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クリニック・治療院 OGメディック

  • 蔵本雄二

    公開日: 2019年08月30日
  • 患者さんのケア

ランニングが原因で起こるアキレス腱炎!理学療法士が知っておきたい評価や治療方法を紹介

アキレス腱炎はランニングやジャンプを繰り返す競技者に見られるスポーツ障害の1つです。
競技者だけでなく、運動不足解消やダイエットを目的にする一般のランニング愛好者でも、よく見られます。
そのため、スポーツ現場で働く理学療法士以外でも、適切な評価や治療を知っておく必要があります。
今回はアキレス腱炎の原因を理解して、評価や治療の具体的な方法を解説します。

ランニングが原因で起こるアキレス腱炎!理学療法士が知っておきたい評価や治療方法を紹介

アキレス腱炎の原因は身体的問題だけじゃない!不適切なトレーニングや環境も引き金に

適切な評価や治療につなげるためには、アキレス腱炎の原因を理解して、推論を展開していく必要があります。
まずは、アキレス腱炎の原因を整理して、評価の選択肢を増やしましょう。

●患者さんの身体的な問題

患者さんの身体的な問題

アキレス腱炎を引き起こす場合に考えられる、患者さんの身体的な問題を以下にまとめます。

1.足部のアライメント

足部のアライメントとして、距骨下関節の回内外や距骨の内外反が見られると、アキレス腱へのストレスが増加して、炎症が発生しやすくなります。

2.筋の状態

下腿三頭筋の緊張が増加していたり、短縮があったりするとアキレス腱へのストレスが増加して、炎症を引き起こしやすくなります。

3.関節可動域

関節可動域の低下は足関節だけでなく、股関節や膝関節など、周辺の関節で生じることで、アキレス腱にかかる負荷を大きくします。

4.動的アライメント

アキレス腱炎はランニングフォームが問題となることも少なくありません。
そのため、理学療法士の専門分野である、動作分析が活用できます。

これらのほかにも、関節が弛緩していたり、運動協調性が低下していたりする場合などでもアキレス腱にかかる負担が増えて、アキレス腱炎のリスクを高めます。

●過度なトレーニングよるオーバーユースに注意

過度なトレーニングよるオーバーユースに注意

以下の内容に当てはまるトレーニングは、アキレス腱炎の原因となります。

  • ○強度が強すぎる
  • ○過剰な頻度
  • ○長すぎる時間
  • ○無理な方法

発生時の練習状況を聞いて上記のような要因と照らし合わせることで、練習内容の改善、けがの発生予防につなげることができます。

●運動場所や履物といった環境も原因の1つ

屋外で実施するランニングは、走路の違いによりアキレス腱に与える影響が違います。
以下に考えられる走路の種類を示します。

  • ○アスファルト
  • ○オールウェザー
  • ○土
  • ○芝生
  • ○下り坂
  • ○上り坂

路面の違いでは、アスファルトは固いため、ほかの路面にくらべアキレス腱にかかる負担が大きくなります。
道路を走る場合、坂道の有無でアキレス腱にかかる負担が変化します。
また、シューズの衝撃性や柔らかさ、アウトソールの磨耗の程度といった履物も影響を与えます。

発生要因を踏まえて評価を実施!詳しい情報収集・動作の分析を欠かさずに

アキレス腱炎の評価は、人それぞれ違う発生要因をしっかり把握して、原因となっている身体機能や動作を評価することが重要です。

●発生時の状況をできるだけ詳しく聴取

いくら身体機能やフォームを改善できても、アキレス腱炎の原因となっている練習方法や練習環境を改善しなければ、再発のリスクが残ります。
そのため、以下のようなポイントを聴取しましょう。

  • ○痛めた時期
  • ○運動内容
  • ○走行距離
  • ○運動場所
  • ○ランニングフォーム変更の有無
  • ○再発かどうか
  • ○現病歴や既往歴(腰部や下肢などほかの部位の影響を考慮)
  • ○どのようなタイミングで痛むか(接地or蹴り出し)

たとえば、練習内容の変更や走行距離を増やしたタイミングで痛みが出ていれば、練習そのものを改善するようなアプローチが必要です。
また、ランニング時に痛みが出るタイミングがわかれば、動作観察やその後の修正のヒントになります。

●身体機能評価の項目

身体機能評価としては、足関節や足部の評価だけでなく、ほかの部位の影響も考慮する必要があります。
以下に必要な検査・測定項目を挙げてみます。

  • ○炎症症状の確認(腫脹、熱感)
  • ○痛みの確認(部位、程度、圧痛の有無、痛みが出る動作など)
  • ○アライメントの確認(leg-heel alignment、足部アーチ)
  • ○下腿三頭筋の状態(萎縮やタイトネス)
  • ○筋力(足関節だけでなく膝や股関節、体幹の筋力も測定)
  • ○関節可動域(足関節だけでなく膝や股関節も測定)
  • ○関節の不安定性チェック(足関節)
  • ○関節の弛緩性チェック(全身関節弛緩性テスト)

