整形外科・リハビリ病院が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

クリニック・治療院 OGメディック

血液データシリーズ第2弾!血液ガスから呼吸状態を評価しよう

リハビリ専門職が患者さんの評価を行う際、採血などの侵襲的な手段を用いることはできません。
しかし、患者さんの病態を把握するため、またリハビリ介入方法を検討するために、血液データを読み解くことは大切です。
前回の記事では腎機能についてご紹介しましたが、第2弾の本記事では血液ガスデータについて解説します。

血液ガスデータについて解説

血液ガスで体内の水素イオン濃度を評価する

血液ガスで体内の水素イオン濃度を評価する

血液ガスと呼ばれる検査項目は、急性期での呼吸管理を考える場合非常に重要です。
ここでは、血液ガスの基本についておさらいします。

●酸と塩基、ヒトが生きるためには適切な水素イオン濃度が必要

水素イオン濃度(pH)とは、酸(H+)と塩基(OH)のバランスで表されるもので、血液中のpHは7.35〜7.45が正常範囲とされています。
そのため、いったんバランスが崩れると体調に異変をきたし、正常な生体活動ができなくなります。
ただし、炭酸飲料や酸っぱい食べ物を食べたから血液中のpHが酸性になることはなく、多くの場合、血液中のH+を排泄できない場合に問題となります。
体内が酸性の状態(pHが7.35よりも低値)をアシデミア、塩基性(7.45よりも高値)の場合をアルカレミアと呼びます
アシドーシスやアルカローシスという言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これらは酸性(塩基性)に傾きつつある状態を指し、いくつかのパターンに分かれます。
つまり、血液ガスデータは、血液中のpHの異常とその原因について評価をする、非常に重要な検査項目であるといえます。

●血液ガスはどのような場合に検査(採血)されるか

医療機関に勤務しているリハビリ専門職の中で、血液検査の結果を見たことがない方はほとんどいないと思いますが、血液ガスについてはどうでしょうか。
体内では、細胞の活動によって常に酸が産生されており、定期的に排出する必要があります。
この排出に重要な役割を担っているのが肺と腎臓であり、特に肺は即座に酸を排出することができます。
そのため、呼吸器疾患が疑われる場合、意識レベルが低下している場合など、その原因を探るために血液ガスデータを評価します。
「担当患者さんの呼吸音がおかしい」、「熱が上がってて痰の量が多い」などの変化を確認した場合、採血で血液ガスが評価されていないか確認するとよいでしょう

血液ガスで押さえておきたい評価項目

ここでは、血液ガスデータを見る際に押さえておきたい項目について解説します。

●まずは基本的な4項目を押さえておこう

押さえておきたい基本項目は以下の4つになります。

基準値 意味 異常値を示す例
PaO2 60mmHg以上 血液中の酸素分圧 低値:低酸素血症
PaCO2 35~45mmHg 血液中の二酸化炭素分圧 高値:低換気
HCO3 21~28mmol/L 血液中の重炭酸イオン 低値:代謝性アシドーシス
高値:呼吸性アシドーシスの緩衝作用
pH 7.35~7.45 血液中の水素イオン濃度 呼吸性および代謝性のアシデミア、アルカレミア

まずはこの4項目をチェックして、実際の呼吸状態と合わせて評価することが重要です。
たとえば、PaO2が60mmHg以下でPaCO2が45mmHg以上の場合はⅡ型呼吸不全の状態であり、低換気により肺胞内のCO2分圧が上昇し、O2が低くなった可能性があります。
この場合、低換気となる原因(長期臥床や胸水貯留による無気肺など)を考え、それを改善するために離床が有効になるかもしれません。
逆に、CO2が上昇していないⅠ型呼吸不全の場合、肺炎や肺水腫などが存在するのであれば、離床で酸素化を改善することは難しいでしょう。
このように、画像所見や目の前の患者さんの呼吸状態だけでなく、血液ガスデータを合わせて解釈することで、リハビリのプログラム立案につながります。

