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Rapid Response System(RRS)とは?急変の前兆をとらえよう!

医療現場、特に急性期病院において、患者さんが急変した際にはBasic Life Support(BLS)を行うよう徹底されているでしょう。
しかし、急変前の前兆をとらえることで、心肺停止を予防できることをご存じでしょうか?
本記事では、リハビリ専門職でも実施可能なRapid Response System(RRS)の概念についてご紹介します。

Rapid Response System(RRS)の概念についてご紹介

RRSとは急変の前兆をとらえること

ここではまず、RRSについてその概要をご紹介します。

●RRSの概念はなぜ生まれたのか?

RRSの概念はなぜ生まれたのか?

RRSは2005年6月に開催されたInternational Conference on Medical Emergency Team(ICMT)において、患者安全、集中治療、病院医学の専門家たちによって提唱されました。
院内において心肺停止を避けられる患者が存在し、重症化するまえにその兆候を把握し、救命率を改善することが目的になります。
RRSはRapid Response Team(RRT)が主体になって行われることが多く、そのチーム編成は各国および各医療機関で異なります。
代表的なコメディカルを以下に挙げてみます。

  • ◯看護師(集中治療および救急領域)
  • ◯臨床工学技士
  • ◯理学療法士などリハビリ専門職(呼吸療法に精通したもの)

集中治療医などの医師が中心となるチームも多いですが、実際には病棟で患者さんに接する機会の多いコメディカルの活躍が重要であるといえます。
特にリハビリ専門職は、患者さんに運動負荷をかけることになるので、全身状態の変化には十分に留意しなければならないでしょう。

●急変前の兆候をとらえることで救命率がアップ

RRSにおける早期重症患者さんの発見は、心肺停止件数の低下や、ICU入室前の心肺停止を減少させるなど、その後の救命率アップにつながることが確認されています。
日本院内救急検討委員会によると、院内心停止後の救命率はわずか49%であり、いかに心肺停止を防ぐかが重要であるといえるでしょう
そのため、患者さんと接する機会の多いコメディカルスタッフが、急変の兆候を的確にとらえ、いち早く対応することが望まれます

RRSの流れとチェックするべきポイント

具体的なRRS起動条件(チェックポイント)について以下にご紹介します。
病院によって独自の基準を設けていることも多く、これらの基準をもとに専門チームで検討することが大切です。

●RRSの起動基準は?

患者さんを観察したときに、「あれ、なにかがおかしい」と思うことからスタートになりますが、多職種で統一した基準を設けることが重要です。
RSSにおいて最も重要な要素は、このシステム自体が起動することであり、できるだけ知識や経験に左右されない基準が望ましいです。
Barking, Havering & Redbridge University Hospitals NHS Trustで作成されたスコアリングシステムを以下にご紹介します。

収縮期血圧 100mmHg以下 または 200mmHg以上
呼吸数 8回/分以下 または 20回/分以上
心拍数 50回/分以下 または 110回/分以上
酸素飽和度(室内気) 89%以下
尿量 1ml/kg/2時間未満
意識レベル 完全にはっきりしていない

これらの基準のうち2項目以上を満たす、または「なにかがおかしい」という懸念を抱いた場合、救急対応チーム(RRT)に連絡する流れになります。
普段のバイタル測定やリハビリ開始時に確認することができるため、導入しやすい基準であるといえるでしょう。

●RSS起動から救急対応チーム(RRT)到着までの流れ

RSS起動から救急対応チーム(RRT)到着までの流れ

RRS起動からの流れを以下にまとめてみます。

1)起動(患者さんの異常に気づく)から連絡

まずは上記の評価を行い、迅速にRRTへ連絡します。
報告の際、以下の点をおさえておきましょう。

  • ◯どんな状況で
  • ◯どんな背景で
  • ◯自分の評価内容
  • ◯必要な対処方法

2)救急対応チーム(RRT)が到着&対応

RRTが到着したあとは、評価や対処は専門スタッフにまかせることができるでしょう。
その際に必要な機器(酸素や吸引機器)を準備することができれば完璧です。
また、現場での詳細な報告も必要になりますが、院内救急コールとは違い、1分1秒を争うことはないため、落ち着いて報告すればよいでしょう

3)事例の記録

4)現場へのフィードバックとスタッフの教育

発生した事例の振り返りを行い、うまくいった点や課題点を見つけることで、RRSの質を向上することができます。
また、その結果を現場のスタッフに伝達することで、院内全体に浸透させることができるでしょう。

知っているだけじゃダメ!普段からのシミュレーションが大切

普段のリハビリ場面で気をつけることや、部門全体での情報共有の必要性についてご紹介します。

●バイタルサインはリハビリ前後で評価することが重要

急性期病院では、リハビリ開始時に血圧や脈拍を確認することが多いですが、必ず実施前後での数値を確認しておきましょう。
万が一、リハビリ終了時に血圧や心拍の異常があった場合、その時点で担当看護師やRRTに相談することもできます。
「リハビリが終わってから急変した」と「リハビリ終了時に異変に気づいた」では、その対応速度に大きな違いがあります。
また、事前に異常に気づいた場合、「しんどそうだからリハビリはやめておこう」ではなく、「血圧と呼吸だけでも確認しておこう」という行動ができればベストです。
急変の前兆を能動的に発見することができれば、RRSの概念を理解できたといっても過言ではないでしょう。

●部門全体でシミュレーショントレーニングを実施する

ここでは、実際に筆者の施設でも取り入れていたトレーニングについてご紹介します。

◯危険予知トレーニング(KYT)が有効

危険予知トレーニングをわかりやすく説明すると、ある場面を想定して、そこにあるリスクについて検討することです。
写真やビデオなどで映像提供するのでもよし、文章で臨床現場を想定するのもよし、実施方法はさまざまです。
筆者の施設では、朝礼後の5分の時間を使って、全スタッフでの意見交換を行っていました。
この方法は、直接RRSに役立つというよりは、潜んでいるリスクを見つける、急変の可能性を考えるなど、観察眼をきたえるために有効です。

◯臨床場面を想定した全体演習を行う

BLSのような蘇生手技のシミュレーションではなく、ベッドサイドでの評価場面を想定したほうがいいでしょう。
「訪室時のバイタルは◯◯です」「問いかけに対してつじつまが合わない発言をしています」などの事前情報を与え、その場面でどう行動するかを検討してみましょう。
RRT(主治医や病棟看護師でも可)に連絡する、評価内容を報告するなど一連の流れを想定することで、実際の場面で迅速に行動することができるでしょう。
RRSを進める上で一番重要なのは「システムが起動すること」であり、全体演習は判断基準や対応方法を身につけるためのトレーニングになるでしょう。

危機管理に特化したセラピストになろう

危機管理に特化したセラピストになろう

急変時における対応や、その前兆を把握する能力は急性期セラピストにだけ求められるものではありません。
むしろ、訪問リハビリやデイケアなどの介護保険分野では、セラピスト自身が判断しなければいけない状況も多いでしょう。
今回ご紹介したRRSの概念は、呼吸や循環動態のチェックなど特別な機器を必要としないことが特徴です。
リハビリを実施する際のバイタルチェックだけでなく、異変を感じたときの連絡手段や対応方法など、日々の臨床場面での危機管理意識を高めていくことが大切です。

参考:
日本院内救急検討委員会ホームページ.(2019年7月10日引用)
宮原聡子:RRSってなに?.Emergency Care vol 28:16-19,2015.

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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