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アドヒアランスの概念と医療者の役割~服薬アドヒアランスからの考察~

患者さんの療養行動を評価する概念として、近年コンプライアンスに代わってアドヒアランスが用いられるようになってきました。
本記事では、コンプライアンスからアドヒアランスへの変遷と、アドヒアランスに影響を与える因子、医療者の役割について解説します。

コンプライアンスからアドヒアランスへ

医療現場で使用されるコンプライアンス(compliance)は、「患者は医療者の指示に従う」ことを示しています。
コンプライアンスの概念では、主体は医療者であって患者さんは受身のイメージでした。
対してアドヒアランス(adherence)は、「患者が医療者の提供した治療方針に同意した上で行動すること」であり、患者さん自身の積極的な治療参加を意味しています。
アドヒアランスの概念では、主体は患者さんです。
どちらも治療を受けることは同じですが、患者さんの同意が前提である点に大きな違いがあります。
インフォームド・コンセント(説明と同意)の普及や、アドバンス・ケア・プランニング(患者さんの意思決定支援)への取り組みから、患者さんや家族も医療・ケアチームの一員であるという考え方が浸透、定着しつつあります。(アドバンスケアプランニングについてはこちらの記事、話し合うことから始まる、アドバンスケアプランニングをご覧ください)

また、世界保健機構(WHO)は2001年に「アドヒアランスの考えかたを推進する」という方向性を示しました。
このような背景から、医療現場ではコンプライアンスよりもアドヒアランスが一般的になってきたといえるでしょう。

●アドヒアランスの概念では医療者の役割が大きい

コンプライアンス、アドヒアランスの良否は治療の成果やQOL(生活の質)に影響を与えるものであり、いかに向上・維持できるかが問われます。
コンプライアンスでは、患者さんが医療者の指示に従えているかを評価するのであって「コンプライアンス不良」は、患者さん側のみに問題があるとされていました。
一方でアドヒアランスは医療者と協力し、患者さんが主体的に治療へ参加することですから、「アドヒアランス不良」は、医療者側の問題でも起こります。
よって、アドヒアランスを向上・維持するためには患者さん側の問題だけではなく、医療者側の問題も解決しなければなりません。
次項からはアドヒアランスに影響を及ぼす因子と、問題解決への取り組みについて考えていきます。

服薬アドヒアランスからみる、アドヒアランス低下の要因

アドヒアランスの概念は、服薬アドヒアランスを中心に広まり、現在では患者アドヒアランス、治療アドヒアランスなど広い分野で使用されています。
服薬は、医療者の目が届かない「在宅管理」が難しい点であり、しかしアドヒアランスの概念からすると「在宅管理不良」にも医療者側の問題があると考えられます。
服薬のアドヒアランスを向上させ、維持することは非常に困難なのです。
本記事では、服薬アドヒアランスを例にアドヒアランス低下の要因や、医療者の役割を考えてみます。

●服薬アドヒアランス低下の5つの要因

Kalogianni(2011)は、服薬アドヒアランスの低下に影響を及ぼす要因は5つあり、それらが複数存在して影響しあうと述べています。

  • ○社会的・経済的要因
  • ○医療者と患者間の要因
  • ○疾病の要因
  • ○治療の要因
  • ○患者の要因

5つの要因から、服薬アドヒアランスではなにが問題になるのかを具体的に考えてみます。

社会的・経済的要因 家族、友人からのサポートが受けられない
医療費が高い
仕事が忙しい
医療者と患者間の要因 医療者と患者間に良好な関係がない
医療者のコミュニケーション能力不足
(治療の効果や副作用の説明不足、説明に対する理解の有無を確認していない)
患者向けの情報が難しすぎる
予約が取りにくい
待ち時間が長い
疾病の要因 自覚症状がない
慢性的な疾患
治療の要因 薬の数や服薬回数が多い
技術の習得が難しい(自己注射など)
薬の副作用がある
効果が表れないことへのいら立ち
仕事中に服薬する必要がある
患者の要因 疾病と治療の理解不足
副作用や依存症への恐怖
身体的理由
(まひ、嚥下障害 視力障害など)
認知症がある

このように多くの問題が考えられますが、小児であれば家族のサポート、学生、社会人であれば学校や仕事先での服薬、高齢者であれば飲みにくさなど、世代によって問題の中心は変わってくるでしょう。
また、服薬アドヒアランスの問題を患者アドヒアランス、治療アドヒアランスに置き換えてみてください。
アドヒアランスを低下させる問題の多くは、服薬に限定したものではないことが分かります。

アドヒアランス向上のために医療職がすべきこと

アドヒアランスを向上させるには、まずアドヒアランスを改善させることが必要です。
先ほどの服薬アドヒアランスを低下させる要因から、改善の方法を考えてみます。

社会的・経済的要因 サービス利用の提案
(薬剤師、訪問看護、訪問介護など)
ジェネリック医薬品への変更
ライフスタイルの尊重
(受診間隔、電話やメールの活用)
医療者と患者間の要因 信頼関係の構築
医療者と患者、家族との目標の共有
医学用語の多用を避け、平易な言葉での説明
疾病の要因 無症状ながらも疾病は進行していること、今後起こりうることなど、疾病の理解
治療の要因 服薬のシンプル化
予想される副作用と回避方法をあらかじめ指導する
家族や在宅サービス提供者への技術指導
患者の要因 一人ひとりに合わせた説明、指導励まし
データが改善したら、肯定的なフィードバックを行う
個性に合わせた服薬の見直し
(錠剤の大きさ、配合錠、一包化など)

問題の解決方法において、共通して不可欠なのものが2つあります。

  • ○患者さんのQOLを重視する
  • ○効果的なコミュニケーションスキル

患者さんのQOLの維持は、アドヒアランス向上には欠かせない要素です。
たとえば、趣味や仕事などの大切にしている時間を、服薬行動のために諦めなくてはならない状況になったらどう感じるでしょうか。
生きがいやリフレッシュの時間を失った状態で、意欲的に治療しようという気持ちにはならないでしょう。
すなわち、患者さんの生活リズムやスタイルを理解・尊重した治療方針の提案は、それだけでアドヒアランス向上につながるのです。
また、患者さんが自身の疾病を的確に理解するためには、医療者はコミュニケーション能力を高める必要があります。
患者さんの教育や指導だけではなく、信頼関係構築においてもコミュニケーション能力は欠かせないスキルです。
そしてこれらのことはやはり、服薬アドヒアランスに限ったことではありません。
QOLの重視とコミュニケーションスキルは、どのようなアドヒアランスにおいても重要なのです。

総合的な取り組みがアドヒアランスを向上させる

アドヒアランス低下の要因を抽出したら、改善させるための体制を整えましょう。
「病院だけ」「在宅だけ」で対策をしてもアドヒアランス向上は望めません。
専門職がそれぞれの力を発揮して効果的に連携できるようなシステムの構築と、良好なアドヒアランスを維持できるよう、総合的な取り組みが求められています。

参考:
WHO「アクティブ・エイジング」の提唱.萌文社,東京,2007.
松尾太加志 医療者と患者のコミュニケーション‐服薬に関するバックグラウンドの違い‐ 2012年.(2018年8月3日引用)
Kalogianni, A. : Factors affect in patient adherence to medication regimen. Health Science Journal, Vol.5, No.3:157-158 ,2011.

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