●酸塩基平衡とは?生体の緩衝作用について理解しよう

酸塩基平衡とは?生体の緩衝作用について理解しよう

生理学の授業で酸塩基平衡というワードを聞いたことがあると思いますが、実臨床においてどうつながるかがわからない新人セラピストも多いのではないでしょうか。
酸塩基平衡とは、簡単に言えば体内の酸と塩基のバランスを取るためのシステムのことであり、酸をいかにして体外に排出するかがポイントになります。
化学式は苦手という方もいるかもしれませんが、酸塩基平衡を考える場合、以下の化学式を理解しておくことが重要です。
CO2+H2O⇄H++HCO3
この化学式では、血液中における酸の移動と排出を表しています。
体内で産生された酸の排出経路は、CO2となって肺から排出する場合(呼吸性)と、腎臓から排出する場合(代謝性)の2通りがあります
低換気による呼吸性アシドーシスの場合、呼吸での排出が困難となるため、その代わりに腎臓からの排出が必要となります
このとき、体内の酸塩基のバランスを保つために活躍するのがHCO3であり、腎機能が正常であればHCO3が上昇し、pHを一定に保とうと努力します。
一方、腎臓の障害や乳酸の蓄積などに起因する代謝性アシドーシスの場合では、呼吸数や換気量をアップして、CO2として体外に排出しようという働きが起こります。
つまり、代謝性アシドーシスの場合、呼吸数が多く苦しそうに見えますが、実は体内のバランスを保つために肺が頑張っているという解釈ができます。
「呼吸が苦しそう」と感じた場合、血液ガスデータを参考にすることによってその原因や介入方法を評価することができるので、血液ガスのチェックは重要であるといえます。

酸塩基平衡から考える、リハビリ介入のポイント

酸塩基平衡から考える、リハビリ介入のポイント

血液ガスの基本項目と酸塩基平衡を押さえることができると、リハビリの適応や実施プログラムが見えてきます。
ここでは、呼吸性と代謝性のアシドーシスを例に挙げ、プログラム立案までの流れを考えてみましょう。

●呼吸性アシドーシスは離床で改善できる?

呼吸性アシドーシスの場合、低換気が原因となっていることが多く、肺炎など原疾患の治療と並行して、換気機能をサポートする必要があります。
代表例として人工呼吸器による治療が挙げられますが、呼吸器管理中でも臥床状態が続くと肺底部の拡張が妨げられて無気肺になることがあります
そのため、人工呼吸器が装着されていても、座位などの離床練習を進めることが重要となります。
経験の浅いセラピストでは、「人工呼吸器がついているからやめとこう」、「リハビリで逆に悪くなったらどうしよう」と不安になるかもしれません。
しかし、血液ガスデータで呼吸性アシドーシスと判断できる、レントゲンで無気肺がある、原疾患が安定しているなどの条件であれば、むしろリハビリで改善が望めます

●代謝性アシドーシスでは原因疾患の治療が優先?

代謝性アシドーシスは、腎臓から酸の排出が障害されている場合や、過度に酸が産生されている場合などが原因として挙げられます。
たとえば、Ⅰ型糖尿病による糖尿病性ケトアシドーシスや、乳酸アシドーシスなどが挙げられます。
乳酸が蓄積する病態はいくつかありますが、敗血症や心不全による乳酸アシドーシスは臨床で遭遇することが多いかもしれません。
心臓の拍出量が減少し、末梢への血流が低下すると、組織では無酸素性のエネルギー代謝が発生します
これは解糖系とよばれるエネルギー代謝であり、エネルギー(ATP)を産生した後に乳酸を発生します。
体内で酸の産生が多くなると、腎臓の排出では対応できなくなるため、呼吸(換気)によって排出しようとします。
この場合、前述した化学式では左から右への反応が強まる(HCO3が消費される)ことで、CO2として排出されます
その結果、呼吸数や一回換気量が多くなり、一見すると呼吸が苦しそうに見えるでしょう。
患者さんを見て「なんか息が苦しそう」と感じたとき、血液ガスでHCO3が低い、CO2が低い状態であれば、なんとか酸を排出するために頑張っている状態といえます
この状態では、心不全による末梢循環障害が原因であるため、離床を進めて呼吸状態を改善することは難しいです
リハビリではベッド上での可動域訓練などを継続し、血圧など循環動態が安定しているか、pHやHCO3が正常値に戻っているかを確認していくのがよいでしょう。

急性期での呼吸リハビリでは、血液データの評価は必須項目!

前述した例のように、呼吸性アシドーシスと代謝性アシドーシスでは、治療方針やリハビリのプログラムも異なります。
「呼吸数が多い」というアセスメントだけでは、その原因を理解することが難しく、いつリハビリを進めていいのかの判断もできません
医師だけでなくリハビリ専門職にとっても、血液ガスデータは重要な情報を提供してくれる検査項目です。
特に、急性期において呼吸や循環を専門にしたいと思う方にとっては、血液ガスデータの理解は必須であるといえるでしょう。
より深いアセスメントができるように、また安全なリハビリが提供できるように、まずは血液ガスデータを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)