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NBMをご存知ですか?患者さんの目線にたったリハビリを心がけよう

医療分野において、EBM(根拠に基づいた医療)はすでに周知されていますが、NBM(物語と対話に基づいた医療)というワードはご存じでしょうか?
NBMは緩和ケアなどの場面で使われているイメージがありますが、急性期をはじめとした様々な医療場面で取り入れられています。
知っておきたいNBMの概念やその構成要素、リハビリ場面での実践方法などについてご紹介します。

NBMの概念やその構成要素、リハビリ場面での実践方法

NBMは患者さんの人生観を重視した医療

ここではまず、NBMとはどういった考え方かについてご紹介します。

●NBMは患者さんの物語を理解することから始まる

BMとは、Narrative Based Medicineの頭文字をとったもので、物語と対話に基づいた医療と解釈されます。

NBMとは、Narrative Based Medicineの頭文字をとったもので、物語と対話に基づいた医療と解釈されます。
NBMの概念は英国の医師らによって提唱されたのがはじまりであり、患者中心の医療を提供するという信念のもとに、世界中に広まりました。
近代医学では、生物学的な異常を「疾患」とみなして、多くの患者さんに効果的な治療が最適であると位置付けられます。
また、医療者側はエビデンスの高い治療が第一選択であると妄信し、エビデンスの乏しい治療は行うべきではないという風潮があります。
しかし、NBMの概念では、患者さんの身体または精神の異常を生物学的な解釈だけで捉えず、生活背景や考え方なども含めて「病い」であると考えます。
たとえば、慢性腎不全に対する透析治療は生命をつなぐために重要な治療ですが、すべての患者さんが前向きに理解しているわけではありません。
「透析をしたらもう長くないって聞いた」と患者さんが言った場合、医療者から「透析治療を検討しましょう」と告げられると、「死が近い」と宣告された気分になります。
これはその患者さんの人生や周りの環境の中で構築された考えであり、慢性腎臓病という疾患と人生(物語)を合わせて「病い」と捉える必要があります。

●EBMとNBMは対立するものではない

NBMは患者さんの物語に重きを置きますが、決して科学性の否定というものではなく、EBMと両立されることが重要です。
EBMでは、この治療は◯%の患者さんに効果的である、この治療で◯%予防できるなどのエビデンスを基盤に、より効果的な治療を決定することが求められます。
そのため、治療法を提示する際に十分な選択肢が与えられない可能性があります。
医療者から「この治療をしないと◯%で再発する、再発すれば◯%で命を落とす」ということだけを告げられると、「じゃあお願いします」という流れになるかもしれません。
EBMにおいて重要なのは、その治療行為のエビデンスを理解した上で、目の前の患者さんに当てはめることができるのかを吟味することです。
また、インターネットが普及した現在では、医療関係者以外の方もガイドラインや論文を簡単に見ることができます。
つまり、医療者と患者さんの知識の差は徐々に埋まりつつあるといってもよいでしょう。
お互いがエビデンスを共有し、患者さんの望む治療を選択していくことが重要であり、これはNBMと共通する部分であるといえます。

NBMを構成する要素

ここでは、NBMを構成する具体的なプロセスや、実践テクニックについてご紹介します。

●NBMは5つのプロセスで考えられる

NBM5つのプロセス

NBMでは、患者さんの「病い」を理解し、問題点を共有していくことが重要ですが、ただ話を聞けばいいというわけではありません。
問診から治療方針の決定までのプロセスは、以下のような5つの段階に分けることができます。

  • ◯患者さんの物語を聴取する
  • ◯患者さんの物語を共有する
  • ◯治療者の物語を組み立てる
  • ◯患者さんと治療者の物語をすり合わせる
  • ◯これまでの治療を振り返る

まずは、患者さんにとって「疾患」に関する体験や考えを聞き出し、こちらが理解した内容を口に出して確認することから始まります。
その後は、医学的知識やエビデンス、これまでの経験といった治療者側の物語を組み立てて、患者さんと共同して治療を考えることが大切です。
「治療効果が高いからやりましょう」ではなく、「治療効果が高いですが、ほかにはこういう治療もあります。どうですか?」と選択肢を提示するとよいでしょう。
最初から「先生におまかせします」という返答がある場合、情報の共有やお互いの物語の理解が不足しているといえます。

