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クリニック・治療院 OGメディック

  • 橘ゆみ

    公開日: 2018年10月31日
  • 患者さんのケア

高齢者に入院前からできる退院支援とは?ADL・IADLの評価と退院後のフォローで早期退院を目指そう

高齢者のADL・IADLは、入院をきっかけに著しく低下することがあります。
しかし、高齢者が在宅で暮らすためにはADL・IADLの維持が欠かせません。
高齢者の入院時はADL・IADLを適切に評価・把握し、退院後の生活を見据えた支援が必要です。

高齢者の入院時にADL・IADL評価はなぜ必要か

退院できる状態の高齢患者さん。
退院日時を決めようとしたら、ご家族に「こんな状態では連れて帰れない!」と言われてしまった。
このような事例が起きてしまう原因の多くに「排泄や入浴に介助が必要になった」「筋力や体力が低下して独り暮らしが困難になった」など、患者さんのADL・IADLが入院前よりも低下したことが挙げられます。(ADL、IADLについてはこちらの記事「今さら聞けない…!医療従事者が知っておきたい「ADL」の知識と考え方」「IADL訓練とは?基本項目から訓練方法・環境調整まで幅広く解説」でまとめられています。)
虚弱な高齢者は入院によって体力や機能が低下し、従来のレベルまで戻らないことも多いのです。
これを入院関連機能障害といいます。
世帯構造と世帯割合の推移をみると、入院関連機能障害が退院後の生活に与える影響の深刻さは明らかです。(平成29年国民生活基礎調査より抜粋)

世帯構造と世帯割合(単位:%)

単独世帯 夫婦のみ 夫婦と未婚の子 ひとり親と未婚の子 三世代 その他
1989年 20.0 16.0 39.3 5.0 14.2 5.5
2017年 27.0 24.0 29.5 7.2 5.8 6.5

総数100%、データは2017年6月1日現在

全世帯に占める高齢者世帯の割合(単位:%)

1989年 7.8
2007年 18.8
2017年 26.2

1989年(平成元年)と2017年をくらべてみると、単独世帯や夫婦のみの世帯が増加し、反対に三世代世帯が極端に減少しています。
また高齢者世帯は、1989年には全世帯の7.8%でしたが、2017年には26.2%まで増加しています。
高齢者のみの世帯や核家族世帯が増えている現状を考えれば、入院によるADL・IADLの低下は、

  • ○独り暮らしが困難になる
  • ○自宅での介護をどうするか

といった問題に直結することが分かるでしょう。
一方で、退院可能な患者さんは「看護必要度の低い患者さん」であり、病院側からすれば早期に退院していただきたいのが本音ではないでしょうか。
よって、入院早期に入院関連機能障害のリスクが高い患者さんを見極め、適切に評価して対策を立てておく必要があるのです。

ADL・IADLを簡単に評価するDEATH SHAFT(デスシャフト)

入院時にADL・IADLを評価したほうが良いとはいえ、忙しい臨床の場において高齢患者さん一人ひとりに時間をかけて評価するのは難しいかもしれません。
しかし、少なくとも要介護認定で要支援1以上の方、75歳以上の後期高齢者や脳卒中の既往がある方、すでにADL・IADLに障害のある方、フレイル(フレイルについてはこちらをご参照ください)など、入院関連機能障害のハイリスクと考えられる患者さんの評価は行うべきです。
ここではADL・IADLを簡単に評価するツール、DEATH SHAFT(デスシャフト)をご紹介します。
DEATH SHAFTはADL・IADLの頭文字を組み合わせたもので、「できる・できない」「必要・必要ではない」の二択でチェックします。

ADL D Dressing(着替え) 一人で着替えができるか
E Eating(食事) 一人で食べられるか
介助は必要か
食事形態は
A Ambulating(歩行) 一人で散歩できるか
屋外歩行は
杖は
T Toileting(排泄) トイレまで行けるか
オムツは使っているか
H Hygiene(衛生) 入浴はどうしているか
歯磨きは
IADL S Shopping(買い物) 買い物で困ることはあるか
H Housework(掃除や片づけ) 掃除は一人でしているか
A Accounting(お金や財布の管理) お釣りの計算で困ることはあるか
F Food Preparation(炊事) 食事の用意は自分でできるか
T Transport(外出) 公共交通機関は利用しているか

あらかじめDEATH SHAFTの評価シートを作成しておき、丸を付けるだけなら時間をかけずにチェックすることができるのではないでしょうか。

病院は退院後の生活を見据えた関わりを

高齢患者さんの入院に際して、病院の役割は患者さんのADL・IADLを維持できるよう関わること、ADL・IADLの維持が困難だと予想される患者さんに対しては、退院後の生活を見据えた関わりを持つことです。

●入院前からの退院支援が評価されるように

国が推進する地域包括ケアシステムは、分かりやすくいうと「できる限り住み慣れた地域で暮らしましょう」というものです。
地域包括ケアシステムにおいて、病院には入院「前」からの退院支援が求められています。
2018年の診療報酬改定では、入院前からの退院支援に対し「入院時支援加算」が新設されました。
入院前から退院困難な要因を把握して支援した場合、退院時に200点算定できるというものです。

事例)

85歳の女性、独り暮らし。
最近、物忘れなど認知機能の低下がみられていた。
家族は遠方に住む娘さんが一人のみ。
自宅で転倒し、大腿骨頚部骨折で入院・手術を受けることになった。

この事例の問題点は

  • ○高齢である(入院関連機能障害のハイリスク)
  • ○独り暮らし(入院経過によっては独り暮らしが困難になる)
  • ○入院・手術が必要になる(入院によるADL・IADLの低下や、さらなる認知機能低下の可能性)
  • ○家族が娘さんのみで遠方に住んでいる(医療者とのコミュニケーションが不足しやすい)などでしょうか。

これらの問題点への対策として、入院前に治療や入院生活について説明するとともに、入院によって起こり得ること(ADL・IADLの低下、認知機能の低下など)を娘さんに伝えます。
また入院中は娘さんと問題点を共有し、退院後の生活について話し合いましょう。
退院後の生活の場をどうするか、社会的支援をどう使うか。
介護が必要な状態なら、入院中に要介護認定を済ませておかなければ、退院後にすぐ介護サービスを利用することはできません。
こうして退院後のフォローを入院中に整えることは、患者さんが速やかに退院できる(病院側の利益)だけではなく、安心して退院できる(患者さんの利益)ことにもつながるのです。

病院も地域包括ケアシステムの要素

地域包括ケアシステムにおいて、医療の分野では在宅医療ばかりがクローズアップされがちですが、高齢者の多くは慢性疾患を保有しており、急性増悪時には入院が必要になることも多いのです。
病院も地域包括ケアシステムの一要素であることを忘れないでください。
病院と地域が連携しなければ、高齢者の在宅療養の質を向上させることはできません。

参考:
厚生労働省 国民生活基礎調査 2017年.(2018年10月24日引用)

  • 執筆者

    橘ゆみ

  • 訪問看護師の橘ゆみです。国立病院附属看護学校卒。
    日赤病院、総合病院にて手術室、小児、NICU、ICU、循環器科、脳神経外科等に勤務。
    病棟主任、看護学生の臨地実習指導者として充実した日々を過ごしました。
    結婚・出産・子育てとライフスタイルにあわせて働きかたを変え、現在は訪問看護師をしています。
    高齢化が進む日本において介護や介護予防は大変重要な分野です。
    分かりにくい介護保険制度をできるだけ分かりやすく、また介護に関する有意義な情報をお伝えしていきたいと思います。
    保有資格:看護師免許、臨地実習指導者

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