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後期高齢者の心臓リハビリを考えよう!併存疾患の対策が重要な理由とは?

従来の心臓リハビリは、心電図を装着してエルゴメーターを駆動するイメージが強いですが、後期高齢者が対象の場合は少し異なります。
後期高齢者では、循環器的な問題に加えて、併存疾患に配慮したリハビリプログラムを考える必要があります。
本記事では、後期高齢者の心臓リハビリで必要な運動療法や注意点について解説します。

心不全パンデミックに備えよう!

心不全パンデミックというワードを聞き慣れない方も多いかもしれませんので、ここではその概要と今後の問題点について解説します。

●心不全パンデミックとは?

公益財団法人日本心臓財団によると、50歳代の心不全発症率は1%であるのに対して、80歳以上の心不全発症率は10%に達します。
今後、日本の高齢化率が上昇するとともに心不全患者が爆発的に増加する現象が、心不全パンデミックとよばれています。
また、高齢心不全患者さんでは、心臓移植などの根治的な治療が適応ではなく、悪化と改善を繰り返すなかで、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が低下することが問題となります。

●リハビリ現場で想定される問題点

高齢の心不全患者さんが増えることで、今まで実施してきた心臓リハビリにもいくつかの制約がでてきます。

〇心肺運動負荷試験(CPX)が実施できない

CPXは心臓リハビリにおける運動能力の評価としてスタンダードですが、低体力や各関節の機能障害が理由で検査が実施できないことが想定されます。

〇エルゴメーターやトレッドミルが実施できない

膝や股関節の機能障害によってペダルの駆動ができない場合や、歩行が不安定でトレッドミルでは転倒のリスクが高くなる方もいます。

〇定期的な通院(外来リハビリ)が困難になる

高齢夫婦の世帯をはじめ、子ども夫婦と同居している場合でも、通院手段が確保できないというケースが多くなります。
1カ月に1回の診察ならまだしも、週1~2回の外来リハビリに参加することは難しくなるでしょう。

後期高齢者における心不全の特徴は併存疾患の多さ

後期高齢者において心不全の発症率増加が問題になりますが、若年患者さんとの違いは併存疾患(併存症)の有無です。
ここでは、3つの併存症について、その特徴を解説します。

●膝関節や脊椎などの運動器疾患

高齢者に多い大腿骨頸部骨折や腰椎圧迫骨折などは、下肢の関節可動域制限や筋力低下の原因となり、従来の心臓リハビリプログラムの実施が困難になります。
また、起き上がり動作や歩行動作に介助が必要となった場合、体力向上を目的とした有酸素運動より、四肢の筋力トレーニングや基本動作の練習が優先されます。

●慢性腎疾患

腎臓に障害があると尿の排泄が少なくなるため、体に水分が貯留しやすくなります。
その結果、さらに心臓に負担がかかり、呼吸苦や浮腫などの心不全症状が出現しやすくなります。
また、維持透析が必要になると、週に2~3日程度の透析通院が必要となり、心臓リハビリ外来への通院が困難になるケースもでてきます。
それによって全身の筋力低下が進行し、ADLやQOL低下を助長する結果につながります。

●サルコペニアやフレイルなどの加齢性変化

運動器疾患や脳血管疾患など大きな病気をしていない方でも、サルコペニアやフレイルなどに代表される加齢性変化には注意が必要です。
高齢者の心不全では栄養障害が問題となるケースも多く、筋肉量の減少により転倒のリスクが高まります。
日本循環器学会が作成した「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」によると、サルコペニアやフレイルは、高齢者における心不全の長期予後を規定する独立した因子とされており、筋力トレーニングや動作能力の向上が重要なリハビリプログラムとなります。

後期高齢者を対象とした心臓リハビリを考える

高齢心不全患者さんに対して運動療法を実施する際には、以下のメニューと注意点を参考にしてください。

●筋力・バランス練習中心のトレーニングが有効

後期高齢者では、日常生活における基本動作能力の改善のため、立ち上がりや歩行など基本的な動作が安定するリハビリプログラムが重要です。

〇セラバンドや重錘バンドを用いた筋力トレーニング

心臓リハビリでは、レジスタンストレーニングにマシンを使用することも多いですが、これらのトレーニングは過負荷になる場合があります。
セラバンドや重錘バンドなど、関節に負担がかかりにくい負荷量でできる方法を選択するとよいでしょう。

〇ステップ練習などのバランストレーニング

平行棒などの安全な環境で、ステップ台への足上げ動作や、タンデム立位(綱渡りのように左右の足を直線上に置く)などが有効です。
ただし、転倒の可能性が高いため、必ずスタッフがそばで監視するようにしてください。

〇エルゴメーターの実施基準

日本心不全学会が作成した「高齢心不全患者の治療に関するステートメント」では、エルゴメーターへの移行基準は以下のとおりです。

  1. 1)連続して200m以上の歩行が可能
  2. 2)1分間に60mの歩行が可能
  3. 3)片脚立位が可能

前述した筋力・バランストレーニングでこの要件を満たすことができれば、エルゴメーターの実施を検討してもよいでしょう。

●高齢心不全患者さんの運動時における注意点

心不全患者さんにトレーニングを実施する際、以下のポイントに注意が必要です。

〇息切れや倦怠感などの自覚症状を見逃さない

CPXや6分間歩行などでの評価ができない場合、運動負荷量の設定に悩むことがあります。
また、体力が低下している方では少しの運動で疲労感や呼吸苦が出現します。
自覚症状は血圧や心拍数が上昇するサインでもあるため、動作の合間に必ず確認するように心掛けましょう。

〇運動負荷量はその日の体調に合わせて調整する

腎疾患や栄養障害があると、体内に水分が貯留しやすくなり、処方されている薬で症状がコントロールできなくなることがあります。
安易に前回の運動と同じ強度に設定すると、疲労感や息切れが出現したり、過度な血圧上昇などを招く恐れがあります。
運動前の血圧・心拍をはじめ、体重や下腿の浮腫など心不全増悪の徴候がないかをしっかりと確認することが大切です。

高齢心不全患者さんに対応できる心臓リハビリを

後期高齢者に対する心臓リハビリは、従来の心電図+エルゴメーターというプログラムが実施できないケースも多いです。
筋力トレーニングや基本動作練習は他の領域におけるリハビリと共通していますが、心疾患と併存疾患への対策が重要となります。
今後の社会で心不全パンデミックが問題となるなか、心臓リハビリを実施している施設でも社会のニーズに応じた柔軟な対応が求められるのではないでしょうか。

参考:
公益財団法人 日本心臓財団ホームページ.(2018年9月27日引用)
日本心不全学会ガイドライン委員会 高齢心不全患者の治療に関するステートメント.(2018年9月27日引用)
日本循環器学会 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版).(2018年9月11日引用)

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