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クリニック・治療院 OGメディック

  • 蔵重雄基

    公開日: 2020年04月30日
  • 患者さんのケア

ギランバレー症候群のリハビリについて解説!病気の進行や回復に合わせた関わり方を紹介します

ギランバレー症候群は予後が良好なケースも少なくありませんが、病態がさまざまでなかには長期的なリハビリを必要とする患者さんもいます。
そのため、予後を含め個々の状況をしっかり評価し、病気の進行や回復の程度に合わせた関わり方が重要になります。
今回はギランバレー症候群の特徴を紹介し、リハビリの進め方、関わり方を解説します。

ギランバレー症候群

ギランバレー症候群の特徴や症状

ギランバレー症候群のリハビリには病気の予後や進行の程度を症状などからしっかりと理解することが重要です。
まずはギランバレー症候群についての理解を深めるために、病気の特徴や症状、予後について解説します。

●ギランバレー症候群とは

ギランバレー症候群は急性に発症する多発性末梢神経障害で、症状発症の約4週間以内に風邪や下痢などの感染症症状が先行するのが特徴です。
症状は1~2週間をかけて発症していき、4週間以内にピークに達して、その後軽快に向かいます。
しかし、軸索障害型のギランバレー症候群では予後不良となりやすいなど、病態が多様であるといった特徴が見られます。

●ギランバレー症候群の疫学

日本では人口10万人に対して1.15人の割合で発症し、男女比は3:2と男性に多く見られます。
平均発症年齢は39.1±20.0歳と幅広い年齢で発症しており、働き盛りであったり、子育て世代であったりといったケースも少なくありません。
そのため、生活歴や家庭環境に応じたリハビリの目標設定が重要になります。

●ギランバレー症候群の症状

ギランバレー症候群で見られる症状を以下に挙げます。

  • ○筋力低下
  • ○感覚障害(異常感覚、感覚脱失)
  • ○疼痛
  • ○運動失調
  • ○自律神経障害(頻脈、不整脈、排尿障害、発汗異常など)

筋力低下は遠位、近位どちらでも発症しますが、軽症の場合は上下肢どちらかであることも少なくありません。
筆者の経験でも上肢の遠位筋で主に筋力低下が見られたケースがありました。
しかし、重症の場合は完全四肢麻痺になることもあり、呼吸筋麻痺により人工呼吸が必要となるケースもあります。
どちらにせよ、軽症から重症まで非常に多彩な症状を示すのがギランバレー症候群の症状の特性です。

●ギランバレー症候群の予後

ギランバレー症候群は急な発症と症状の進行が落ち着いた後は、良好な経過をたどることが多い疾患です。
しかし、呼吸筋麻痺により呼吸が困難となる重症例は予後不良なケースもあります。
重症例は回復のスピードも遅く年単位に及ぶこともあり、そのような場合は、長期的なリハビリが必要となります。
そのため、ギランバレー症候群の予後はリハビリを実施する上では非常に重要な因子になり、できるだけ早期に予後予測をすることが大切です。
予後予測のスケールはリハビリの評価の項目で後述します。

ギランバレー症候群のリハビリに必要な評価

ギランバレー症候群のリハビリに必要な評価をエビデンスを踏まえながら紹介します。

●評価は急性期から生活期まで継続して一貫性のある方法を実施する

ギランバレー症候群の重症例では、リハビリの関わりが長期化することが多いです。
そのため、急性期から必要な情報を収集して、それを回復期、生活期と継続して実施することで、回復の経過が把握でき、具体的な目標設定へとつなげることができます。
ギランバレー症候群の特性を踏まえて、「発症から症状の進行する段階」、「症状がピークに達する段階」、「症状が回復する段階」といった3つの段階で、それぞれ機能評価やADL評価を実施していくことが重要です。

●予後予測の評価スケール

予後予測の評価スケールとして、modified Erasmus GBS outcome score(mEGOS)とErasmus GBS respiratory insufficiency score(EGRIS)の2つが有用です。
前者は3カ月後、6カ月後の自立歩行困難の予測をし、後者は入院1週間後における人工呼吸器管理になる確率を予測します。
海田によると海外で報告されたこれらのスケールは日本でも有用としており、症状の段階に合わせたこのようなスケールを活用することで、段階ごとに患者さんの目標設定に役立てることができます。

●必要な機能評価

ギランバレー症候群の症状に合わせた機能評価を実施して、回復の経過をしっかり把握しましょう。
以下に機能評価の項目を列挙します。

機能評価の項目
1.筋力
2.筋緊張
3.関節可動域
4.感覚障害
5.疼痛
6.呼吸機能
7.循環機能
8.自律神経障害(起立性低血圧、異常発汗)
9.疲労しやすさ

