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クリニック・治療院 OGメディック

  • 桑原

    公開日: 2020年02月28日
  • 患者さんのケア

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リハビリスタッフがこれだけは知っておきたい心エコーの検査所見の読み方!

心臓や循環器疾患、手術の前などには必ずと言ってよいほど検査の対象となるのが心臓エコー検査です。
リハビリスタッフにとっては耳慣れない略語や所見などが書かれたこの心エコー検査の結果は、一体どのようにして読めばいいのでしょうか。
リハビリスタッフが最低限知っておきたい、心エコーの検査所見について今回はお話しすることにしましょう。

心エコーの検査所見 その読み方を解説

心エコー検査結果の読み方。検査結果でわかるのは心臓の機能状態や弁膜症の有無!

心エコー検査結果の読み方。検査結果でわかるのは心臓の機能状態や弁膜症の有無

超音波検査の一つである心エコー検査では、心臓の様子や心臓の弁に関する機能のほかに、血管の状態も判断することができます。
心エコー検査の利点も含めて、検査によってどのようなことがわかるのかを解説しましょう。

●心エコー検査は、体に負担をあまりかけず心臓の動きについて検査が可能

心エコー検査は、プローブと呼ばれる検査機器のヘッドに肌との隙間をなくすためのジェルを塗って、皮膚の上から当てることで体の中の内部構造をモニターに映し出すことができる検査機器です。
またカラードプラ法を用いると、血液の流れる速度により色を変えて表示することができるので、心臓の中の血液の流れを観察することが可能です。
また心臓の大きさ、構造や心筋の動き、心臓の弁の動き、逆流があるかなどを観察することもできます。

●心エコー検査は、心臓の拍出量やその機能性、弁膜症や血管の病気がわかる

心エコー検査では、心臓から全身へ送られる血液の拍出量、心筋に異常な動きはないか、心臓の弁の動きや逆流の有無、大動脈の解離なども調べることが可能です。
たとえば、

  • ○心臓の筋肉の異常な動きや、筋肉の働きの弱い部分がある→心筋症や心筋梗塞
  • ○大動脈の血管が膨れている、血管の内壁に血流が見られる→大動脈解離
  • ○心臓の弁の動きが悪い、閉まらない、逆流がある、→心臓弁膜症
  • ○心筋の厚さ、心室の容積、心臓の大きさ→心肥大や心不全
  • ○心臓の壁に穴があり、逆流を生じる→心房または心室中隔欠損

などといった、検査結果に合わせた臨床診断の一助となり、ほかの検査と組み合わせて診断にいたります。
心臓の血液逆流の大きさ、弁の入り口の大きさなどで弁膜症の重症度が判定され、手術適応の判断材料となることもあります。
そのほか心嚢液の貯留も心エコー検査で見ることができます。

心エコー検査で見かける略語や検査の正常値を解説します

心エコー検査で見かける略語や検査の正常値を解説します

心エコー検査はリハビリスタッフにとってはなじみの少ない循環器系の検査であり、出現する検査値や、略語なども聞き覚えのないものが多くて苦手という方も多いのではないでしょうか。
ここではリハビリスタッフが知っておきたい、検査の正常値と略語についてご紹介しましょう。

●これだけは知っておきたい!心エコー検査の正常値と異常値が示す心機能

心エコー検査の所見を読む上で重要となるのが、その正常値と異常値、またその異常値が示す心機能です。
いくつかの心エコー検査の所見について解説しましょう。

心機能 左室駆出率(LVEF):正常値>55%→収縮能異常、中等度<39%、重症<29%
左室内径短縮率(%FS):正常値30~50%→30%以下で収縮機能異常
左房径(LAD):40mm以下→40mmを超えると心房細動になりやすい
IVC(下大静脈):<17mm→右心系の負荷が考えられる
弁膜症(大動脈弁) 最高血流速度(vmax):2.6~2.9m/s 重症 ≧4m/s
平均圧較差(ΔP):軽症<20mmHg 重症≧40mmHg
大動脈弁弁口面積(AVA):軽症>1.5 重症<1.0mm
ほかにも弁の石灰化や左室の肥大なども合わせて見る必要がある
弁膜症(僧房弁) 弁口面積(cm2):軽症<0.2 重症0.3~0.39
逆流率(RF%):軽症<30% 重症≧50%
僧帽弁逆流量(RVol):軽症<30ml 重症≧60ml(低流量ではもっと少なくなる場合も)
その他 中隔欠損症や心房もしくは心室内の血栓、疣贅(vegetation:ゆうぜい)、大動脈解離についてはその他もしくはコメント欄を参考に

