整形外科・リハビリ病院が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

クリニック・治療院 OGメディック

  • 蔵本雄二

    公開日: 2019年09月30日
  • 患者さんのケア

頚椎症のリハビリは姿勢や生活指導が重要!評価や治療の方法を紹介

頚椎症は痺れや痛みを生じるだけでなく、脊髄に障害を受けると下肢の痙性が高まったり、膀胱直腸障害を生じることもあり、慎重な病態把握とそれに伴う評価や治療が重要になります。
また、根本的な原因は日常生活にある場合が多く、リハビリではその点を評価・改善することも必要です。
今回は頚椎症のリハビリについて、疾患や症状の解説から適切な評価、姿勢・生活指導の方法まで詳しく解説します。

頚椎症のリハビリは姿勢や生活指導が重要

頚椎症は障害部位で症状が違う!神経根症状と脊髄症状の違いを理解しよう

頚椎症は障害部位で症状が違う!神経根症状と脊髄症状の違いを理解しよう

頚椎症は加齢や不良姿勢や繰り返される過度な運動により、頚椎や頚椎の椎体間にある椎間板に変形や変性が起こることが原因で、頸や肩の痛みや運動障害、痺れや筋力低下といった神経症状を呈します。
これらの症状は障害部位によって大きく異なるため、まずは病態についてしっかり理解することで評価や治療に結び付けることが重要です。

●頚椎症性神経根症

頚椎症により神経根が障害される場合を「頚椎症性神経根症」と呼びます。
椎間孔からでた頚椎の神経根が障害されることで起こるため、それぞれの神経根の支配する領域で症状が現れます。

支配領域 運動麻痺 反射減弱 感覚鈍麻
C5 三角筋、上腕二頭筋 上腕二頭筋腱反射 肩から肘に外側
C6 上腕二頭筋、手関節背屈筋 腕橈骨筋腱反射 前腕外側から母指・示指
C7 上腕三頭筋 上腕三頭筋腱反射 中指
C8 手指屈筋群 環指・小指

痛みは頚部から背部、肩、上腕、手指と広い範囲に放散痛として現れます。
また、脊髄症状と違い痙性麻痺は見られず、筋緊張は亢進しませんが、脊髄症と合併している場合もあるため注意が必要です。

●頚椎症性脊髄症

頚椎の変形や椎間板の変性の結果として、頸髄が障害される場合を「頚椎症性脊髄症」と呼びます。
上肢にはmyelopathy handと呼ばれる手指の痙性麻痺の症状が見られます。

myelopathy handの特徴
・手指の病的反射
・手指腱反射亢進
・手指の巧緻性低下
・手指ADL低下(ボタンや箸の使用が不自由)
・10秒テスト陽性(グーパーの運動が10秒で20回以下)

脊髄が障害されるので下肢にも症状が現れ、痙性麻痺や痺れ、感覚障害(触覚や痛覚の鈍麻)が見られます。
また、重度の場合は膀胱直腸障害が見られ、ADLが大きく障害されます。

●神経根症状と脊髄症状を理解して評価や治療に生かす

リハビリ職は診断をすることはできませんが、評価や治療に生かしたり、医師の診断の補助をして連携を図ったりするためには、しっかりと病態を理解する必要があります。
また、複数の神経根が障害されたり、神経根と脊髄の両方が障害される場合もあることを念頭に入れて病態の理解を深めるようにしましょう。

適切な評価は治療に直結!問診や仕事での姿勢をしっかりと

症状がさまざまな頚椎症の治療には、細かく障害の程度や身体機能を評価する必要があります。
さらに、頚椎症の原因となっている頚椎や椎間板の変形や変性を防ぐためには、姿勢の評価と不良姿勢を引き起こす普段の生活を細かく聞き取ることが重要です。

●治療の選択に繋がる評価方法

疼痛やROMの評価、筋力など身体機能評価により、炎症症状の有無や症状が神経・血管由来なのか、筋肉や関節由来なのかなどを判別して、治療の選択をすることができます。

1.疼痛

安静時痛が強い場合は急性期である可能性を考慮して、医師と連携を取り無理な運動を避けたり、装具など安静に必要な処置の指示を仰ぐ必要があります。
また、運動時痛がある場合は、関節がつまるような関節痛なのか、筋肉の伸長痛なのかを判断します。

2.関節可動域

他動的に可動域を測定することによる症状の悪化に注意する必要があります。
どの方向で関節運動が制限されているか確認することで、炎症症状の有無や制限因子などを推測することができます。

3.筋力

神経根症状がある場合、運動麻痺による筋力低下が神経の支配領域に見られます。
また、下肢や体幹などにも明らかな筋力低下が見られる場合は、脊髄症状が疑われます。

4.感覚

痺れの有無は頚椎症で神経根や脊髄で障害があるかを判定する重要な判断材料になります。
神経根症状の場合は、支配領域に合わせて感覚低下が見られます。
脊髄症状では下肢の感覚低下も見られます。

