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「第9回日本腎臓リハビリテーション学会学術集会」最新のトピックスをご紹介します

2019年3月9日〜10日、別府コンベンションセンターで第9回日本腎臓リハビリテーション学会学術集会が開催されました。
腎臓リハビリテーションは、高齢社会・医療費削減などの観点からも、今後ますますニーズが高まる分野です。
本記事では、筆者が参加したセッションを中心に、最新のトピックスなどをご紹介します。

第9回日本腎臓リハビリテーション学会学術集会レポート

腎臓リハビリテーションガイドライン

腎臓リハビリテーションガイドライン

2018年6月、日本腎臓リハビリテーション学会より、腎臓リハビリテーションガイドラインが発刊されました。
ここでは、3つの対象疾患に関する内容をご紹介します。

●糸球体腎炎・ネフローゼ症候群

糸球体の炎症によって血尿や蛋白尿が出現する病態を総称して糸球体腎炎と呼びますが、発症時期により急性・慢性に分類されます。
現在、運動によって糸球体腎炎の予後が悪化する、または安静制限によって予後が改善するというエビデンスは明らかになっていません。
また、運動負荷によって一時的に尿蛋白が増加するが、運動終了後には負荷前のレベルまで改善するという報告があります。
そのため、「糸球体腎炎患者に運動制限を行わないことを提案する 2D(効果が確信できないため提案レベル)」と記載されています。
ネフローゼ症候群も同様に、「ネフローゼ症候群を呈する患者に、過度な安静や運動制限を行わないことを提案する(2D)」とされています。
一律に運動を禁止すべきではないですが、個々の患者さんに応じて年齢や腎機能障害の程度を考慮することが大切です

●保存期CKD

保存期CKDとは、慢性的な腎障害を呈した状態(CKD)で、透析導入前の段階を指します。
透析治療は医療費全体の4%を占めており、日本透析学会の報告によると2017年の新規透析導入者は38786人に達しています。
そのため、医療費削減のためにも保存期CKD患者さんの透析導入を遅らせることが重要になってきます。
本ガイドラインにおいて、運動療法は生命予後や腎臓予後、入院リスクを改善するというエビデンスは得られていません。
運動耐容能は改善傾向にあるといえますが、症例数が少ないことと、運動のみの効果か疑問が残る結果となっています。
そのため、「年齢や身体機能を考慮しながら可能な範囲で運動療法を行うことを提案する(2C 効果は限局的であり提案レベル)」とされています。

●透析患者

メタアナリシスの結果、透析中に運動療法を実施することで運動耐容能・QOL・身体機能(歩行能力など)が有意に改善すると報告されています。
生命予後に関しては運動療法によって改善傾向にありますが、統計学的な有意差は認められていません。
これらの結果より、「透析患者における運動療法は、運動耐容能、歩行機能、身体的QOLの改善効果が示唆されるため、行うことを推奨する(1B 効果の推定値に中程度の確信がある)」とされています。

運動療法を提供できない?心臓リハビリ外来を活用しよう

2019年3月の時点では、腎臓病患者さんに対しては疾患別リハビリテーション料の算定ができません。
ここでは、心臓リハビリ外来を活用するメリットについてご紹介します。

●心不全を合併しているCKD患者さんが対象

腎臓病は疾患別リハビリテーションの算定ができないため、運動療法や運動指導を行っている施設は無償での提供となっています。
そのため、セラピストが積極的に介入することは1日の取得単位減少につながるため、収益性の観点から実施できない施設も多いでしょう。
しかし、糖尿病性腎症による腎機能障害では、心血管系の障害をかかえていることも多く、心不全治療を要するケースもあります
その場合は、心大血管リハビリテーションでの算定が可能であるため、収益性も担保できることになります。
血圧・服薬管理や運動療法などのアプローチは、心血管イベントの予防や透析導入を遅らせることにつながります。
名目としては心臓リハビリのカテゴリーとなりますが、上記目的のために介入するのであれば立派な腎臓リハビリテーションといえるでしょう。

