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腎臓リハビリテーションとは?その目的と実施内容についてご紹介します

循環器疾患を対象とした心臓リハビリは徐々に浸透してきましたが、腎臓リハビリというワードを聞いたことがあるでしょうか?
慢性腎臓病(CKD)は、進行すると日常生活動作(ADL)の低下だけではなく、透析治療も必要になる病気です。
本記事では、腎臓リハビリの目的や実施内容について解説します。

腎臓リハビリの目的や実施内容

急増する慢性腎臓病患者

慢性腎臓病の有病率や、わが国における問題点などについて解説します。

●慢性腎臓病とは?

日本腎臓学会によると、慢性腎臓病とは、以下のように定義されています。

  1. 1)糸球体濾過量(GFR)が60ml/min/1.73m2未満が3カ月以上持続すること
  2. 2)GFRの値にかかわらず、腎臓の障害を示唆する所見(検尿での異常・画像所見・血液検査異常・病理所見など)が3カ月以上存在すること

上記のどちらか、または両方を満たす場合にCKDと診断されます。
ここで注意が必要なのは、透析をしているかどうかではなく、腎臓の機能が一定以上低下しているかどうかになります。

●CKDの有病率は年々増加傾向!

CKDの有病率は年々増加傾向

厚生労働省が実施した患者調査の概況によると、2014年度における慢性腎不全患者数は296,000人とされ、糖尿病や心不全などと同様に新たな国民病と認識されています。
また日本透析医学会によると、2016年度における新規透析導入患者さんは39,344人と報告されています。
わが国におけるCKD患者の特徴としては、高齢であることや併存疾患が多いことなどが挙げられます。
糖尿病や高血圧などの基礎疾患があることによって、脳卒中や心筋梗塞など大きな病気につながることにも注意が必要です。

●CKD患者さんがかかえる問題点

CKD患者さんがかかえる問題点

CKD患者さんでは、腎臓の機能低下以外にもさまざまな問題点があります。

1)透析による就労困難

血液透析患者さんの場合は、週に2〜3回のペースで4時間程の透析通院が必要です。
体調不良による解雇や経済的な不安、各合併症や運動耐容能低下による身体的な理由が問題となります。

2)さまざまな合併症

CKD患者さんでは、腎臓の機能低下に起因する合併症が問題となります。

◯体液過剰・心不全

腎臓の濾過能力が低下することによって、体内に過剰な水分が貯留します。
また直接的な心臓への負担だけではなく、CKDの原因の1つとなる高血圧により心筋梗塞などを発症するリスクもあります。

◯腎性貧血

腎臓の機能が低下することによってエリスロポエチンというホルモンの産生が少なくなると、貧血が進行します。
貧血により、倦怠感や目まいなどの症状が問題となります。

◯骨の強度が低下

腎臓の機能が低下すると血中のカルシウム濃度が少なくなるため、副甲状腺ホルモンが骨から血中へカルシウムを放出します。
そのため、骨の強度が低下し転倒による骨折などが問題となります。

腎臓リハビリとは?

腎臓リハビリとは

ここでは、腎臓リハビリの概要についてご紹介します。

●腎臓リハビリは長期的かつ包括的な取り組み

日本腎臓リハビリテーション学会によると、腎臓リハビリとは腎疾患や透析医療による身体的・精神的影響を軽減し、生命予後や心理社会的・職業的な状況を改善することが目的であるとされています。
その内容は、運動療法・食事療法・水分管理・薬物療法・患者教育・心理的サポートなどで構成されます。
心臓リハビリと同様に、多職種による包括的な関わりが重要視されています。

●腎臓リハビリに関係する職種

以下に医療機関で関係する職種の一部をご紹介します。

◯医師

病気の診断や治療全般を行い、チームの責任者としての役割をもちます。
主に腎臓内科の医師やリハビリテーション医が担当します。

◯リハビリ専門職

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の3職種からなり、筋力トレーニングやADLの指導などを行います。

◯看護師

日常的なケアに加えて、リハビリによって獲得した動作を生活の場面で実践するなど、役割はさまざまです。
また、患者さんと接する機会が多いため、心理面でのサポートや生活における課題を抽出することも重要です。