筋力はmEGOSやEGRISといった予後予測のスケールで評価項目に挙げられているmedical research council(MRC)を急性期から生活期まで継続して実施することで、回復の経過を可視化することができます。
MRCは両側の上肢(肩関節外転、肘関節屈曲、手関節背屈)と下肢(股関節屈曲、膝関節伸展、足関節背屈)の徒手筋力検査スコアの合計点を算出する評価法です。

ギランバレー症候群におけるリハビリのポイント

ギランバレー症候群のリハビリは、症状の重症度や回復に合わせて実施していくことが重要です。
そこで、病期ごとの目標設定や関わり方のポイントを紹介します。

●急性期におけるリハビリのポイント

麻痺が進行している急性期では、症状の進行に伴う合併症の予防をすることが必要になります。
特に呼吸筋麻痺が進行して人工呼吸器での呼吸管理が必要な場合は、肺炎や無気肺の防止のため、体位ドレナージなどの呼吸リハビリが必要になります。
また、重度の麻痺により関節可動域制限が生じると今後の回復段階において日常生活動作に悪影響を及ぼすため、早期から拘縮予防のための関節可動域練習を実施するようにしましょう。
長期臥床による深部静脈血栓症の予防や自律神経障害からくる循環障害に対するリスク管理、離床時の起立性低血圧への注意など、積極的なリハビリを行えないなかでいかに二次的な障害を少なくしていくかが重要になります。
嚥下機能の低下や気管内挿管によるコミュニケーションの障害は言語聴覚士の介入が必要になります。
コミュニケーションが不可能になると、症状の進行や予後への不安感を訴えることができず、精神的に大きな負担がかかります。
身体機能だけでなく精神面のケアも多職種で連携して行いましょう。

●回復期におけるリハビリのポイント

麻痺が回復傾向を示し随意的な運動が見られるようになって以降の回復期でもリハビリは状態をしっかり評価して実施する必要があります。
たとえば、麻痺の回復が十分ではなく筋緊張が低下している段階で無理なストレッチを行うと軟部組織の損傷を引き起こすリスクがあります。
疲労感が強いケースも少なくないため、自覚的運動強度を確認しながら慎重に運動を実施することも大切です。
そのため定期的に筋力を評価しながら、他動運動→自動介助運動→自動運動→抵抗運動というように段階的な運動強度の設定をしましょう。
呼吸障害が生じていたケースでは、人工呼吸器から離脱しても呼吸機能の低下をきたしているため、呼吸リハビリテーションを段階的に実施していくようにしましょう。

※呼吸リハビリについては「呼吸リハビリで行われるハフィング、呼吸介助(スクイージングなど)、体位変換について解説します」で紹介しています。

●生活期におけるリハビリのポイント

ギランバレー症候群の機能回復は年単位に及ぶ場合があるなど、患者さんによって個人差がある場合も少なくありません。
そのため生活期では、回復に合わせて適切な運動プログラムを設定して機能向上を促すことはもちろん、患者さん一人ひとりに合わせた日常生活動作や応用動作、社会復帰に向けて多面的なアプローチが重要になります。
また生活期になると複数の施設を経ているケースが多いため、施設間で連携を図り回復の経過から予後を推測して必要に応じて環境へのアプローチをする必要があります。
車椅子や歩行補助具、自助具などの福祉用具の活用も積極的に検討しましょう。

幅広い視点を持ちながら患者さん一人ひとりに合わせたリハビリをしよう

ギランバレー症候群は状態によって障害が残存するケースもあります。
また、軽症例であっても発症により、一時的に就労や家事が困難になるなど社会的な制限が生じることもあります。
そのため画一的なプログラムを進めるのではなく、患者さんの状態はもちろん、生活環境や社会背景など幅広い視点を踏まえてリハビリを進めていくことが重要です。
今回ご紹介したギランバレー症候群の特徴や必要な評価、リハビリのポイントを踏まえて、一人ひとりに合わせたリハビリを進めましょう。

参考:
海田賢一:ギランバレー症候群の予後、予後関連因子.BRAIN and NERVE 67(11):1411.1419,2015.
橋田剛一,阿部和夫:エビデンスを参照したニューロパチー患者に対する理学療法の考え方と進め方-ギラン・バレー症候群と慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーを中心に-.理学療法36(7):631-639,2019.
一般社団法人 日本神経学会 ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン2013.(2020年3月25日引用)

  • 執筆者

    蔵重雄基

  • 整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
    現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
    医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。

    保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級

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