急性期管理や手術後体内に留置されたカテーテルや点滴はどう取り扱う?早期離床のためのリハビリの際の注意点
早期離床の重要性や急性期のリハビリのエビデンスの確立により、さまざまな疾患や術後において長期臥床を防ぐために、早期からのリハビリがすすめられています。
しかし急性期においては、患者さんの体内には点滴やカテーテルなどがつながれていることが多く、安全管理の面からちゅうちょしてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。。
今回は点滴やカテーテルがある場合のリハビリの際の注意点についてお話ししましょう。
目次
点滴が必要な患者さんのリハビリでの注意点。薬剤の確認と安定した支柱台を選ぼう
急性期治療では投薬のための点滴やカテーテル、心電図などが体内に留置されていることが多く、リハビリを行う際には取り扱いに注意する必要があります。
●歩行訓練の際の点滴台は安定したものを選ぼう。点滴の薬剤もリハビリへの影響がないか確認を
点滴を受けている患者さんの歩行訓練をする際、まずは点滴台の安定性、コマの滑りなどを確認しましょう。
点滴台の脚の部分が安定したもの、かつ手すりのハンドルがついているものを選べば患者さん、リハビリスタッフ双方が扱いやすくていいでしょう。
急性期に使用する薬剤の中には、ノルアドレナリンなどの血圧に関係するものものがないか事前にチェックしましょう。
ノルアドレナリンなどは患者さんの体重に比例して投与量が決定され、その投与量により、リハビリの安静度も影響を受けます。
担当の医師や看護師と連携して、リハビリの内容、安静度などを決定しましょう。
●カテーテルが留置されている場合には、挿入部位も確認しておこう
急性期の患者さんの中には、全身状態の管理のために頸部や肘、大腿鼠径部にカテーテルが留置されているケースもあります。
カテーテルの挿入部はドレッシング材などで覆われていますが、カテーテルにつながれた点滴やラインが引っかからないよう注意しましょう。
鼠径部に挿入されている場合には、起き上がりや坐位などでカテーテルが折れ曲がらないか、挿入部位などに血腫ができていないかなどに注意を配ればリハビリが全くできないというわけではありません。
体内に留置されたドレナージは?気をつけたいリハビリでの注意点とリスク管理
術後や治療の一環として体内にドレナージチューブが留置されている方も中にはいらっしゃいます。
そのような患者さんのリハビリの際にはどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
●術後など腹腔内に留置されたドレナージチューブがある患者さんの場合
急性期や術後の患者さんの場合、ドレナージチューブが鼻腔、頭部、腹腔内に留置され、排液を回収するドレーンバッグが付いている場合があります。
そのようなときには、リハビリに際してどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
1)頭部にドレーンチューブが留置されている場合
頭蓋内に留置されている場合には、頭蓋内圧を保つためにドレーンバッグの位置と頭部の位置を調整する必要があります。
担当の医師や看護師と相談し、安静度の確認と同時にドレナージをクランプするのか確認してから行いましょう。
2)鼻腔や腹腔内にドレナージチューブが留置されている場合
ドレナージチューブが引き抜けたりしないようにしっかりと固定し、排液バッグも点滴台に吊り下げるなどしましょう。
●胸腔内に留置されたドレナージチューブがある患者さんの場合
ほかの部位とは異なり、胸腔内は陰圧を保つ必要があるため、胸腔内にドレーンチューブが挿入されている場合には、胸腔トロッカーなどに接続され持続吸引されている場合があります。
このような場合には歩行訓練の前にウォーターシールにしてもよいのか、エアーリークがないのか確認してから行いましょう。
持続吸引器からウォーターシールにできない場合には、ベッドサイドでの立位訓練やドレーンチューブが届く範囲にとどめましょう。
留置カテーテルも場所や種類によりリハビリも行える!その際、注意するべきことは?
点滴やドレナージのほかにも治療に必要な経腸栄養用のチューブや血液浄化用のカテーテルなどが挿入されている可能性もあります。
これらが挿入されている場合の注意点をご紹介しましょう。
●経腸栄養用のチューブなどもしっかりと固定して、消化時間を考慮すればリハビリは行えます
経腸栄養用のチューブが鼻や胃ろうから挿入されている場合、引っかかって抜けたりしないように、リハビリを行う前に確認しましょう。
挿入部分である鼻孔での固定をしっかりと行い、胃ろうの場合にはボタンを閉じ、チューブを固定してからリハビリを始めましょう。
またチューブ先端は重みがあるため、まとめて持つ、耳にかけて固定するなどリスク管理にも気をつける必要があります。
また経腸栄養が行われる時間、消化に必要な時間を考慮し、リハビリの日程を考慮しましょう。
●血液浄化用カテーテルもその挿入場所によりリハビリも可能に!
急性期においては人工透析が一時的または継続的に必要な場合もあります。
血液浄化用のカテーテルは鼠径部または頚部に留置されることが多く、特に鼠径部に留置されている場合は坐位になると、カテーテルチューブが折れてしまうために、股関節の屈曲角度が制限されてしまいます。
筆者も同様の経験がありますが、鼠径部にカテーテルが留置されている場合には離床訓練をちゅうちょしてしまいがちです。
その場合、股関節を屈曲しすぎない範囲でのギャッチアップ坐位、体位変換や日常生活動作訓練であれば行うことが可能です。
その際には、血液浄化用カテーテルは内径が太いため挿入部に出血がないか、持続的血液濾過透析中であれば脱血不良などの作動に問題がないかを確認しながら、主治医と相談し他職種とも連携してリハビリを進めましょう。
体内に留置された点滴やドレーンチューブ、カテーテルの取り扱いと注意点についてよく知り、早期離床を促そう!
ご紹介したように、点滴やドレーンチューブ、カテーテルなどが挿入されている場合、リハビリを行う上でその取り扱いやリスク管理に注意を払う必要があります。
またこれらが体内に留置されている状態では、患者さん自ら日常生活動作を進んで行うことは大変困難です。
長期臥床を避けるために点滴やドレーンチューブ、カテーテルなどのリスク管理を含めた取り扱いについてよく知り、早期離床を促しましょう。
参考:
一般社団法人 日本集中治療医学会 編 集中治療における早期リハビリテーション.
https://www.jsicm.org/pdf/soki_riha_1805.pdf (2019年12月17日引用)
公益財団法人 日本医療機能評価機構 胸腔ドレーンバッグの管理に関連した事例 医療事故情報収集等事業 第50回報告書.
http://www.med-safe.jp/pdf/report_2017_2_T002.pdf(2019年12月17日引用)
中村智之、西田修:急性血液浄化中の栄養療法. 日本静脈経腸栄養学会雑誌31(3):821-826, 2016.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/31/3/31_821/_pdf(2019年12月17日引用)
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執筆者
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1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士