●心臓リハビリ外来では多職種介入や運動耐容能評価が可能

心臓リハビリ外来を利用するメリットは、多職種による包括的アプローチや心肺運動負荷試験(CPX)に代表される運動耐容能の評価を実施できることです。
腎臓リハビリテーションガイドラインにおいても、CKD患者に対しては中等度の運動強度にて行うことが提案されています。
そのため、CPXでAT(嫌気性代謝閾値)レベルを評価することは非常に重要であり、心臓リハビリに従事するスタッフの指導のもと、安全に行うことができるでしょう。
また、栄養指導や生活習慣管理など、心臓リハビリと共通するアプローチが多く、現存するチームで対応できます。
しかし、保存期CKD患者さんの場合、運動療法によって腎機能が悪化していないかをフォローしていく必要があります。
血圧・心拍・服薬指導などだけでなく、浮腫・食欲不振・倦怠感など尿毒症症状がでていないか、問診や血液検査で確認しておきましょう。

関連記事:CPX第3弾「応用編」!運動耐容能低下の原因を考える際のポイントとは?

腎臓リハビリテーションにおける今後の展望

最後に、本学会を通じて筆者が感じた今後の腎臓リハビリテーションについて述べたいと思います。

●腎臓リハビリテーション指導士の誕生

腎臓リハビリテーション指導士の誕生

今回の第9回日本腎臓リハビリテーション学会学術集会において、第1回腎臓リハビリテーション指導士の認定試験が行われました。
学会ホームページには掲載されていませんが、指導士制度が発表された年度には学会の会員数が急激に上昇しています。
認定試験を受けるためには、出願時点で2年度分の会費を納入しておく必要があるため、早めの入会が望ましいです。
心臓リハビリテーション指導士を例に挙げると、第1回認定試験の合格率は92%でしたが、第2回は70%まで低下しており、その後は60〜70%台で推移しています。
あくまでも筆者の予想ですが、まずは腎臓リハビリ普及のために一定数の指導士が誕生し、その後会員数と受験者数の増加によって資格取得の難易度が上がるでしょう。
試験範囲や出題傾向などが調整されるなか、将来的には合格率が60%程度になるかもしれないので、早い段階で取得を目指したほうがいいかもしれません。

●透析患者さんへのリハビリテーションが可能になる?

透析患者さんへのリハビリテーションが可能になる?

前述したとおり、2019年3月の時点では腎疾患患者さんにリハビリテーション料を算定することはできません。
現存する腎臓リハビリ関係の指導料として、糖尿病透析予防指導管理料(350点)が挙げられますが、リハビリ職の介入に関しては明記されていません。
しかし、腎臓リハビリテーション学会で理事を務める先生方は、2020年度の診療報酬改定にむけて厚労省に提案書を提出されています。
詳細は不明ですが、おそらく「腎臓リハビリテーション指導料」や「透析患者における運動指導料」などの名目となるでしょう。
透析導入を遅らせて医療費を削減すべき現状に鑑みると、腎臓リハビリテーションに関する指導料・加算が新設される可能性は高いといえます。

関連記事:腎臓リハビリテーション指導士を取得するには?最新情報をお伝えします

社会のニーズに対応できるセラピストを目指そう!

従来のリハビリテーションは、けがや神経疾患などで障害をかかえた対象者を治療することが主流でした。
しかし、現在の超高齢社会におけるリハビリ専門職は、加齢による身体機能の低下や、生活習慣病の予防なども対象にしなければなりません。
腎臓病に関しても、運動療法によって高血圧や糖尿病を治療し、健康寿命の延伸や医療費削減などに貢献することが重要です。
特に内部障害分野に携わっているセラピストにとって、今後は腎疾患への対応が必須となるでしょう。
これを機会に、ぜひあなたも腎臓リハビリテーションを学んでみませんか?

参考:
日本腎臓リハビリテーション学会:腎臓リハビリテーションガイドライン.南江堂,東京,2018.
一般社団法人日本透析医学会ホームページ.(2019年3月15日引用)

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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