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閉塞性動脈硬化症(ASO)に対するリハビリが心筋梗塞を予防する理由とは?

閉塞性動脈硬化症(ASO)とは、動脈硬化により手足の血管が狭窄する病気ですが、この病気に対するリハビリは心筋梗塞を予防する上で非常に重要です。
ASOは心臓リハビリの対象疾患になっていますが、「血管なのに心臓リハビリ?」と疑問に思う方もいるでしょう。
本記事では、ASOと心筋梗塞との関係性や、リハビリの目的について解説します。

閉塞性動脈硬化症(ASO)とは?その実態にせまる

閉塞性動脈硬化症(ASO)という病気を聞きなれない方もいるでしょう。
ここでは、その病態について簡単にご紹介します。

●ASOは動脈硬化により手脚の動脈が狭くなる

ASOは、主に下肢の腸骨動脈や大腿動脈など、大動脈から分岐した血管が狭くなる病気であり、末梢動脈疾患(PAD)の一部に分類されています。
その病態は、動脈硬化による血管内の狭窄であり、喫煙や高血圧、糖尿病などの生活習慣が原因となります。

●主な症状は運動時における手脚の倦怠感

主要な血管が細くなるため、その結果として手脚の末端に流れる血液が少なくなります。
血流が低下すると、筋肉が必要とする栄養素や酸素が十分に届かなくなるため、倦怠感が出現します。
また、安静時では無症状ですが、運動時に症状が出現することが特徴です。
脚においては、間欠性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれる症状が有名です。
間欠性跛行とは、歩く距離が長くなると、脚の筋肉における血流が不足し、痛みや倦怠感によって歩き続けられなくなることを指します。
腕の場合では、洗濯物を干したり戸棚の整理で腕を上げて作業をしていると、血流不足のために腕が上がらなくなります。

●脚なのに心臓リハビリ?

ASOは、診療報酬の算定上は心大血管リハビリテーションの対象疾患に挙げられています。
「心臓リハビリ=心臓」ではないの?と思うかもしれませんが、実際は心臓の病気と同じくらい治療・予防の重要性が高いです。
心臓リハビリでは疾病予防・再発予防を目標としていますが、ASOを適切に治療することは、心筋梗塞や脳梗塞など血管の障害に起因する病気を予防することにつながります。

血管を守ることが心筋梗塞の予防につながる

前項ではASOの病態について触れましたが、ここでは心筋梗塞の予防につながる理由について解説します。

●ASOと心筋梗塞はどちらも動脈硬化が原因

ASOと心筋梗塞に共通していることは、どちらも血管が狭くなることによって症状が出現することです。
血管の狭窄が脚ならば間欠性跛行が出現し、心臓であれば狭心症が出現します。
極論すると、ASOと心筋梗塞ではどこの血管が狭くなっているかの違いといえるでしょう。
また、血管が狭くなる理由としては、高血圧や糖尿病、喫煙や運動不足などの生活習慣に起因することが挙げられます。

●ASOは心筋梗塞の危険因子!

ASOの主症状は間欠性跛行ですが、実は間欠性跛行の有無にかかわらず、心筋梗塞を発症するリスクが高いことに注意しておく必要があります。
日本循環器学会が作成した末梢閉塞性動脈疾患のガイドライン(2015)によると、間欠性跛行が無いASO患者においても、5年後の生存率は健常人と比較して不良であると報告されています。
また、ASO患者の30%が冠動脈疾患をもっていると報告されており、ASOは脚に限局した病気ではなく、全身の病気として捉える必要があると考えられています。

●血管を守るためにはリハビリが重要!

ASOの初期治療では、間欠性跛行が無い場合、もしくは軽度の場合であれば運動療法が第一選択となります。
また、運動療法に抗血小板薬などの内服治療を組み合わせることも、高いエビデンスレベルで裏付けられています。
治療の目標は、動脈硬化のリスクファクターと生活習慣の改善であり、診断後早期からリハビリを開始することは、心筋梗塞や脳梗塞の予防にも効果的です。

閉塞性動脈硬化症(ASO)のリハビリ内容とは?

ここではASOに対する運動療法の具体例についてご紹介します。

●有酸素運動によって歩行距離を改善する

ASOの主症状は間欠性跛行であり、リハビリでは歩行能力の改善を目標にします
トレッドミルを用いた運動療法が代表的であり、時速2.4km・傾斜12%に設定することが望ましいですが、患者さんの状態に応じて適宜変更します。
速度に関しては、10分以上継続可能となれば3.2kmにアップするか、傾斜を増加させて下肢に対する負担を大きくします。
10分程度で継続困難になる程度の負荷が理想的ですが、疲労により転倒する可能性も高くなるため、近くで監視することが望ましいです。
膝や腰の痛みによってトレッドミルが実施困難な患者さんの場合では、エルゴメーターでの運動療法も推奨されています。
エルゴメーターの場合は、自覚的な運動強度であるBorg scale(ボルグスケール)で「ややきつい」と思う程度の負荷量に設定します。

●下肢の筋力トレーニングも有効

ASOの患者さんでは、筋肉への血流量低下に加えて、サルコペニアなど加齢による影響もあり、筋肉量の低下や持久力の低下が起こります。
筋力が低下した状態でトレッドミルやエルゴメーターなどの有酸素運動を継続すると、膝の痛みなど二次的な障害につながるため注意が必要です。
ASOでは、下肢の筋肉を鍛えることにより、筋肉内の毛細血管を発達させて血流量を増やすことや、筋細胞でのエネルギー代謝の改善が期待されます。
以下に筆者がおすすめする大腿四頭筋と腓腹筋のトレーニング方法をご紹介します。

◯大腿四頭筋

大腿四頭筋の場合は、レッグプレスやレッグエクステンションなどのマシントレーニングが有効です。
筆者の施設では、マシントレーニングは20回を1セットとして、休憩を挟みつつ合計3セット実施しています。
また、膝の伸展に1秒、戻すのは3秒と指導し、遠心性収縮をうまく活用するとトレーニング効果が高いです。

◯腓腹筋

腓腹筋はマシンを用いたトレーニングが難しいため、トレッドミルの傾斜を上げて負荷をかける方法が効果的です。
傾斜は5〜12%程度で調整しますが、高齢者の場合は過負荷を避けるために速度を下げるなどの調整が必要です。

早期からのリハビリがカギ

ASOは脚の血流が低下することが特徴的ですが、その背景には全身の動脈硬化や血管の狭窄が潜んでいます
ASOに対するリハビリでは、間欠性跛行の改善だけではなく、動脈硬化の進行を防ぐことが重要な目的になります。
たとえ症状がない患者さんでも、早期からの運動療法や生活習慣の指導などを行い、心筋梗塞や脳梗塞の予防につなげていくことが大切です。

参考:
日本循環器学会:末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン(2015年改訂版).(2018年8月4日引用)
日本循環器学会:心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版).(2018年8月4日引用)

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