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人工股関節での脱臼予防のために脱臼肢位や日常生活での注意点を再確認しよう

人工股関節の患者さんのケアで、最も注意するのは脱臼ではないでしょうか。
股関節の脱臼肢位は手術の方法により異なるため、正しい理解が必要です。
そこで人工股関節での脱臼肢位や日常生活での注意点を再確認して、より効果のあるケアを行いましょう。

人工股関節での脱臼を防ぐために確認したいポイント3つ

人工股関節での脱臼は、手術の方法や時期などよって起こりやすさが異なります。
脱臼を防ぐために特に確認したほうが良いポイントは以下の3つです。

  • ○手術の方法
  • ○手術の時期
  • ○手術前の状況

それぞれ、具体的に解説します。

●手術の方法

手術方法によって脱臼しやすい肢位や脱臼の危険性が異なります。
そのため、人工股関節の手術方法を確認する必要があります。
医師やカルテの情報からチェックすべきポイントを以下に挙げます。

チェックポイント チェックする理由
手術の進入方向 進入方向により禁忌肢位が異なる
従来式の後側方進入だと脱臼リスク上昇
切開した組織修復の有無 組織の修復をしていないと脱臼リスク上昇
ソケットやステムの設置異常の有無 人工股関節の部品であるソケットやステムの
設置異常があれば脱臼リスク上昇

股関節の後側方から進入して手術を行った場合、股関節を保護する関節包や外旋筋といった組織を切開する必要があるため脱臼しやすくなります。
それに対して、前方や前側方から侵入して手術を行った場合は、股関節を保護する組織の損傷が少ないため、脱臼リスクが低くなります。
また、切開した組織を修復していない場合は、修復した場合とくらべて脱臼のリスクが高まります。

●手術の時期

人工股関節の脱臼は手術後3カ月以内に発生しやすいとされ、とりわけ手術後1カ月以内といった早期に起こりやすいとされています。
これは、手術により損傷を受けた組織が回復しておらず、関節が安定していないためです。
そのため、人工股関節の手術をしてどれくらいの期間が経っているのかを確認することが重要です。

●手術前の状況

手術前の患者さんの状態を確認することで、脱臼のリスクを想定することができます。
特に注意したいのは「過去に人工股関節の手術をしたことがあるかどうか」で、初回の手術の脱臼確率が1〜5%であるのに対して、再手術の人は5〜15%と脱臼確率がアップします。
また、手術前に脱臼に対する動作の指導やリスクの解説を十分受けたかどうかも確認しましょう。
手術前に指導を十分に受けていれば、脱臼のリスクや危険な動作をするリスクが下がります。

股関節の脱臼が起こりやすい肢位は複合運動

人工股関節術後の脱臼は、股関節の屈曲だけの単独運動ではなく、複合運動で起こりやすいです。
以下に手術の進入方向による脱臼が起こりやすい肢位の違いを示します。

手術の進入方向 脱臼しやすい肢位
後方進入 屈曲・内転・内旋
前方進入 伸展・内転・外旋

「股関節の屈曲をしてはいけない」とだけ覚えてしまうと、必要以上に動作を制限する危険性があります。

以下に靴下をはく動作を指導する場合、脱臼の起こりやすい後方進入では、股関節を屈曲させても、外旋・外転させてあぐらをかくようにすれば、内転や内旋を防げるため、脱臼リスクなく靴下を履けます。
また、前方進入では、屈曲ではなく、伸展を含む運動で脱臼しやすくなっています。
たとえば、高い所にある物を取ろうとして、足を後ろにそらした状態で、内股になるような姿勢は要注意です。

日常生活の中で脱臼が起こりやすい動作を再確認しよう

日常生活の中には、脱臼が起こりやすい動作がたくさん潜んでいます。
そこで、どのような動作で脱臼が起こりやすいか再確認しましょう。

●立つ座るといった基本的な動作は油断大敵

脱臼を最も起こしやすい動作は起立を伴う動作です。
たとえば、椅子から立ち上がる際に、両膝をくっつけて、足を広げた、いわゆる内股の座位姿勢から立ち上がる女性を想像してみましょう。
この姿勢は後方脱臼しやすい、屈曲・内転・内旋の肢位になります。
このような場合、踵をくっつけて、つま先を広げ、両足をしっかり引いて立つように指導しましょう。
また、床からの立ち座りも脱臼のリスクを伴います。
立ち座りの際に、手術した脚を前に出してしまうと、股関節の脱臼肢位になりやすいので注意しましょう。

●何気ない動作にも脱臼の危険がたくさん

起立動作以外にも、普段から何気なく行う動作にも脱臼の危険が潜んでいます。
以下に具体例を挙げますので、患者さんに行わないように指導しましょう。

  • ○椅子に座って肘を膝の上につく
  • ○とんび座りや横すわり
  • ○足を組む

和式トイレでの排泄や寝返りで手術した側を上にする場合も、屈曲・内転・内旋しやすいので注意しましょう。
このような、手術前は何気なく行っていた動作は、手術後も無意識に行ってしまいがちです。
そのため、手術後だけではなく、手術前にしっかり意識付けすることが、脱臼予防には重要になります。

●自立が難しい爪切りや靴下の装着も要注意

手術後に不安な生活動作として挙げられるのが、足の爪切りや靴下の装着です。
これらの動作は、前述した片脚であぐらをとる姿勢で行うことができます。
靴下の装着では、ソックスエイドの使用でより安全に行うことができます。
足の爪切りは、股関節の屈曲可動域が不十分であれば、実施が難しい動作です。
神先らによると、人工股関節術後の4人に1人は、足の爪切りが自立できないとしています。
無理に行うと脱臼肢位になるリスクが高い動作ですので、家族などの協力を仰ぎましょう。

脱臼のリスクや危険肢位を正しく理解して適切な指導を行いましょう

人工股関節術後に最も患者さんが不安に思うのは、股関節の脱臼です。
そのため、看護や介助をするスタッフが、脱臼に対して正しい知識をもち指導を行わなければ、過剰に動作を制限するリスクがあります。
適切な指導を行うためにも、股関節の脱臼に関する理解を深めましょう。

参考:
神野哲也(監):ビジュアル実践リハ 整形外科リハビリテーション カラー写真でわかるリハの根拠と手技のコツ.相澤純也,中丸宏二(編),羊土社,東京,2012,pp.231-248.
南角学,細江拓也,他:変形性股関節症に対する人工関節置換術と理学療法. 理学療法第33巻11号:990-998,2016.
大塚陽介,北島麻花,他:股関節手術患者の援助技術. 医療第61巻4号:271-277,2007.
松原正明:人工股関節置換術と術後リハビリテーション. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 第49巻8号:518-527,2012.
神先秀人,飯田寛和,他:人工股関節術後患者の退院指導の実際.PTジャーナル第34巻10号:717-723,2000.

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