以上のように、炎症症状や痛みをチェックして、病期を確認して適切な治療を選択します。
また、足関節だけでなく、不適切なランニングフォームの要因となっている膝や股関節、体幹の機能障害を確認します。
この結果と次に挙げるランニングフォームをチェックしてわかった問題点を照らし合わせて、症状改善に必要な治療プログラムを立案していきます。

●動作のチェックポイント

アキレス腱炎の原因となっている動作として、不適切なランニングフォームが挙げられます。
特にアキレス腱へとつながる下腿三頭筋に過剰なストレスがかかるフォームで、ランニングを繰り返すとアキレス腱炎のリスクを高めます。
ランニングのチェックはランニングにおける立脚期である、3つの相でそれぞれポイントを示します。

○foot strike

接地が前足部になると、下腿三頭筋に遠心性の収縮が生じてストレスがかかります。

○mid support

knee-in/toe-outや足部外転/距骨下関節回内のようなアライメントが見られると、下腿三頭筋の遠心性収縮や踵骨外反による伸張ストレスやアキレス腱のねじれなどのストレスが生じます。

○take off

足関節の底屈が過剰に見られると下腿三頭筋の求心性収縮による牽引ストレスが生じます。

アキレス腱炎に対するリハビリの流れや具体的な方法

アキレス腱炎の治療は、炎症の回復具合に合わせて段階的に行う必要があります。
そこで、経過に合わせた治療の流れと具体的な方法を紹介します。

●リハビリ治療の流れ

炎症症状や痛みが強い急性期は安静やアイシングを中心に炎症の沈静化を図り、可能な限り患部以外の機能を低下させないようなトレーニングを実施します。
症状発生から2週間程度経過して、炎症症状が緩和していれば患部に負荷をかけるようなトレーニングを徐々に開始します。

●具体的な治療内容

アキレス腱の治療の具体的な内容を紹介します。

○物理療法

アイシングや超音波を病期に応じて使用します。

※超音波については、「超音波療法の特徴と効果。適正疾患と禁忌」で詳しく紹介しています。

○ストレッチ

ストレッチ

主に下腿三頭筋のストレッチを実施します。
また、セルフエクササイズとして実施できるように指導します。

○筋力トレーニング

主に足関節底屈のトレーニングを実施します。
カーフレイズの要領でトレーニングを実施しますが、つま先を台の上に置き、踵を上げた状態から足関節が背屈するまでゆっくり下ろしていく、伸張性収縮トレーニングが有効です。
ただし、負荷が大きいので症状の改善が見られなくなってから実施するようにしましょう。
また、膝や股関節、体幹などで筋力低下が見られた場合でも、ランニングフォームの崩れに影響を与えるので、エクササイズを実施します。

○テーピング・足底板

テーピング・足底板

足部のアライメントや関節弛緩性など、すぐの改善が難しい場合は、テーピングでの固定やアーチサポートなどを使用した足底板を使用します。

○ランニングフォームの改善

ラングフォームの改善には、複合的な関節運動を伴う動作練習がオススメです。
たとえば、KBW(knee bent walking)などのように足関節だけでなく、膝関節や股関節を含めて、協調的に下肢を動かせるように練習します。
また、フォームを変更した直後にアキレス腱炎を引き起こすことも少なくありません。
しっかりと改善するポイントを見極めて、原因となっている機能障害を改善しながら、目的を持ってフォーム改善をすることが重要です。

○トーレニング内容の改善

トレーニング内容を改めてアキレス腱への負担を減らすことで、けがの改善はもちろん症状発生の予防につながります。
上り坂などアキレス腱に負担のかかる走路を考慮したトレーニングやランニングの距離、頻度の修正・調整をします。

アキレス腱炎の原因を踏まえた評価・治療で症状改善と再発予防をしよう

アキレス腱炎は身体機能やランニングフォームに問題があり、アキレス腱への負担が増えることで生じるため、しっかりとした評価や動作観察が必要になります。
また、練習環境やトレーニング内容が問題となっている場合も少なくありません。
そのため、アキレス腱炎を引き起こす原因をしっかりと理解して、個々人で異なる障害発生の要因を追求する必要があります。
そうすることで、アキレス腱炎の症状の改善だけでなく障害発生の予防も含めた関わりをするようにしましょう。

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  • 執筆者

    蔵本雄二

  • 整形外科クリニックや介護保険施設などで理学療法として従事してきました。
    現在は県下でも有名な地域包括ケアシステムを実践している法人で理学療法士として勤務しています。
    そのため、施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
    医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
    保有資格:理学療法士、介護支援専門員、呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級

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