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橈骨遠位端骨折の術後は、リスク管理が重要!介入前に必ず確認したいレントゲン所見と、術後に注意したい合併症を解説

高齢者に頻発する橈骨遠位端骨折は、掌側ロッキングプレートを使用した固定術が主流であり、橈骨遠位端骨折診療ガイドラインでも極めて有効な手術方法とされています。
しかし掌側プレートの留置場所により、合併症として腱断裂やTFCC損傷を引き起こすリスクがあります。
それは画像所見や各種検査を行うことで、予防に努めることができます。
そこで今回は、腱断裂を防ぐために必要なレントゲン所見の見方とオススメな予防方法をお伝えします。

橈骨遠位端骨折術後の合併症予防

まずは折れた部位と、折れ方を確認しましょう!

まずは折れた部位と、折れ方を確認しましょう!

掌側ロッキングプレート術後は、術前のレントゲンを確認することが重要です。
術後は整復された状態になりますが、術前のレントゲンからは、

  • ○関節内と関節外どちらの骨折か
  • ○その他合併している骨折がないか

これらの情報を得ることができます。
まずはそこから始めます。

確認の手順としては、関節内の骨折か、関節外の骨折かを把握しましょう。
関節外の骨折は、コレス骨折とスミス骨折があります。

○コレス骨折

手関節背屈位、前腕回内位で手をつくことで受傷します。
遠位骨折端は、背側方向に転位が認められます。

○スミス骨折

古くは手関節掌屈位で、手背からついたときに受傷すると考えられていました。
オートバイや自転車の乗車中にハンドルを握ったまま転倒し衝突することでも認められます。
遠位骨折端は、掌側方向に転位が認められます。

関節外骨折は、関節面は温存されているため、術後は比較的早期に関節可動域訓練を開始することができる特徴があります。
しかし、遠位骨折端の転位の程度により手関節屈伸筋腱の滑走障害が想定され、腱断裂などのリスクにつながるので注意が必要です。

関節内骨折の種類は、バートン骨折、掌側バートン骨折、ショーファー骨折があります。

○バートン骨折・掌側バートン骨折

橈骨遠位端の転位にあわせ、手根骨にも転位が認められた骨折のことを指します。
背側に転位した場合はバートン骨折、掌側に転位した場合は掌側バートン骨折と呼びます。

○ショーファー骨折

橈骨茎状突起部の関節内骨折であり、ドライバーに起こりやすい骨折であることから運転手骨折とも呼ばれています。
手関節背屈、橈屈の強制にて受傷するため、橈骨と舟状骨の間での圧縮ストレスが影響します。
舟状骨の合併損傷が多いため、同部位の損傷の程度と経過を注意深く確認する必要があります。

関節内骨折の場合は、術後に関節面の不整や転位部の整復程度に注意が必要です。
特に、関節面における骨折線の程度が、荷重許可期間を左右することがあるので、詳細な骨折部の評価が必要となります。
橈骨遠位端骨折の分類としては、日本や海外ではAO分類がメジャーになっています。
関節外骨折、部分的な関節内骨折、完全な関節内骨折の3項目があり、そこからさらに細分化していく見方となります。

関節外骨折 橈骨骨折のない尺骨骨折 茎状突起の裂離骨折
骨幹部単純骨折
骨幹端部の多骨片骨折
橈骨骨折で単純嵌入骨折 傾斜なし
背側傾斜を伴う(コレス骨折)
掌側傾斜を伴う(スミス骨折)
橈骨骨折で複雑嵌入骨折 軸短縮を伴う嵌入骨折
楔状骨折を伴う
複雑骨折
部分的な関節内骨折 矢状面での橈骨骨折 外側単純関節(ショーファー骨折)
外側の多骨片骨折
内側骨折
骨折線が背側へ向かう橈骨骨折
(バートン骨折)
単純骨折
外側矢状面の骨折を伴う
(ショーファー骨折の合併)
手根部の背側転位を伴う
骨折線が掌側へ向かう橈骨骨折
(逆バートン骨折)
少骨片を伴う単純骨折
大骨片を伴う単純骨折
多骨片骨折
完全な関節内骨折、
すべて尺骨茎状突起の
骨折を伴う
橈骨の関節内単純骨折、
骨幹端部の単純骨折
尺側背側(後内側)への関節内骨片
矢状面での関節内骨折
前額面(冠状面)での関節内骨折
橈骨の関節内単純骨折、
骨幹端部の多骨片骨折
矢状面での関節内骨折
前額面(冠状面)での関節内骨折
骨折線が骨幹部へ及ぶもの
橈骨関節面と骨幹端部の多骨片骨折 骨幹端部の単純骨折
骨幹端部の多骨片骨折
骨幹部へ骨折線が達するもの

