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バイタルサインはなぜ測る?基礎をもう一度確認して、正しい測定方法を習得しよう!

バイタルサインを測定する際、学生時代は丁寧に動作を確認していたのに、今ではなんとなく流れで測定してしまっていることありませんか?
バイタルサインは、正しい方法で測定しなければ、正しい値を測ることができません。
そこで今回は、今一度基本に立ち返り、バイタルサインの正常値と測定方法について解説します。

バイタルサインの正常値を再確認

バイタルサインは、生命兆候とも呼ばれ、一般的には体温・脈拍・血圧・呼吸のことを指します。
これらは手軽に測定することができるうえ、身体の異変を速やかに反映する極めて重要な指標となります。
体温・脈拍・血圧・呼吸それぞれの基準値(成人)を、下の表にまとめました。

体温 36.0~37.0℃
脈拍 60~90回/分
血圧 130/85mmHg未満
呼吸 12~30回/分

正常値を確認するにあたり注意したいのが、「測定結果が基準値の範囲内である=異常がない、とは限らない」という点です。
たとえば、糖尿病患者さんのなかには、普段は甘い物を節制していないのに、通院日当日だけ食べるものを節制し、血糖値を一時的に正常値まで下げようとする方がいます。
そのため、当日の血糖値だけでは、血糖値がコントロールできているかどうかの判断はできません。
そこで、血糖値のほかに約2カ月間の血糖変動の指標となるHbA1cを測定し、双方の値から、コントロールできているかどうかを判断します。
糖尿病にとってのHbA1cが、バイタルサインの場合は、その前後で測定した数値となります。
たとえば、いつもは血圧が150~160mmHg台で推移していたのが、ある日突然110mmHg台まで下がっていたとします。
このとき、当日のみの血圧でみれば基準値内で収まっているために正常と判断してしまいますが、いつもは150~160mmHgであったことを考えると、異常のサインかもしれない、ということが分かるのです。
このように、バイタルサインを測定する際には、基準値の把握以外にも、その患者さんの普段のバイタルサインの値を確認し、普段の値と測定時の値に大きな変化はないかを確認することが大切です。

バイタルサインの正しい測定方法を習得

バイタルサイン(体温・脈拍・血圧・呼吸)の正しい測定方法について、一つずつ解説します。

●体温

1)準備をする

患者さんに体温測定を行うことをお伝えし、了解を得ます。

2)体温計を挿入する

側臥位をとっている場合は、上側で測定し、麻痺がある場合は健側を測定部とします。
体温計を上腕の前方下方から45°くらいの角度で斜め上方に挿入し、体温計の感温部(銀色の温度を感知する部分)を腋窩(えきか)中央部に当てます。
挿入したら、感温部が腋窩中央部に密着するよう反対の手で測定側の腕を押さえてもらいます。

3)測定する

測定終了を知らせる電子音が鳴ったら、体温計を取り出します。

●脈拍

1)準備をする

患者さんに脈拍測定を行うことをお伝えし、了解を得ます。
測定時、患者さんには仰臥位または座位をとってもらいます。

2)脈拍を測定する

示指(人差し指)・中指・環指(薬指)の3本の指の腹を橈骨(とうこつ)動脈に軽くあて、母指で患者さんの手首から下を支え、測定します。

3)測定する

脈拍を1分間、計測します。

●血圧

1)準備をする

患者さんに血圧測定を行うことをお伝えし、了解を得ます。
座位または仰臥位になってもらい、腕を露出してもらいます。

2)マンシェットを巻く

下端が肘関節より2~3cm上になるように、またゴム嚢の中央が上腕動脈の真上にくるように、マンシェットを巻きます。
このとき、マンシェットと腕の隙間に指が2本くらい入るくらいの強さであることを確認します。

3)腕の高さを調整する

肘関節が曲がらないように注意し、腕の高さをマンシェットと心臓が同じ高さになるように、台の高さを調整します。

4)聴診器を当てる

肘窩(ちゅうか)で上腕動脈を触知し、その場所に聴診器を当てます。

5)加圧する

前回測定した収縮期血圧値に+20mmHg程度加えた圧力になるまで、加圧します。

6)減圧し、コロトコフ音を聴取する

メモリを見ながら、1秒1目盛り程度の速さで排気していき、コロトコフ音が最初に聞こえたところを収縮期血圧とし、メモリを読み取ります。
さらに1秒1目盛り程度の速さで排気を続け、コロトコフ音が聞こえなくなったところを拡張期血圧とします。
そのままさらに10~20mmHg減圧し続け、コロトコフ音が再開しないことを確認したら、速やかに全排気します。

