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クリニック・治療院 OGメディック

  • 桑原

    公開日: 2018年10月31日
  • 患者さんのケア

心リハガイドラインに学ぶ運動中止基準。実際の現場では?

近年では、心疾患に対するリハビリのエビデンスの確立に伴い、心リハが早期から積極的に取り入れられています。
心リハガイドラインの運動中止基準に焦点を当て、実際の現場ではどのように活用されているのかについてお話しましょう。

心リハガイドラインでの運動中止基準

実際にガイドラインで示されている運動療法の中止基準は、どのようなものなのでしょうか。

実際のガイドラインで明記されている運動中止基準

運動負荷の中止事項

  • ●狭心症状、失神、目まいやふらつき、呼吸困難感、下肢の疼痛
  • ●チアノーゼ、冷や汗、運動失調、顔面蒼白状態
  • ●収縮期血圧が運動中に上昇しない、または下降傾向、血圧の上昇(225mmHg以上)
  • ●ST変化、頻脈や徐脈、心室性頻拍、不整脈の頻発、心房細動、R on Tなどの心電図変化

運動負荷試験(CPX)が可能であれば行い、結果を運動処方の基準として用いると安全性が確保しやすくなります。
生活習慣病や、高齢者は整形外科、中枢神経疾患などを併発している例も多く、他の疾患による影響も考慮して運動の中止基準を決める必要があります。
(出典:心血管疾患に関するリハビリテーションにおけるガイドライン)

心リハ開始前にチェックしておきたい身体所見

心臓疾患をお持ちの患者さんは、発症時や術後などの早期リハ時だけではなく、毎日の体調が一定ではありません。
心リハを行う際には、患者さんのその日の体調を問診やバイタルサインでチェックしましょう。

リハ前にチェックしておきたい項目

  • ●意識状態、発熱、痛み、出血、さまざまな炎症所見
  • ●症状の悪化(心不全や狭心症状など)
  • ●体重が急激に増加(1〜3日以内に2kg以上の増加)
  • ●血圧や脈拍数の大幅な上昇や低下
  • ●危険な不整脈

これらの兆候がある場合には無理をせず、運動は中止しましょう。
目まいや失神、症状の悪化、そのほかの体調の悪化時には医師の判断を仰ぎ、運動開始の指示が出るまで休むように指導しましょう。(出典:心臓リハビリテーションの実際)
また睡眠が十分に得られないと交感神経が活性化され、不整脈を誘発したり、脈拍数が増加するため、問診などによる確認も重要です。

実際の訓練場面ではどのように中止基準を活用しているのか

ガイドラインには、運動不可の中止基準について明記されていますが、リスク管理の視点から考えると、実際の現場ではどのように危険予測をするべきなのかということが重要となります。
たくさんやれば良いというものでもないため、オーバーワークの判断について患者さんに指導することも重要です。

訓練中の運動中止基準

安全に運動を行い、体調・疾病管理するために、心リハ中または後の患者さんの体調も十分に管理する必要があります。

訓練中の運動中止基準

  • ●意識状態や症状の悪化、息切れ、目まい、嘔気などの発生
  • ●不整脈(心室頻拍3連発以上、R on T、30以上の単一もしくは多源性の心室頻拍、2連発以上の心室期外性収縮、心房細動、徐脈、頻脈など)
  • ●血圧の上昇

このような兆候が見られたら運動を速やかに中止しましょう。

オーバーワークにも配慮する

また、リハ中もしくは後に現れるオーバーワークの兆候にも十分気をつける必要があります。

  • ●運動がきついと感じる(Borg15以上)
  • ●運動中に、動悸や息切れ、胸の痛みが現れる
  • ●疲れで十分な睡眠が得られない
  • ●翌日に疲労感、筋肉痛や関節痛が強く残る

以上のような兆候がある場合には、運動の強度を軽くするなどの対応を行いましょう。

具体的にどのようなとき、運動しないほうがいいのか

これまでにお話したように、運動を中止する必要がある場合も存在します。
退院後は非監視下での運動なども重要となってきますが、患者さん自身が自己管理をすることが重要になってきます。

  • ●天候、気分不良時、運動は中止する
  • ●食後の激しい運動は避ける
  • ●適切な運動を適切な服装を選択して行う(薄着や厚着など)
  • ●自覚症状に注意する

不快感、息切れ、疲労感、不眠など、患者さん自身が自分の限界について自覚する必要があります。
そのような状況下には無理せず運動を中止したり、軽い運動に止めるなども重要な対処法の一つです。
自分の限界を知ることで無理な運動を避け、心臓への負担も減らすことが可能です。
運動を継続して行うことは、心疾患をお持ちの方にとって再入院率の減少や生命予後の延長、運動耐容能の向上など実にさまざまな効果があるといわれています。
指導する側であるセラピスト、患者さんにとっても、体調や運動する環境が不良な際には、無理に運動を行わないというリスク回避と管理も重要となってきます。
睡眠時間や食事内容の確認、体重測定など運動前の問診などによるリスク管理をしっかりと行うようにしましょう。
また非監視下での運動の際には、自分自身の体調や血圧、脈拍、体重や尿量などを考慮し運動を行うように指導しましょう。
(出典:心疾患における運動療法に関するガイドライン、循環器疾患と睡眠)

リスク回避のため、体調などを考慮し運動を中止することも大切

心リハにおける運動の重要性は明確なものとなっており、治療でも重要な役割を担っています。
体調不良のときには運動を中止することも、リスクの回避や自己管理において重要なポイントです。
運動を行う上でのリスク管理や運動前後の体調管理を行い、無理なく行いましょう。

リンク記事:
心肺運動負荷試験(CPX)とは?リハビリ場面での活用方法をご紹介します

参考:
野原隆司,安達仁,他:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版).(2018年10月26日引用)
斎藤宗靖,谷口興一,他:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2000-2001 年度合同研究班報告) 心疾患における運動療法に関するガイドライン.(2018年10月26日引用)
長山雅俊:心臓リハビリテーションの実際 心臓財団虚血性心疾患セミナー 心臓Vol.48 No.8(2016) pp980–982 .(2018年10月26日引用)
葛西隆敏:睡眠関連障害と全身性疾患をめぐって 循環器疾患と睡眠 日本内科学会雑誌105 巻9 号2016年.(2018年10月26日引用)

  • 執筆者

    桑原

  • 1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
    その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
    保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士

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