心エコー所見によりリハビリに対するリスク管理も万全に行うことができます。

●これだけは知っておこう!この英語の頭文字が示すものは?心エコー検査でよく見かける略語

心エコー検査の所見の中には、英語の略語がしばしば登場します。
いくつかは先の項でもご紹介しましたが、一部ですがほかの略語についても紹介しましょう。

  • IE:感染性心内膜炎
  • MR:僧帽弁閉鎖不全
  • MS:僧帽弁狭窄
  • AR:大動脈弁閉鎖不全
  • AS:大動脈弁狭窄
  • Ao:大動脈
  • CCA:総頸動脈
  • CO:心拍出量
  • DCM:拡張型心筋症
  • HCM:肥大型心筋症
  • LVDs:左室収縮期末径
  • LVDd:左室拡張期末径
  • SV:一回拍出量
  • PM:乳頭筋→MRの場合にはこの乳頭筋の断裂などが見られることもあります。
  • UCG:心エコー図

これらの略語は、心エコー検査や心エコー所見に関連したものにおいてよく聞かれます。
略語の意味を知っておくことで、検査値や疾患、またはどの部位を示しているのか把握することができ、検査所見を理解するのに役立ちます。

心エコー検査結果はリハビリにどのような影響を与えるのか

では心エコー検査値を実際の臨床場面ではどのように理解し、リハビリをする際に気をつければいいのでしょうか。

●心エコー検査の結果次第では運動制限が必要となることも

心エコー検査の結果で、大動脈狭窄や僧帽弁閉鎖不全、または心不全などと診断された場合には、息切れや心拍数、血圧などに注意しながら運動療法を行う必要が生じます。
自覚症状がない場合もあるので、さまざまなバイタルサインに注意しましょう。
大動脈解離や心房もしくは心室内に血栓が認められた場合には、運動療法が禁止されることもあります。

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●心エコー検査で心臓から全身へ血液が十分に送り出されているか、心不全の有無が判定可能

心エコー検査では、心臓の筋肉の働き具合、すなわち心室から全身へ送り出される血液が心室にたまった血液のどのくらいの割合かを示す、左室駆出率(EF)というものがわかります。
EFの値が30%以下ですと左心室の収縮力の低下が疑われ、ほかの検査所見などと照らし合わせ、心不全と診断されることがあります。
その場合には血圧の低下や心拍数の増加などに十分に留意して、軽度の負荷から運動療法を始めることが必要となります。

リハビリスタッフが最低限知っておきたい心エコーの読み方をマスターして、診療につなげよう!

心エコー検査はレントゲンや血液検査などとは異なり、リハビリスタッフにはあまりなじみのないものですが、リスク管理の上で重要な情報が得られることもあります。
特に心疾患や循環器疾患をお持ちの患者さんのリハビリを担当される際には、安静度や運動負荷決定の重要な情報の一つになります。
心エコー検査所見を読み解き、担当医師や看護師などとリハビリについて相談し、診療の糸口にしていただければ幸いです。

参考:
日本循環器学会 循環器超音波検査の適応と判読ガイドライン(2010年改訂版).(2020年2月25日引用)
国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス 心臓の検査で何がわかる?.(2020年2月25日引用)
大動脈弁狭窄症の心エコー検査による評価に関する勧告: ヨーロッパ心血管画像学会 (EACVI) およびアメリカ心エコー図学会 (ASE) による改訂.(2020年2月25日引用)
ASE ガイドラインおよび基準値 弁逆流の非侵襲的評価に関する勧告 アメリカ心エコー図学会が心血管磁気共鳴学会の協力のもとに実施した報告. (2020年2月25日引用)

  • 執筆者

    桑原

  • 1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
    その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。

    保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士

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