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クリニック・治療院 OGメディック

  • 橘ゆみ

    公開日: 2018年12月28日
  • 患者さんのケア

医療現場の”困った家族”はモンスターペイシェントなの?効果的な家族ケアとクレーム対応

医療現場で遭遇する”困った家族”。
看護師が「困った」と感じるのは多くの場合、対応困難な家族のことでしょう。
対応困難な家族は、モンスターペイシェントとひとくくりにされがちですが本当にそうでしょうか。
本記事では家族ケアとクレーム対応について考察します。

対応困難な家族は、モンスターペイシェントとひとくくりにされがちですが本当にそうでしょうか

困った家族=モンスターペイシェント?

困った家族=モンスターペイシェント?

モンスターペイシェントとは、医療機関において自己中心的で理不尽な要求を繰り返す患者やその家族のこと。
手におえないほど著しくモラルにかけた彼らを、モンスター(怪物)にたとえた和製英語です。
医療従事者ならだれもがモンスターペイシェントに遭遇して悩んだ経験があるのではないでしょうか。
しかしどこまでがモンスターペイシェントなのか、境界は曖昧です。
私たちがモンスターペイシェントだと捉えている家族も、危機的状況に陥っているが故にそのように表現するしか手段がないのかもしれません。

●家族にも精神的ケアは必要

患者さんの家族には「患者さんのサポーター(介護者)でありながら、自身にも精神的ケアが必要(患者)である」という相反する側面があります。
家族は患者さんに対して精神的な支えになったり、代理で意思決定をしたり、医療的ケアを担ったりします。
一方で患者さんを支える家族の負担は大きく、第2の患者ともいわれるように精神的ケアを必要とする立場でもあるのです。
しかし、医療現場において家族は介護者のイメージのほうが強く、患者としてのケアを十分に受けられてはいません。

先手必勝の家族ケアでモンスター化を阻止

確かに忙しい医療現場では患者さんのケアで手一杯で、家族に対しきめ細かく対応する時間を捻出するのは難しいものです。
「元気がないな」「なにか言いたいことがありそう」と気にはなっていても、家族ケアの優先順位は低くなりがちでしょう。
しかし、家族ケアは先手必勝です。
家族がどんな心理状態にあるのか、今後なにが起こり得るか予測しながら先回りした対応をすることが大切です。

●危機介入は早期に!

家族ががんになったらどんな気持ちになるでしょうか。
悲しみはもちろんのこと、人によっては罪悪感に苛まれたり、誰かの責任にして怒りをぶつけることもあるでしょう。
危機に直面したときに起こる緊急事態ストレス反応は至極当然のことです。
しかし、このような反応は乗り越えるための手助け(危機介入)をすれば、長期間続くものではありません。
危機介入の基本的なアプローチについて山勢(参考文献<1>)は、危機に関する要因をアセスメントし、看護過程にのっとった実践で考えるよう述べています。
まず、なにが原因で危機状態に陥っているのか、危機をどのように捉えているのか、どのような心理状態なのかなど危機についてのアセスメントをします。
危機について把握できたら早期に介入を図りましょう。
このとき、危機のプロセスや介入方法を明確にするために危機モデルを使って考えると分かりやすいです。
問題解決型であるアギュララの危機モデルは、ストレスによって人が不均衡状態に陥ったときに均衡回復のためのニードが生じるが、均衡を取り戻して危機を回避するか、不均衡が持続して危機に陥るかはバランス保持要因の有無による、という問題解決過程に焦点を当てたモデルです。
つまり、出来事を現実的(歪んだ見方をせず)に知覚し、社会的支持(周囲からのサポートなど)を受け、対処機制(コーピング)できれば危機を回避できるが、一つでも欠ければ危機に陥るというものです。
アセスメント、計画、介入、評価、修正を繰り返すアギュララの危機モデルはそのまま看護過程に反映させることができるので、家族のケアにも使いやすいでしょう。
もちろん、モデルのプロセス通りに危機を乗り越えていくケースばかりではありませんが、問題を明らかにし、アプローチを考えるためには効果的であるといえるのではないでしょうか。

モンスターペイシェントへの対処方法

モンスターペイシェントへの対処方法

クレームに発展してしまったら、基本は傾聴と共感です。
大声で怒鳴られてもつられて大声になったり、話をさえぎって正論をぶつけたり、言い訳するのは逆効果です。
なかには心が折れそうになる方もいるでしょう。
その場合もぐっとこらえて冷静に毅然とした態度で接しましょう。
「具合が悪いんだ!」には「具合がお悪いんですね」とおうむ返ししつつ、ゆっくりうなづき、タイミングを合わせて相づちを打つことを繰り返しながら一旦は言い分を受け止めます。
謝罪も効果的ですが、何でも謝罪をするとこちらに落ち度があると認めたことになってしまいます。
「不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」にとどめましょう。
話を聞いてもらえたことで満足すれば徐々に落ち着いてくるはずですが、ますます興奮して要求がエスカレートするようなら総力戦へすすみ、それでもだめなら「警察」のワードを出しましょう。
ここで筆者が経験したケースをご紹介します。
患者Aさんはいつも突然外来を通さずに病棟へやってきて「俺は具合が悪いんだ。今すぐ入院させろ!」と大声で騒ぎます。
しばらくは黙って話を聞くのですが、それで落ち着く場合と、さらにエスカレートする場合がありました。
エスカレートすると近くにあるものを投げつけてくるのですが、それが筆者の病棟の総力戦開始の合図です。
もう一人スタッフが対応し、落ち着かなければ「ほかの患者さんに迷惑になるので、警察に連絡します」と冷静に話します。
ところが、このワードを出した途端Aさんは「そんなこと言うなよー。帰るからさ」と穏やかになるのです。
当時はAさんの姿が見えるとドキドキしてつらかったのですが、数年たってAさんが姿を見せなくなると、天涯孤独のAさんは寂しさから誰かに相手をしてほしかったのだろうと想像できました。
Aさんの行動は肯定できるものではありませんが、怒りの裏側にある不安、不満にも目を向けてみるべきではないでしょうか。
もちろん、対応する看護師の心を守るのが第一ですから、一人に任せるのではなく、総力戦に出るタイミングを話し合っておき、全員で対応する環境を整えておくことが望ましいでしょう。

家族ケアは看護師に必要なスキル

家族ケアは看護師に必要なスキル

看護実践においてどのような領域でも家族ケアは重要であり、看護師に必要なスキルであるといえるでしょう。
モンスターペイシェントの多くは誤解や不満が根底にあるので、早期からの予測的対応は効果があると考えます。
看護師一人ひとりが家族ケアを意識するだけでなく、個人で対応できないケースに対する対策を組織内で決めておくことが大切です。

参考:
参考文献<1>
山勢博彰:救急・重症ケアに今すぐ生かせる みんなの危機理論 事例で学ぶエビデンスに基づいた患者・家族ケア.メディカ出版,2013,pp.14-16.

  • 執筆者

    橘ゆみ

  • 訪問看護師の橘ゆみです。国立病院附属看護学校卒。
    日赤病院、総合病院にて手術室、小児、NICU、ICU、循環器科、脳神経外科等に勤務。
    病棟主任、看護学生の臨地実習指導者として充実した日々を過ごしました。
    結婚・出産・子育てとライフスタイルにあわせて働きかたを変え、現在は訪問看護師をしています。
    高齢化が進む日本において介護や介護予防は大変重要な分野です。
    分かりにくい介護保険制度をできるだけ分かりやすく、また介護に関する有意義な情報をお伝えしていきたいと思います。
    保有資格:看護師免許、臨地実習指導者

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