5.反射

神経根症状であれば支配領域に合わせた腱反射の減弱が見られます。
脊髄症状であれば病的反射や腱反射の亢進が見られます。

6.整形外科的検査

Spurling testやJackson testによる神経根症状の有無が判別できます。
また、Adson testやEden test、Allen testを実施することで胸郭出口症候群による神経症状や頸肩腕症候群による血流障害などとの鑑別ができます。

※胸郭出口症候群は「胸郭出口症候群のリハビリとは?理学療法士・作業療法士が知りたい方法と注意点を解説」の記事で解説しています。

7.筋緊張

脊髄症状の場合は痙性による筋緊張の亢進が見られます。

●詳細な問診と姿勢評価で根本的な原因を把握

詳細な問診をすることで、生活の中で頚椎にストレスがかかる動作や姿勢を続けていないかを把握することが重要です。
そして、痛みに注意しながら実際の動作や姿勢をしてもらい、チェックします。

その際、頚部に負担がかかるような姿勢や動作をしている場合は、作業姿勢や動作の改善をはかります。

姿勢保持の方法を助言!良い姿勢を取るためのトレーニング方法の紹介

神経症状や関節の圧迫に対しては、医師の指示のもとで頚椎装具の着用や薬物療法に加えて牽引などの物理療法を実施することになります。
また、低下した筋力に対するトレーニングや緊張した筋肉へのストレッチやリラクセーションも実施されます。
これらの治療に加えてリハビリとして重要なのは、姿勢や生活指導です。

●再発や症状悪化の予防には姿勢改善や生活指導が必須

いくらほかの治療で症状の緩和ができても、頚椎症の原因を招いている不良姿勢や生活習慣を改善しなければ、頚椎症の再発や症状の悪化を引き起こしてしまいます。

●作業姿勢の改善例

作業姿勢の改善例

頚部への負担を増やす作業として、デスクワークとりわけパソコンを使用する姿勢があります。
ディスプレイや椅子、デスクの高さにより頭部が前に突き出して頚椎の前弯や胸椎の後弯が強まる姿勢になりやすいです。
頚部、背部筋の緊張が高まり、頚椎や周辺の血管・神経へ負担がかかり、結果として頚椎症につながります。
そこで、以下のような工夫で作業姿勢の改善を図ります。

  • ○ディスプレイを目線の高さに合わせる
  • ○書類をキーボードの手前に置かない
  • ○椅子の高さを調整する(股関節・膝関節・肘関節が90°になるように)
  • ○足底を地面に接地させる(椅子の高さ調整で難しければ足台を活用)

また、骨盤の後傾による胸腰椎後弯の増強を防いで、正しい姿勢を作るために腰椎部に椅子のバックサポートが当たるようにしたり、クッションを挟むなども有効な工夫です。
ほかにも洗濯物が過剰に高い位置にあり、何度も頚部を伸展させる必要があったり、内職などで常に頚部を屈曲位で保つなどでも頚椎椎間関節や椎間板へのストレスが繰り返され、頚椎の変形や椎間板の変性につながります。
洗濯物干しを目線の高さに合わせる、作業台や椅子の高さを調整するなど作業姿勢に対するアドバイスをしましょう。

●姿勢改善のためのトレーニング方法

姿勢改善のためのトレーニングを臥位、座位、立位に分けて解説します。

○臥位でのトレーニング

臥位でのトレーニング

臥位では顎を引いた状態を保ちながら後頭部で両手を組み、胸郭を広げるように肘を床に近づけていきます。
頚椎と胸椎の適切な弯曲を保つ練習です。
腰椎の前弯が強まるのを防ぐために、腹部を引いて収縮させることも重要です。

○座位でのトレーニング

臥位で紹介した姿勢を座位でも実施します。
そして、顎を引くのに合わせて関節運動が生じないように手で後頭部を支えます。
そうすることで、良姿勢の保持とともに頚部の等尺性収縮をして頚部周囲の筋力向上も目指します。

○立位でのトレーニング

立位でのトレーニング

壁に背中をつけてもたれるような姿勢をとります。
両手をあげて腹部に力を入れながら天井へ引っ張られるように力を入れます。
そうすることで、頚椎から腰椎にかけて良姿勢を保つようなトレーニングになります。

頚椎症のリハビリでは頚部だけでなく姿勢を考慮して対応しよう

頚椎症のリハビリでは、症状によって大きく病態が異なるため注意深く評価・治療をしながら、重度の脊髄症状が見られる場合は迅速に医師と連携を取るようにしましょう。
また、リハビリで求められるのは、ただ症状を和らげるだけでなく、再発を予防して仕事や趣味などの生きがいを続けられるようにすることです。
そのため、頚椎症や症状の悪化の原因となる姿勢や生活習慣を考慮して、リハビリを提供するようにしましょう。

  • 執筆者

    蔵本雄二

  • 整形外科クリニックや介護保険施設などで理学療法として従事してきました。
    現在は県下でも有名な地域包括ケアシステムを実践している法人で理学療法士として勤務しています。
    そのため、施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
    医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
    保有資格:理学療法士、介護支援専門員、呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)