葉や参加者全体、チーム全体にポジティブなコメントをすることで場は盛り上がります。
参加者の中で声援や笑いが生まれると場は明るくなり、楽しいグループ活動になり、トレーニングの効果も高まります。
「また参加したい」、「私も参加してみたい」と利用者の方に思ってもらえる場を作り、楽しんでトレーニングをしましょう。
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執筆者
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大学を卒業後、作業療法士免許を取得。急性期病院やデイサービス、福祉用具・住宅改修業者での勤務を経て、現在は精神科病院にてリハビリ業務に従事。心身の健康や在宅で安全に安心して暮らせる方法をわかりやすく丁寧にお伝えします。医療従事者の方々の健康にも焦点を当てていきたいと思っています。
保有資格:作業療法士、重度訪問介護従業者、福祉住環境コーディネーター2級