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レクリエーション

認知症の方にも!レクリエーションで心も体も生き生きと過ごそう~夏にぴったり!盆踊りを取り入れよう~

レクリエーションを取り入れる際、参加者にどんな効果をもたらしたいのかを考え企画することはとても大切です。
作業療法士がなぜそのレクリエーションを選定したのか、着目したポイントを知ることで、参加者により効果的な活動が行えるようになります。

遠い記憶の祭りばやしを思い出す レクリエーションで盆踊り

作業療法士が解説!レクリエーションの治療効果

レクリエーションは、参加者が「やりたい」「楽しい」と感じられる活動であることが大切です。
レクリエーションは、参加者にどのような治療効果を生むのでしょうか。

1)生理的効果

疲労の回復や血液循環を良くし、身体状態の安定につながります。

2)心理的効果

来年は昔みたいに踊りたい リハビリの目標になることも

緊張状態から解放したり、たまっていた負の感情を発散させたりして、情緒を安定させる効果を持ちます。
これは精神障害の方や高齢の方に、特に効果があります。

3)社会的効果

レクリエーションをきっかけにしてほかの人と協力したり、自分の責任を果たしたりして、人間関係を構築します。
これが社会性の維持や促進につながります。

4)余暇を活用する効果

毎日を意欲的に過ごせたり、余暇を積極的に楽しめたりします。

5)教育的効果

新しい知識や経験を積めます。

6)創作活動的効果

知能面の低下が少ない人では、創作意欲や独創性が生まれ、思考能力の停止を予防したり、やりがいを感じられます。

これらの治療効果があることを踏まえ、レクリエーションを取り入れる際には、参加者にどのような効果をもたらしたいのかを考える必要があります。

参加者への基本的な対応

参加者への対応として、レクリエーションを実施する側は、以下の点を心がけることが大切です。

  • 〇参加者に対し尊敬の念を持ち、丁寧な対応を心がける
  • 〇介助の際には、必ずひと声かけてから行う
  • 〇足の位置、手の位置などに注意し、安全面の確認を行う
  • 〇急いでいるからといって、車椅子の介助を乱暴に行わない
  • 〇何らかの形で全員が参加できるように工夫する

認知症の方も楽しく参加できるための、対応のコツ

そんな子どもっぽいことやりたくないわ 利用者さんが参加に消極的な場合

参加者のなかには、レクリエーションの参加に拒否的な方もいます。
社会的地位の高い方などは、レクリエーションを幼稚な活動のように感じてしまうこともあり、「参加したくない」と感じる場合もあります。
そんなときは、まず相手の気持ちを尊重し、「〇〇さんに助けてもらえると助かるのですが」などとお願いする形をとります。
相手に役割を持たすことで、やりがいを生みます。
また、認知症の方の場合は、その方の症状を理解した上で対応することが大切です。

1)徘徊のある人

  • 一人のスタッフが専属で介助できることが理想です。
    しかし、スタッフの人数の兼ね合いなどで難しい場合は、その方から目を離さないようにしましょう。
  • 〇徘徊し始めたら、無理に抑えこまないようにしましょう。
    少しついて歩いた後で、「疲れたでしょう?戻りましょうか」などと声をかけ、相手の気持ちに寄り添いながら、輪の中に戻れるように誘導します。

2)大声や奇声を発する人

  • 〇まずは落ち着くまで待ちましょう。
    「静かに」と声をかけると、かえって興奮して逆効果になることもあります。
  • 〇誰かに話しかけているのであれば、話を聞いてみましょう。
  • 〇それでも収まらなければ、ほかの場所に移動するなどして、気持ちを落ち着かせてから、輪の中に戻るようにしましょう。

3)暴力行為があったり、怒りっぽかったりする人

  • 〇何に怒っているのかを理解し、気持ちに寄り添いましょう。
  • 〇怒り出したら、正面から話しかけず、横から静かに問いかけるようにしましょう。
  • 〇もし、自分に対して怒っているのであれば、ほかのスタッフに対応を代わってもらうのも一つの手段です。

4)レクリエーションの物品を収集してしまう人

  • 〇安全面の配慮として、口に入れられるものは使わないようにしましょう。
  • 〇「返してください」というのではなく、「少し見せてもらってもいいですか?」「少し貸してもらえませんか?」などと言い方を変えてみましょう。

