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どうすれば腎臓リハビリが普及するのか?現状と今後の課題を考える

慢性腎臓病(CKD)は今や国民病との認識も強く、新規透析導入患者さんは年間4万人程度にのぼります。
CKDや透析治療による障害を予防するため、腎臓リハビリテーションが注目されていますが、その普及にはいくつかの課題があります。
本記事では、筆者の腎臓リハビリ学会の参加体験を基に、その課題と解決策について考えていきたいと思います。

腎臓リハビリテーション

体験談「第10回日本腎臓リハビリテーション学会学術集会」

体験談「第10回日本腎臓リハビリテーション学会学術集会」

2020年2月22日〜23日に第10回日本腎臓リハビリテーション学会学術集会(以下、本学会)が開催されました。
その中で、筆者が学んだいくつかのトピックスをご紹介します。

●現状では、運動療法の診療報酬算定は厳しい

2020年の診療報酬改定において、残念ながら運動療法に対する診療報酬算定は新設されませんでした。
今回の改定では、医師の働き方改革推進にむけて力が入っているため、各疾患における見直しまでは手が届かなかったのかもしれません。
しかし、前回の改定で高度腎機能障害患者指導加算(100点)が新設されたため、多職種チームを組んで指導に当たっている施設も増えているようです。
この加算は単独で算定するものではなく、糖尿病透析予防指導管理料(350点)を算定していることが前提であり、多職種の関わりや効果判定が必須になります。
その他としては、心不全や運動器疾患などの併存症に対して、従来の疾患別リハビリテーションとして実施することも可能です。
しかし、透析中の運動療法や運動指導に関しては算定することが困難であり、マンパワー不足や関係職種間での認識の違いなど、まだまだ課題は残っています。

●要介護認定者では、介護保険サービスの活用も一考

透析治療を受けている高齢者の場合、介護保険の認定を持っている割合も高くなります。
そのため、訪問リハビリやデイケアなどを利用し、身体機能の評価や運動療法を行うことが可能です。
医療保険における疾患別リハビリテーションとは異なり、現疾患の種類でリハビリ実施の可否が決まることはありません。
特にデイケアの場合、医療施設に併設しており、医師による診察や看護師によるケアが受けられるため、リスク管理の点からも有用であるといえるでしょう。
しかし、週3回の透析に加えてデイケアを利用すると、ほとんど自宅にいる時間がないことや、介護保険分野の医療職に専門的知識が少ないことなどが課題に挙げられます。

●腎臓リハビリテーション指導士の誕生

2019年に第1回腎臓リハビリテーション指導士(腎リハ指導士)認定試験が行われ、350名以上の指導士が誕生しました。
今年度の学会では、90名以上の方が認定試験を受けたため、来年度には450名近くの指導士が在籍することになります。
腎リハ指導士は、腎疾患の病態や治療、適切な運動強度の決定など、腎疾患に対するリハビリに特化したスタッフです。
透析患者さんに対する運動指導の効果を検証したり、診療報酬算定にむけた動きを行っていくなど、今後の腎リハを牽引していく存在になり得るでしょう。
普及のためにはエキスパートの育成が重要であり、来年度以降の受験者も増えていくのではないでしょうか。

腎臓リハビリを始める上で注意しなければいけないことは?

腎臓リハビリを始める上で注意しなければいけないことは?

リハビリ専門職を中心に、「腎臓リハビリを始めよう!」という流れになるのは素晴らしいことですが、いくつか注意しておきたい点もあります。

●まずは他職種との情報共有、患者さんとの信頼関係を築こう

腎臓リハビリに関しては、診療報酬の算定ができない以上、「医師の指示のもと」という行為とは離れてしまいます。
そのため、運動療法や指導に対する責任の所在がはっきりしていないと、トラブルにつながる可能性があります
また、リハビリ専門職は透析室に入った経験が少ない方も多く、看護師さんや臨床工学技士さんの業務内容の理解も不足しているかもしれません。
それなのに、「透析中に運動をしましょう!」とズカズカ入ってしまうと、得られる協力も得られなくなるかもしれません。
まずは、腎臓リハビリの概念や効果、その方法などについて多職種間で共有し、自分たちの施設の特徴や人員配置などを踏まえた上で、ゆっくり進めていくのがいいでしょう
医療職と同様に、リハビリ専門職はCKD患者さんや透析患者さんとの関わりが少ない傾向にあるため、運動指導をする際にも注意が必要です。
主治医や担当看護師さんと厚い信頼関係を持っている患者さんの場合、新たに介入してきたリハビリ職からの指導をすんなり受け入れてくれないかもしれません。
その場合、信頼関係の強いスタッフ(看護師さんなど)に運動指導の内容を伝達して、間接的に患者さんに伝えるという方法もありです。
まずはチームとして自分がなじむこと、周囲との協力体制のもと進めていくというスタンスを忘れないようにしましょう。