このように、術前のレントゲンからは詳細な所見を得ることができます。
骨折部位の詳細な把握は、介入による骨転移や偽関節を予防するためにも必要となります。
分類が細分化されているので覚えるのは大変ですが、一度身につけておくことをオススメします。

関節可動域だけではわからない!画像を細かく評価しましょう!

関節可動域だけではわからない!画像を細かく評価しましょう!

レントゲン所見から骨折型を確認することも重要ですが、骨折の転位の程度を評価する測定値の指標として、橈骨遠位端長(radial length)、橈骨遠位端傾斜(radial tilt)、尺骨変異(ulnar variance)、橈骨遠位端掌側傾斜(palmar tilt)の4つが必見となります。
これらは、関節可動域制限や機能的な予後予測を立てることにも役立ちます。

橈骨遠位端長(radial length)

橈骨長軸に対し、橈骨茎状突起間と尺骨頭関節面で垂線を引きます。
正常では平均13mmとされていますが、健側との比較が重要です。
健側と4mm以上の短縮で機能予後は不良となるため、1mm以内での整復が目標となります。

橈骨遠位端傾斜(radial tilt)

radial deviationとも呼ばれ、橈骨長軸の垂線に対する橈骨関節面の傾斜角をいいます。
正常は13~30°程度で、平均23~27°とされています。

尺骨変異(ulnar variance)

橈骨遠位関節面に対する尺骨遠位関節面の高さをいい、正常ではほぼ同じ高さにあります。
橈骨に対し尺骨が長い場合は、ulnar plus varianceといいます。
橈骨に対し尺骨が短い場合を、ulnar minus varianceといい、尺骨突き上げ症候群(ulnocarpal abutment syndrome)の指標となります。

橈骨遠位端掌側傾斜(palmar tilt)

側面像にて橈骨長軸の垂線に対する橈骨遠位関節面の角度をいいます。
正常では平均8~15°程度とされています。

これらにおいては、一般的な指標となる角度や距離を把握することも重要ですが、個人差を考慮すると健側と比較することが最も重要です。
レントゲンの所見も重要ですが、介入するに当たって特に留意しなければならないのが、セラピストが作る偽関節の予防です。
負荷量や可動域訓練に取り組む時期は適切でも、十分な骨癒合が得られていない時期に不適切な力が骨折部に作用している可能性があります。
このため、骨折部の評価を丁寧に行い、リスク管理に努めることが重要となります。

リスク管理を行う上で、注意したいポイントはこれ!

リスク管理を行う上で、注意したいポイントはこれ!

1)長母指屈筋腱、長母指伸筋腱の断裂

橈骨の遠位掌側は、もともと関節縁に向かって扇のような隆起があります。
この橈骨遠位端掌側部を横走する、骨性隆起の頂点を結んだ線のことをwatershed lineといいます。
屈筋腱はこのwatershed lineの中央から尺側に位置しており、もともとの骨隆起の上にプレート分の厚みが加わると、屈筋腱とプレート間での摩擦が増えることが想定されます。
実際に掌側ロッキングプレート術後に屈筋腱断裂を起こした症例では、プレート遠位端と屈筋腱との接触が多いとの報告がされており、術中所見でも同部位での接触が損傷原因であることが同定されています。
このため、watershed lineよりも遠位に掌側ロッキングプレートが留置されている場合は、屈筋腱断裂のリスクが通常よりも高いことが想定されるため、癒合が得られるまでは慎重に関節可動域訓練を進める必要があります。
また、掌側ロッキングプレート固定後に骨折部の背側転位が認められる症例は、掌側と同様に転位骨により伸筋腱に押し上げられる負荷が加わり、同部位での断裂リスクが高まります。
このため、介入前にはレントゲンの所見を確認し、watershed lineを超えて掌側ロッキングプレートが留置されていないか、固定後に背側転位がないかを確認する必要があります。