夏の季節にぴったり、ほどよい運動が可能な盆踊り

多くの利用者さんに楽しんでもらうために 具体的な計画を立てよう

1)盆踊りがもたらす効果

盆踊りは歩くことはもちろん、上半身の動きを自然に引き出せる全身運動です。
1曲踊るだけでも、250歩程度の歩数を歩けます。
軽い運動は気持ちをリフレッシュでき、運動機会が減っている人には適度な歩行が身体機能維持につながります。
盆踊りの音楽は、過去に聞いたことがある人が多く、その音楽を聴くと自然と手が動き出す人もいます。
車椅子に座りながらも、首や肩、手などを音楽に合わせて動かせ、すぐに踊りに参加できる手軽さもあります。
また、踊りの様子を見たり音楽を聴いたりすることで、昔の記憶や生活経験を呼び起こすきっかけにもなります。

2)参加対象

歩行の方はもちろん、車椅子の方でも上半身を使って踊りに参加できるため、身体面で制限がある方も参加できます。
また、認知症の症状が重く踊れなくても、音楽を聴くだけでも情緒面の安定をもたらす効果があるので、比較的誰でも参加できる活動です。

3)人数設定、時間配分

人数は20人程度までにすると活動がまとまりやすく行いやすいです。
時間は20分程度あればでき、空き時間に取り入れやすいです。
また、曲数や曲の長さを変えることで、時間配分も調整しやすいというメリットもあります。

4)場所

輪になって踊れるくらいの広さが必要です。
屋内、屋外は問いません。

5)用意するもの

盆踊りの音楽を用意するだけなので、準備も手軽です。
余裕があれば室内の雰囲気を夏らしくするのも、おすすめです。

6)手順

まず、事前に踊りの振りを確認しながら、参加者と一緒に軽く練習します。
それにより、実際に音楽がかかったときに「どのように動いたらいいのかわからない」などと参加者が混乱するのを避けられます。
練習のあと、実際に音楽を流し、輪になって踊ります。
戸惑う参加者が多ければ、同じ曲を2回流してもいいでしょう。
初めは戸惑ってうまくやれなくても、繰り返すと踊りやすくなることもあります。

7)進行上のポイント

違う踊りをしている方がいても構いません。
自由にのびのび踊ってもらえるよう関わります。
また、スタッフが適度に合いの手を入れたり、終了時に拍手をしたりして場の雰囲気を盛り上げるよう関わることが大切です。

8)実施する上での注意点

歩行の方の転倒に気をつけましょう。
日常生活で歩行に問題がない方でも、踊りに気を取られつまずいたりバランスを崩したりすることもあり得ます。
何かあったら支えられる位置にスタッフを配置しましょう。
また、認知症の症状が重く混乱してしまう参加者の場合は、踊りをシンプルにして実施したり、本人ができる内容にアレンジしたりすることも大切です。
横について一緒に踊ってもいいでしょう。

どんなときも参加者の気持ちに寄り添った対応を心がけて

レクリエーションでは、1対1でスタッフがつきづらく、時には時間などの制約もあり、焦る場面もあるかもしれません。
そんなときでも、参加者の気持ちを考えた対応を心がけていく必要があります。
企画立案の際には、余裕のあるタイムスケジュールやスタッフの人員配置、企画内容にするとよいでしょう。
また、終わった後には、参加者が楽しめていたか、疲れがないか、スムーズに進行できたか、改善点はないかなどの見直しも大切です。

参考:
竹田徳則, 田本ゆかり: 作業療法におけるレクリエーションプログラムの立案. 作業療法ジャーナル28, 1994.
植田孝一郎, 大塚俊男, 他: 認知症の人のための作業療法の手引き. ワールドプランニング, 東京, 2010, pp.72-73.

  • 執筆者

    もり あさな

  • 作業療法士資格取得後、回復期病院や療養病院に勤務しました。結婚・出産を機に福祉の視点も学びたいと思い、社会福祉士資格を取得しました。
    作業療法士としての知識が、在宅で介護をされる方や福祉施設等で働く方、健康に関心がある方のお役に立てればと思い、ライターを始めました。
    現在は作業療法士として小児分野の施設で働きつつ、在宅でのライティングを行っています。医療・福祉の視点や知識を活かし、わかりやすく、かつ生活に役立つ記事を作成できるよう、心掛けております。

    保有資格:作業療法士、社会福祉士

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