●NBMで重要な技法とは

物語を共有するためには、対話の中で工夫すべきポイントがあり、斎藤は以下の3つの技法が有用であると述べています。

◯物語面接法

NBMでは、「今日はどうされましたか?」や、「何かお困りのことはありますか?」などのオープンクエスチョンを用いることが重要です。
症状を聞く際にも、「そのときの様子を聞かせてもらっていいですか?」など、患者さんが自由に語れるような問いかけをするとよいでしょう。
臨床場面において、「質問と関係ない昔話になってきたな」と困った経験をされる方も多いと思いますが、その昔話の中にこそ患者さんの物語が隠れているのです。
治療者は、うなずきやあいづちなどをはさみながら、傾聴する姿勢を心がけることが大切です

◯質問技法

質問技法

患者さんの訴えを傾聴した後は、具体的に問題点を見つけ出していく作業が必要になります。
質問をする際には、以下の観点をもっておくことが大切です。

  1. 1)患者さんが、自分の病気や障害の原因についてどう考えているか
  2. 2)日常生活でどのように困っているのか
  3. 3)困った時にどう対処しているのか
  4. 4)将来なにを不安に感じているのか
  5. 5)これからどうなりたいのか

質問が過去に関する内容の場合は、「今の症状はどうですか?」など、現在と結び付けるような問いかけが重要になります。
治療方針を共有するためには、過去・現在を理解した上で未来について話し合うことで、治療者と患者さんの信頼関係が生まれるといえるでしょう。

◯物語のすり合わせ

面談の最後には、治療者と患者さんの物語をすり合わせていく必要があります。
ある1つの症状について考える場合、治療者側が考える原因と患者さんが考える原因が異なる場合があります。
「検査結果で異常がないから体は大丈夫です、精神的なものでしょう」などと言ってしまうと、患者さんは自分自身を否定されたと感じるでしょう。
患者さんの物語を理解した上で、治療の選択肢を提示し、お互いが納得した状態で進めていくことが大切です。

セラピストもNBMの概念を取り入れよう

これまで NBMの概念や技法についてご紹介してきましたが、ここでは実際のリハビリ場面での例を挙げてみます。

●その1 リハビリ計画書の説明時

リハビリテーション総合実施計画書(リハビリ計画書)は、リハビリの方針や今後の予定、ゴール設定などについて患者さんやご家族に説明するものです。
しかし、臨床が忙しいなか、ゆっくり説明できないと悩む方も多いのではないでしょうか。
前半部分の身体機能や基本動作項目に関しては客観的な事実を伝えるだけですが、後半の社会参加や今後の目標部分が重要になります。
筆者が心がけていることは、患者さんの自宅での役割や趣味などについてお聞きし、少しだけ昔話の流れにもっていくことです。
「若い頃はこんな仕事をしていた」、「昔はこんな趣味があった」などの情報が得られた後に、現在の生活について再確認します。
弱ってしまった自分をどう考えているのか、今後どのような生活を望んでいるのかを大切にし、機能改善・ADL向上など医療者としての目線をいったん外すようにしています。
患者さんの「病い」に関する情報(物語)を得た後、リハビリで期待できる効果や目標設定について説明することが大切です。
リハビリゴールの設定に関しても、患者さんの物語と医療者としての見解をすり合わせて、お互いに納得した状態からリハビリをスタートすることが望ましいです。

●その2 多職種参加型カンファレンス

多職種参加型カンファレンス

医療機関に勤めているセラピストにとって、退院支援のカンファレンスに参加する機会は多いと思います。
それぞれのスタッフが忙しい時間を割いて集まるため、効率よく進めたいと思うところですが、機械的な作業になっていないでしょうか?
「退院後は週◯回でデイを、週◯回で訪問介護を入れましょう」、「自力歩行は危ないので車椅子を使いましょう」など、医療者目線のみで考えるのはNGです。
患者さんが自分の身体機能や障害についてどう考えているか、援助の必要性についてどう感じているかなどを主体に話を進めることが大切です。
患者さんに意見を求めた際、昔話を始めるなど脱線すると思われることもありますが、それがその患者さんの物語であり、NBMで一番重視するべきことになります。
また、治療や他者の介入を拒む方に対しても、「このサービスが必要なのです」と治療者目線で説得するのではなく、なぜそのように考えるのかを理解することが大切です。

NBMは医療職としての基本姿勢

NBMとは、医療者側のエビデンスを押し付けずに患者さんの要望に答えるという一方向的なものではありません。
医療現場では、治療者側の考えと患者さんの考え(それぞれの物語)があり、お互いが理解し合って治療を進めていく必要があります。
エビデンスを重視する風潮にあっても、やはり医療の主体は患者さんであることを忘れてはいけません。
日々の臨床業務に追われている状況だからこそ、初心にかえるためにもNBMの概念を取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考:
斎藤清二:改訂版 医療におけるナラティブとエビデンス 対立から調和へ.遠見書房,東京,2016.

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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