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クリニック・治療院 OGメディック

  • 桑原

    公開日: 2020年07月28日
  • 患者さんのケア

昏睡時には眼を観察しよう。理学療法士が急性期に注意するべき眼球や瞳孔の観察方法

急性期リハビリテーションの理学療法士は時に発症初期の意識レベルの低い患者さんを担当することもあり、脳への障害が増悪したり、致命的な状況に陥ることも起こり得ます。
今回は患者さんの協力なしでも行える眼球や瞳孔の観察と増悪時にはどのようなことが考えられるのかなどリスク管理としての注意点について解説していきます。

意識状態が不良な患者さんでも検査可能な眼の観察、反射について

意識状態が不良な患者さんでも検査可能な眼の観察、反射について

急性期のリハビリテーションにおいて患者さんの評価をする際に、意識状態が不良である場合もしばしばあります。

●まずは眼球の位置や動き、眼振がないかを確認しよう

意識状態がはっきりしない患者さんには、意識レベルの確認とともにまずは、

1)共同偏視

共同偏視

眼球の変異がないか、もしあるのならどの部分への偏視であるのか確認しましょう。
テント上の脳出血の場合には病巣側、脳幹部や橋の障害の場合には病巣と反対側に、視床出血や中脳への障害では下方もしくは鼻先を睨むような偏視、痙攣の場合には健側方向への共同偏視が起こります。

2)眼振

眼球の動きを観察すると小刻みに震えるように動いているかどうか確認する。
橋であれば水平性の眼振、延髄であれば回旋もしくは上または下眼瞼向き眼振などが特徴でほかにも中脳や小脳の障害によっても起こります。

●次に対光反射、散瞳・縮瞳がないのかを確認しよう

ペンライトなどを用いて対光反射に対する反応、瞳孔の大きさなどを観察しましょう。

1)対光反射

対光反射

瞳孔は2mm以下を縮瞳、5mm以上を散瞳と呼び、0.5mm以上の左右差は不同とみなします。

縮瞳
縮瞳が見られるときは、脳の障害は予後があまり良くないことが多い。
両側が針の穴のように縮瞳している場合は、脳幹出血や脳ヘルニアを起こしているサインであり、予後は不良。
意識障害、片側の縮瞳と眼瞼下垂が同時に起こっている場合には、脳幹の障害を疑う。

散瞳
両側性の散瞳は低血糖による意識障害、低酸素脳症。
片側の瞳孔の散瞳は動眼神経の障害、対光反射消失を伴えば脳ヘルニアを疑う

2)瞳孔の大きさ、形

瞳孔の大きさや形の異常は神経梅毒で起こることがあるが、白内障などの手術をしている場合には異常がでることもあるため、既往歴などを確認しておくことも必要です。

眼の反射の観察方法で重要なのは、左右差と変化の有無

眼の反射の観察方法で重要なのは、左右差と変化の有無

急性期リハビリテーションにおいて、眼の観察をする上でどのような点に気をつけるとよいのでしょうか。

●瞳孔の大きさ、左右の目の反射の程度などを観察しよう

瞳孔の左右差、対光反射に対する反応または片側の眼の対光反射の際に、反対側の眼はどうなっているかも観察することが大切です。
意識状態が不良である場合は、瞼を自力では持ち上げられないため、両方の瞼を指で押し上げて、左右一緒に観察するようにしましょう。
これらの結果により、病巣の特定がしやすくなり、どのような障害が起こり得るのか予測することが可能です。

●全身状態のリスク管理がどうか、そのほかの身体所見を確認しよう

意識障害がある患者さんでもさまざまな神経所見を取ることができます。
眼の観察だけではなく、手脚の観察、筋緊張、痙攣の有無、腱反射、痛み刺激に対する反応など神経学的所見を入手することが可能です。
さまざまな神経学的所見を組み合わせることで、意識状態が不良な患者さんにおいてもリスク管理や日々の回復を見ることができます。

眼の反射に対する反応が不良、もしくは悪化しているなと感じたときには?

眼の反射に対する反応が不良、もしくは悪化しているなと感じたときには?

日々の評価の中で、眼の反射の反応が不良であったり、悪化していると感じられたときにはどのようなことが考えられるでしょうか。

●浮腫や脳ヘルニアによるその他の神経所見、痙攣や呼吸状態にも注意を

動眼神経核のある中脳を障害されると障害が現れ、中脳以下の橋や間脳、脳幹部の障害においても眼の症状の異常が見られます。
その周囲が何らかの障害を受けた場合には、呼吸の異常なども見られるため、呼吸回数、浅さ、なども観察しましょう。
脳の大部分が障害された場合には、痙攣や四肢の硬直といった神経症状も見られるため、合わせて観察するようにしましょう。

●予後不良な特に注意すべき眼位、眼球運動、瞳孔の様子について知っておこう

目は口ほどに物を言うということわざにもありますが、眼の症状は脳幹部の障害を反映しており、対光反射が保たれていれば中脳の障害がないということを意味します。
逆を考えれば、眼の症状があるということは何らかの脳の障害があると考えられます。
その中でも予後不良、注意すべき症状をまとめてお話ししましょう。

眼球運動 人形の目現象:意識障害(+)、外転筋麻痺(−)の際に、頭を急速に上下または左右に動かすと眼球は反対側に向く現象→脳幹障害
眼球浮き運動:規則正しく持続的な正中位より下方向へ両眼球の急速な沈下が見られると、橋の広範囲な障害が示唆される。→予後不良
瞳孔 縮瞳や散瞳:縮瞳は脳幹出血や脳ヘルニア、散瞳は脳死や低酸素脳症で見られる→予後不良
対光反射の喪失:散瞳も伴うと鉤ヘルニアが疑われる
ホルネル徴候:一側の縮瞳と眼瞼下垂→脳幹病変
毛様体脊髄反射:痛み刺激により1~2mmの瞳孔の散瞳が起こると脳幹部の障害が疑われる

意識状態が悪いときには眼の症状や反射をよく観察して、診療に役立てよう

眼の症状や反射は、主に中脳以下の部分の損傷具合や障害を大きく反映しています。
生命維持に必要な呼吸などをつかさどる中枢や脳神経核が多く位置している中脳以下の脳の障害は生命の危機に大きく影響を及ぼし、急性期リハビリテーション行う上でもリスク管理が必要となります。
意識状態がはっきりとしない場合には、眼の症状なども観察し、身体所見を参考することをおすすめします。

参考:
岩崎靖:主訴別の患者の診かた(9)意識障害のある患者の診かた(後編).医学書院,2009.(2020年7月14日引用)
田崎義昭,斎藤佳雄,他:ベッドサイドの神経の診かた 改訂18版.南山堂,東京,2016.

  • 執筆者

    桑原

  • 1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
    その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。

    保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士

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