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急性期のセラピストが知っておきたい、敗血症のリハビリとは?

急性期に勤務するセラピストは、肺炎や尿路感染など感染症患者さんのリハビリを担当する機会が多いです。
感染症の中でも、敗血症と呼ばれる病態は生命の危機に瀕することが多く、リハビリも慎重に進める必要があります。
筆者のICU専従経験を基に、敗血症のリハビリで注意する点をお伝えします。

ICUにおける敗血症のリハビリ

敗血症とは、感染症から起こる全身の臓器障害

敗血症とは、感染症から起こる全身の臓器障害

まずは、敗血症の病態や全身状態に及ぼす影響などについて解説していきます。

●敗血症の正体は、重症感染症による臓器障害

日本集中治療医学会が作成したガイドラインによると、「敗血症とは、感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされた状態」と定義されています。
従来では、敗血症とは菌の感染によって全身の炎症反応をきたした状態など、感染と全身の炎症にフォーカスが当たっていました。
しかし、全身の炎症が見られない患者さんがいること、敗血症と重篤な臓器障害を結びつけることが必要であるという理由から、上記のように定義されました。
また、「敗血症に急性の循環不全をともない、細胞障害および代謝障害が重度となる状態」は敗血症性ショックと定義されました。
つまり、敗血症とは感染症によって多臓器の障害が起こった状態であり、重度の場合は急性の循環障害が発生する、生命に関わる病態であるといえます。

●まずは感染コントロール、集中治療室での管理とリハビリが重要

敗血症の治療に関しては、まずは原因となる感染症のコントロールが重要になります。
抗菌薬の投与をはじめ、感染源が腹腔内にあるのであればドレナージや外科手術などが行われます。
特に、敗血症性ショックの状態であれば、昇圧剤の投与や循環動態の管理が必要となるため、ICUでの管理になることが多いです。
また、全身状態の管理が行われるなか、早期離床を目的としたリハビリも重要視されています。
前述した敗血症ガイドライン2016では、ICU-AWやPICSと呼ばれる全身の筋力低下や精神活動低下を予防するために、リハビリの介入が必要であるとされています。
しかし、明確に定められた開始基準や中止基準などはなく、集中治療領域におけるリハビリに準じて進めていくことが重要になります。
そのため、集中治療現場でしっかりとトレーニングを積んだセラピストや看護師が行うことが望ましいです。

敗血症のリハビリでは全身状態の把握が必須

敗血症のリハビリでは全身状態の把握が必須

敗血症では臓器障害によってさまざまな症状が起こりますが、リハビリを開始するに当たって注意したい点を挙げていきます。

●運動よりも安静?まずは臓器の血流確保が第一!

急性期、特に集中治療領域では安静臥床による廃用症候群が問題になります。
早期離床というワードが定着してきたように、可能な限り早く体を動かしていくことが大切ですが、敗血症の場合は注意が必要です。
敗血症では、感染による影響で血管が拡張して血圧が低下しますが(敗血症性ショック)、各種臓器の血流不足が問題となります。
腎臓の場合は急性腎障害をはじめ、肝不全や消化管機能の低下など全身へのダメージが危惧される状態です。
学生時代に学んだ記憶があると思いますが、運動により筋肉への血流が増加すると、各種臓器への血流が低下します(血流の再分配)。
ただでさえ臓器がダメージを受けている時期なので、運動によって追い討ちをかけるようなことをしてはいけません。
臓器障害の程度を評価する方法は後述しますが、この時期にはベッド上の関節可動域運動や、ポジショニングなどにとどめておくべきでしょう。

