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半側空間無視の対応で役立つ!看護・介護・リハビリスタッフがすぐに使えるアプローチの視点

脳血管障がいの患者さんでは、「半側空間無視」の状態を示すことも少なくありません。
車いすで左側のブレーキだけかけ忘れてしまうなど、生活への影響も大きくなるので、入院中に看護師・介護士・リハビリ職が対応に苦慮する場面も多いと思います。
今回は、半側空間無視の患者さんに使えるアプローチ方法やリハビリのアイディアをまとめていきます。

半側空間無視の対応で役立つ!

対応に困るのはこんなとき…!半側空間無視の患者さんに多いエピソード

半側空間無視の患者さんの対応にあたり、看護・介護・リハビリの場面で困った経験がある方もいるかもしれません。
半側空間無視の患者さんでは、損傷した大脳半球と反対の方向への刺激に気づくことが難しくなります。
花の絵を模写する検査では、右側の花びらは描かれているのに、左側の花びらは描かれないなどの反応が示されます。
また、線分二等分検査という評価では、線の中央に印をつけるよう教示しても、その印が右側に寄ってしまうなどの結果になります。
どちらの方向に無視が生じるかは患者さんによって異なりますが、半側へ注意が向きにくくなることから生活場面への影響も大きくなります
右半側無視の場合は右側、左半側無視の場合は左側の見落としが多くなります。
半側空間無視の患者さんでは、次のようなエピソードが多く見受けられます。

  • ●無視のある側に立っている人に気づかない
  • ●車いすのブレーキ・フットレストの操作を片方だけ忘れてしまう
  • ●トレイの端にある食事に気づかない
  • ●衣服の片袖を通すことを忘れてしまう
  • ●いつも顔がどちらかに向いている
  • ●壁や手すりなどにぶつかりながら進む
  • ●建物のなかで曲がるべき通路に気づかない
  • ●半分だけ髪を整える・ひげを剃る

半分の方向への注意が向かなくなるため、上記のような生活場面においてもさまざまな影響が及びます。
半側空間無視の程度はケースによって異なり、ADL(日常生活動作)への影響の程度も変わってきます。
どうすれば効果的にアプローチを進めていけるのか、その知識を身につけておくことが大切になるでしょう。

半側空間無視の患者さんへのアプローチ?看護・介護編?

左無視がある場合には、右側から話しかけます

病棟での看護・介護において、半側空間無視のある患者さんへの対応としてできることを解説していきます。
基本の声かけをはじめ、食事や車いすのブレーキ操作などで使えるアイディアをまとめていくので、ケアの参考にしてみてください。

●病識がないことも多いため、理解を促す

半側空間無視の患者さんでは、病識がないケースもあり、ある方向の刺激だけが気づきにくいという状態が理解できていない場合もあります。
そのため、まずはある方向に注意が向きにくいという状態を理解してもらい、一緒に対応を検討していく姿勢を示す必要があるといえます。

●基本は無視がない方向からの声かけ

看護や介護の場面では、声かけの仕方を工夫してみてください。
左半側無視がある場合には右側から、右半側無視がある場合には左側から話しかけるように対応を統一し、視線を合わせながらお話しをすると良いでしょう。
半側空間無視では、見えないところから話しかけられると、精神的なストレスもかかってしまうため、配慮するようにしましょう。

●食事ではトレイの位置を工夫する

左半側無視がある場合には、食事のトレイ自体を右側にずらして対応しましょう。
そうすると、気づかないまま食べ残してしまうということが減っていきます。
また、どこが左の端にあたるのか認識しやすくするために、テープなどを使って、トレイの左端や左隅に目立つ印などをつけることも効果的です。
なお、無視がある側にコップなどを置いてしまうと、気づかずに床に落としてしまう可能性があるため注意してください。

●ブレーキ・フットレストの操作は繰り返して習慣化

ブレーキやフットレストの操作を片方だけ忘れてしまうと、立ち上がる際などに転倒のリスクが高くなります。
そのため、半側空間無視があるときは、「右・左」とつぶやきながら左右の操作を行うことを繰り返して習慣化するのもおすすめです。

半側空間無視の患者さんへのアプローチ?リハビリ編?

無視があれば指摘します

リハビリにおいては、まず行動性無視検査(BIT)のような、多角的に評価できるスケールを用いて、無視の状態を評価しておきましょう。
看護・介護では無視がない方向からの声かけが基本になりますが、リハビリでは刺激を「探索する練習」を行っていきます
実際、訓練の効果を生活に広く活用していくことは難しい場合もありますが、無視のある方向への刺激に気づきやすくなるように訓練したり、代償的な方法を身につけたりしていきます。

●見落としに気づけるように訓練する

リハビリ場面では、視覚的な刺激を探索する練習を行っていきます。
具体的には、机のうえにコインやカードなどを並べて、探索していく練習などをしていきます。
リハビリではさまざまな課題を行いますが、そのなかで共通しているのは「無視があれば指摘する」ということです。
どの方向でどのくらい見落としているのか、課題を進めながら、あるいは課題が終了したあとでフィードバックしていきます。
見落としの指摘をあまりに繰り返してしまうとリハビリへのモチベーションが低下してしまうため、そのバランスについては留意すべきです。
患者さんのニーズや訴えに耳を傾けながら、良好な関係性を構築していきましょう。

●生活場面での環境設定も行う

リハビリのスタッフは半側空間無視に関する基本的な検査などを行いますが、実際に病棟での様子を観察し、必要な環境設定を進めることも必要です。
食事や着替えなどの場面を評価し、どうすれば見落としや無視による影響が軽減されるのかを考えてみましょう。
たとえば車いすのブレーキに、左側だけ印をつけておけば忘れにくくなるなど、どんな手がかりがあれば気づくことができるのか、試行錯誤をしてみてください。
うまくいくアイディアがあれば看護師・介護士にも情報共有を行い、全体で統一した対応をしていくことが望ましいでしょう。

●プリズム適応療法が注目されている

半側空間無視のある患者さんに対して、探索する訓練を提供することは多いですが、長期的な効果という点ではまだ不透明な部分も多いです。
そこで注目されているのが、プリズム眼鏡という視野を右にシフトすることができるツールです。
水野(2016)が「最近のトピックス」として紹介している内容にも含まれています。
プリズム眼鏡をつけた状態でリーチ動作を繰り返すと、運動学習がなされていき、対象物に向かって適切にリーチできるようになっていきます。
つまり眼鏡を使って視野をずらし、これに適応できるように訓練する、ということになります。
半側空間無視に対するアプローチとして、このような代償的なツールについても、その有用性が期待されています。

まとめ

半側空間無視があると、看護・介護・リハビリのスタッフがどのように対応すれば良いかわからず困ってしまうこともあるでしょう。
そんなときは、半側の刺激に気づきにくいという状態に対して、その刺激の見落としが減るような代償的なアプローチを視野に入れてみてください。
半側空間無視があっても、手がかりがあれば刺激に気がつけることも多いですし、リハビリで刺激を探索する訓練を行うことも十分な効果が期待できます。
患者さんが安全に、ストレスなく過ごせるよう、今回ご紹介したポイントを参考にしながらサポートしてみてください。

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参考:
水野勝広:半側空間無視のリハビリテーション?最近のトピックス?. Jpn J Rehabil Med53: 629-636, 2016.

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