●循環動態の変化や運動強度、運動時間などに注意しよう

CKDや透析治療を受けている患者さんにおいては、年齢、併存症、服薬状況などによって運動処方が異なります。
たとえば、透析中に運動を行う場合、実施時間は透析開始後30分〜60分を目安にしたり、循環動態が安定しない透析終了前後は避けるなどの工夫が必要です
また、電解質の異常や冠動脈疾患の既往がある場合、不整脈の有無や治療歴をしっかり確認しておくことが重要です。
「透析中にゴムバンドやエルゴメーター」を行うことが目的ではなく、安全管理がなされた上で効果的な運動を行うことが重要です。
腎臓リハビリに関わるスタッフは、腎臓リハビリテーションガイドラインや、心臓リハビリテーションにおける運動強度の設定などに習熟しておくことが必須です
特に、腎臓リハビリを開始して間もない時期に事故が起こってしまうと、「やっぱり危ないんじゃないの?」など、スタッフ全体のモチベーションが低下します。
患者さんを選別するのは良いことではないですが、比較的状態が安定している患者さんから介入するというのも1つの方法です。

腎臓リハビリ普及にむけた今後の課題を考える

腎臓リハビリ普及にむけた今後の課題を考える

ここまで、腎臓リハビリの現状をお伝えしてきましたが、最後は今後の普及にむけた課題について考えてみたいと思います。

●腎臓リハビリの効果を共有していく

現時点では、腎疾患や透析治療患者さんに対する運動療法は診療報酬算定ができません。
しかし、多くの施設が試行錯誤しながら腎臓リハビリを展開しており、着実に広まってきているといえるでしょう。
また、国としても、透析治療にかかる費用を抑えたい、CKD患者さんが透析導入に至るのを遅らせたいと考えています。
診療報酬がついたら取り組むというスタンスではなく、まずはそれぞれの現場で実践し、その結果を広く共有していくことが重要ではないでしょうか。
活動の成功例を院内で発表する、地域の学会、自治体への報告などをはじめ、ほかの活動団体(患者会など)とも連携し、仲間を増やしていくことも大切です。

●多職種で構成される専門チームをつくる

腎臓リハビリには、医師や看護師、薬剤師や管理栄養士など、リハビリ専門職以外にも多くの職種が関わる必要があります。
そのため、包括的なアプローチをしていくためには多職種間での連携が必要であり、まずは顔の見える関係をつくる必要があります
施設によっては、透析室スタッフとの交流がほとんどないかもしれませんので、まずは腎臓リハビリの概念を伝えることから始めるとよいでしょう。
「腎臓リハビリではこういうトピックスがあるよ」、「透析中の運動はこうやってしたらいいよ」など、相手にとって有意義な情報を伝えることが大切です。

●マンパワー不足や生産性低下をどう切り抜けるか

診療報酬の算定ができないなかで、管理者側としては腎臓リハビリに携わるスタッフを捻出するのは相当の痛手です。
特に、現状で関わりの少ないリハビリ専門職に関しては数字が顕著にでてきます。
たとえば、理学療法士を半日間透析室に配置した場合、本来なら9〜10単位程度の収益が0になってしまいます。
「それでも大切なことだからやろう!」「われわれが出した結果を発信していこう!」と考えていただける管理者は少ないのではないでしょうか。
そのため、いかに効率よく関わりを持っていくかがポイントになります。
診療報酬がないということは、リハビリ職の関わり方にも規制はないということですので、各施設に応じたフレキシブルな対応が期待されます
以下にいくつかの関わり例を挙げてみます。

  • ◯透析開始時に看護師が運動の説明を行い、理学療法士が運動中の様子を見て、改善点などを看護師に伝える(アドバイス型)
  • ◯内科の外来と連携して、対象患者の診察前後で身体機能評価や運動療法の指導を行う(飛び入り型)
  • ◯地域の腎臓病予防イベントなどに参加して、身体機能評価などを行う(市民講座型)

腎臓リハビリはここからが勝負どき!

腎臓リハビリテーション学会もようやく第10回を迎え、徐々に会員数や取り組み例なども増えてきました。
また、腎臓リハビリ指導士というスペシャリストの育成も始まっており、今後は腎臓リハビリにおける中心的役割を担うことになるでしょう。
医療費を削減したい国、患者さんのADLを改善したい医療職、そして自分らしい生活を送りたい患者さん、すべてのベクトルは腎臓リハビリという方向に向いています。
今後、医療界でのキーワードとなるであろう腎臓リハビリ、ぜひ自分たちの施設でも取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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