●筋肉の血流量が不足している場合、負荷量は慎重に設定する

前述したように、敗血症性ショックになると各臓器への血流不全が問題となります。
全身の筋肉も例外ではなく、血流不足(=酸素不足)になっている状態ですので、運動時には無酸素性の代謝が優位になります。
無酸素性の代謝では、解糖系によるエネルギー産生となるため乳酸が発生しますが、この状態で運動を行うことはおすすめできません。
敗血症性ショックの状態で、血液検査データの乳酸の値が上昇している場合、運動強度は慎重に設定する必要があります
患者さんは疲労しやすい状態であるため、まずは四肢の自動運動から開始し、筋トレも軽い抵抗をかけるくらいで様子を見るのがよいでしょう。
呼吸数が多い、分時換気量(1分間の換気量)が多い場合、酸性の体を中和するために換気が亢進している可能性もあるため、運動時に呼吸状態をチェックすることも重要です。

急性期セラピストが知っておきたい敗血症の評価

ここでは、集中治療領域における敗血症の評価をご紹介したいと思います。

●昇圧剤の投与量は?γ計算を理解しよう

敗血症性ショックの状態では、多くの場合昇圧剤の投与が行われますが、投与量について理解しておくことが大切です。
輸液ポンプやシリンジポンプで薬剤が投与される場合、画面表示には◯ml/h(1時間に◯ml投与する)という表示があります。
しかし、患者さんの体格や薬剤の濃度によって体に及ぼす影響が異なるため、昇圧剤などの薬剤はこれらを加味して計算する必要があります。
この計算式はγ(ガンマ)計算と呼ばれているもので、(薬剤の濃度×投与速度)/(0.06×体重)で表されます。

ノルアドレナリンの50mlシリンジを例に挙げると、47mlの生理食塩水と3mlの薬剤から構成されます。
ノルアドレナリンは1ml中に1mgの薬剤が含まれているため、50ml中の濃度は3÷50で0.06となります。
体重50kgの方に4ml/hの設定で投与する場合、0.06×4/0.06×50となり、これを計算すると0.08γになります。

●臓器障害の程度はSOFAスコアで評価しよう

敗血症では、血圧(循環動態)の評価と並んで、各臓器の評価が必要になり、主にSOFAスコアという評価法が用いられます。
SOFAスコアでは、腎臓、肝臓、循環、呼吸、凝固能、意識レベルの6項目をそれぞれ0〜4点で表し、合計点を0〜24点で評価します。

0点 1点 2点 3点 4点
呼吸器
(PaO2/FiO2sub>)
≧400 <400 <300 <200
+呼吸補助
<100
+呼吸補助
凝固能
(血小板×103/μL)
≧150 <150 <100 <50 <20
肝臓
(ビリルビンmg/dL)
<1.2 1.2-1.9 2.0-5.9 6-11.9 >12
循環
(平均血圧mmHgか昇圧剤γ)
平均血圧≧70mmHg 平均血圧<70mmHg ドパミンまたはドブタミンが<5γ ドパミンかドブタミンが5.1-15γ
またはアドレナリンかノルアドレナリンが≦0.1γ
ドパミンかドブタミンが≻15γ
またはアドレナリンかノルアドレナリンが≧0.1γ
中枢神経
(GCS)
15 13-14 10-12 6-9 <6
腎臓
(クレアチニンmg/dLまたは尿量ml/日)
<1.2 1.2-1.9 2.0-3.4 3.5-4.9
<500
>5
<200

例として、「昨日は合計15点だったけど今日は18点だ、特に腎臓の障害が進んでいるな」と解釈した場合、リハビリの負荷量アップは避けるべきでしょう。
また、循環の評価では前述したγ計算も出てくるため、計算式は覚えておきたいところです。

敗血症では臓器障害の評価を基にリハビリを進めよう

敗血症のリハビリにおいては、バイタル測定など普段のリスク管理だけでなく、全身状態の変化を理解してリハビリを進める必要があります。
また、ベッドサイドモニターに表示される数値だけでなく、昇圧剤の投与量や臓器の状態について経時的な変化を捉えることが重要になります。
集中治療領域では慣れない言葉や数字などが多いですが、1つひとつ理解することによって自身のリスク管理能力がアップします。
骨や関節などの運動器を含め、全身状態の評価に精通することが、急性期で活躍するセラピストへの第一歩となるでしょう。

参考:
日本集中治療医学会.日本版敗血症診療ガイドライン2016.(2020年1月20日引用)

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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