◯栄養士

CKDの進行予防には、塩分制限やタンパク制限などの食事療法が必須となります。
また、言語聴覚士と協働して、嚥下障害のある患者さんの食事形態を検討したり、足りない栄養素の評価などを行います。

●腎臓リハビリの効果

腎臓リハビリの目的は、腎臓病を持つ患者さんのADLを改善することや、病気の進行や合併症を予防することです。
透析治療をしている患者さんでは、貧血の改善や低栄養の改善など部分的な要素に加え、死亡率の改善についても報告されています。
他分野のリハビリのように多くのエビデンスはないですが、今後の腎臓リハビリの普及とともに構築されることが望まれます。
一方、CKDの合併症である心疾患に関しては、心臓リハビリ分野で運動療法の有効性が多数報告されています。
腎臓リハビリにおいても同様に、生活習慣の改善が病気の予防やADLの改善に寄与すると期待されています。

腎臓リハビリにおける運動療法

ここでは、実際に腎臓リハビリで行われる運動療法の具体例についてご紹介します。

●運動耐容能の向上とADLの維持が目標

腎臓リハビリでは、有酸素運動によって血圧や血糖値を下げることや、筋力トレーニングによる基本動作能力の向上が目標になります。
心臓リハビリと同様に、直接的に臓器を治療するのではなく、病気の進行予防や合併症予防が重要であるといえます。
しかし、保存期(透析導入していない)の患者さんでは、運動負荷量の設定は慎重に行う必要があります。
その理由は、運動強度が強くなるにつれて腎臓への血流量が少なくなるため、過度な運動負荷は腎臓機能をさらに低下させる可能性があるからです。

●有酸素運動を実施する上でのポイント

ここでは、CKD患者さんが有酸素運動を行う際に押さえておきたいポイントについてご紹介します。

1)エルゴメーターやトレッドミルを使用する

エルゴメーターやトレッドミルを使用する

これらの機器は有酸素運動の定番となっていますが、血圧や心拍数の管理をしながら安全に実施できるため、CKD患者さんのリハビリでも活用されています。

2)CPXを用いた運動負荷量の評価が有用

CPXを用いた運動負荷量の評価が有用

CPXといえば心臓リハビリのイメージが強いですが、過度な血圧上昇を避けるためにも、運動耐容能の評価は有用です。
ATレベルでの心拍数やAT1分前のワット数(トレッドミルであれば速度)を参考に、運動負荷量を決定します。
CPXが実施できない場合は、自覚的強度であるBorgスケールで11〜13程度に設定するか、カルボーネン法で40%程度の運動強度に設定するのが一般的です。

3)透析治療をしている場合の注意点

透析治療をしている患者さんの場合、血圧や心拍数の管理以外にも注意するべき点があります。

  • ◯透析をおこなう血管(シャント)側で血圧を測定しない
  • ◯透析日は運動強度を低めに設定することを考慮する
  • ◯透析中に運動療法を実施する際は、血圧が安定している開始後1〜2時間までに行う
  • ◯ドロップアウトを防止するため、運動時間や頻度は個別に設定する

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今後ニーズが高まる腎臓リハビリ

腎疾患は高血圧や糖尿病などの生活習慣病がベースになっていることが多く、今後も発病率は増加すると予想されます。
心臓リハビリや呼吸器リハビリなど、内部障害への対応が重要視されるなか、CKDに関する専門的な知識をもったセラピストが求められてくるでしょう。
日本腎臓リハビリテーション学会は、2018年度から腎臓リハビリテーション指導士という制度を設けて、腎臓リハビリにおけるプロフェッショナルの育成を目指しています。
今後のニーズに対応できるよう、ぜひ今から腎臓リハビリについて学んでみてはいかがでしょうか。

参考:
一般社団法人 日本生活習慣病予防協会ホームページ.(2018年11月19日引用)
一般社団法人 全国腎臓病協議会ホームページ.(2018年11月19日引用)
日本腎臓リハビリテーション学会ホームページ.(2018年11月19日引用)
上月正博(編):腎臓リハビリテーション.医歯薬出版株式会社,東京,2012.

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