7)マンシェットを外す

患者さんの腕からマンシェットを外し、寝衣を整えます。

●呼吸

1)呼吸を観察する

脈拍を測定しているふりをしながら、胸郭や腹壁の動きから、呼吸数を1分間確認します。

バイタルサイン測定時のポイントQ&A

バイタルサイン測定において、「なんでこうなんだろう?」と疑問に思ったことありませんか?
ここでは、そういった疑問に思いやすいポイントについて解説します。

●体温

1)なぜ45°で測定するのか?

体温計を水平に挿入してしまうと、腋窩中央部と体温計の感温部が密着せず、正確な数値が得られないためです。

2)なぜ側臥位では上側、麻痺がある場合は健側で測定するのか?

どちらも血液循環が関係しています。
側臥位の場合は体重によって下側の腕が圧迫されることで循環が悪くなり、腋窩温が上側よりも低くなってしまいます。
麻痺がある場合は、麻痺側が健側にくらべて血液循環が変動しやすく、体温の変動も激しいことから、腋窩温であっても正しい値が測定できないためです。

3)体温計を挿入してしばらくしたらもう一回音が鳴りました。これは何ですか?

それはおそらく実測値です。
電子体温計を用いて体温を測定する場合、腋窩に挿入してから実際の体温を測定するまでは10分程度の時間を要します。
そこで今の体温計では、一定時間内の感温部の温度上昇から最終的な体温を予測し、表示するようになっています。
これが「予測値」と呼ばれるものです。
よって普段私たちが日常生活で見ている数値は「予測値」ということになります。

●脈拍

1)なぜ親指や指先で圧迫して測定してはいけないのか?

第一指での触知は自身の脈拍と混同してしまうため、指の先で触れるのは爪による不快感を与える恐れがあるため、強く圧迫するのは血流が途絶する可能性があることから、それぞれしてはいけません。

2)必ず1分間測定しなくてはいけないのですか?

不整脈などの既往がなければ、30秒間で測定した回数を2倍したものを測定値とする場合もあります。
2倍した数値を測定値とする場合には、正確に1分間測定した値ではないため、記録には〇〇回×2/分、と記載することが望ましいでしょう。

●血圧

1)下腿や太ももで測る場合、どの位置にマンシェットを巻けばいいでしょうか?

下腿の場合は、足首に上腕用マンシェットを巻いて、後脛骨(こうけいこつ)動脈や足背(そくせ)動脈で測定します。
太ももの場合は、上腕用ではなく太もも用マンシェットを用いて、膝窩(しつか)動脈で測定します。

2)腕を露出できない場合、どうすればよいですか?

寝衣の袖を上腕を圧迫しないように、マンシェットが巻ける位置までまくり上げてもらいます。
袖口がきつく上腕を圧迫してしまう場合には、測定側だけ脱いでいただくことで、より正確な値を測定することができます。

3)なぜ拡張期血圧を測定後もさらに10~20mmHg減圧するのですか?

高血圧や動脈硬化のある患者さんの場合は、消失したコロトコフ音が再び聴取される場合があるためです。
正しい拡張期血圧と判断するためにも、正しい拡張期血圧かどうかの確認が大切です。

4)再度測定する場合は、どれくらい間隔をあければよいでしょうか?

最低でも2分以上は空けることをおすすめします。

まとめ

バイタルサイン測定は、業務中複数回行います。
そのため、慣れてくるに従って徐々に自分がやりやすいように、という考えのもと、自己流でついつい行いがちです。
看護師である筆者も、毎回必ずこれらの基礎を十分に踏まえてバイタル測定をしているかと尋ねられると、自信はありません。
バイタルサインは体の異常をいち早く気付くための重要なデータです。
今一度基礎を確認し、正しくバイタル計測することを、ぜひ心がけてみてください。

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参考:
熊谷たまき他:フィジカルアセスメントがみえる:メディックメディア:東京:2015 pp22-70

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