2)三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷の合併と鑑別方法

TFCCは、内側手根橈側靭帯、尺骨手根半月、背側橈骨手根靭帯、背側橈尺靭帯などから構成される組織で、手関節の安定性と可動性の両方を担う重要な組織です。
橈骨遠位端骨折後にTFCCを合併して損傷する症例の割合は多く、手関節尺屈時に同部位の痛みが残存する傾向にあります。
術後早期は創部周囲の炎症もあるため、損傷の有無を断定しきれないことがあります。
このため、炎症の治癒経過を追いながら評価をすすめていき、リスク管理に努める必要があります。
TFCCは軟部組織なのでレントゲンに反映されませんが、近隣の骨レントゲン所見やその際の症例が訴えている症状を総括して損傷の有無を判断します。
TFCC損傷を疑う代表的なチェックポイントは、以下になります。

○尺骨茎状突起骨折の有無

尺骨茎状突起の骨折が認められる症例は、TFCCをはじめ周囲組織の損傷が疑われます。
特にTFCCは、尺骨茎状突起の基部や尺骨底部に付着するため、過度な尺屈可動域訓練や回内外可動域訓練を行うと、同部位に対する圧縮や剪断ストレスが加わり損傷を引き起こす可能性があります。
このため、一見プレート固定部とは関係のなさそうな尺骨側でのトラブルにも、留意して介入していく必要があります。

○手関節尺側部の安静時痛、運動痛、前腕回内外制限

掌側ロッキングプレート留置における手術中の侵襲は、主に橈骨側に加わるため、術後は創部周囲の炎症に由来する疼痛が生じます。
また、関節保護のため周囲筋の筋緊張も一過性に亢進するため、手関節から前腕にかけての疼痛が生じますが、留意したいのが手関節尺側部の痛みです。
創部の炎症がおさまり、少しずつ関節可動域訓練をすすめていくなかで尺側部の運動痛や同部位の安静時痛が認められると、TFCCの損傷が疑われます。
また、前腕筋の筋緊張の影響を取りきった上で前腕回内外の可動域が残存していると、TFCC損傷の可能性があります。
TFCCは遠位橈尺関節の安定性にも寄与しており、回内外における関節の運動軸が不安定になることで、関節可動域制限をきたしている可能性があります。
特に、尺屈時や回内外運動時に手関節尺側部に痛みが認められる場合には、積極的な関節可動域訓練を控えることが重要です。
痛みがありながら関節可動域訓練を実施すると、TFCCへの反復負荷により滑膜炎を起こすことで慢性的な炎症につながりかねません。

○遠位橈尺関節の不安定性

TFCC損傷を引き起こしている場合、遠位橈尺関節の不安定性は必ず評価する必要があります。
非荷重位での前腕最大回内時には尺骨頭は背側に偏位し、最大回外時には掌側に偏位します。
このため、前腕回内位と回外時での尺骨頭の偏位量と、痛みを評価する必要があります。

1)piano-key test

前腕回内位で、尺骨頭の背側転位の有無を触診にて確認します。
このとき、必ず健側との比較をすることが重要です。

2)DRUJ ballottement test

橈骨遠位を把持し、尺骨遠位部を掌背側に動かし不安定性を評価します。
掌側ロッキングプレート術後の場合、関節可動域訓練を行うに当たってこの偏位の有無を確認することは必見となります。
特に不安定性が認められる場合には、尺骨頭の掌背側転位の移動量を把握し、痛みと偏位量を抑制しながら関節可動域訓練を行うことが重要です。

ひとつの所見に縛られ過ぎず、全体を通してみてみましょう!

レントゲンの所見から得られる情報と、リスク管理についてまとめました。
ここで重要なのが、ひとつの側面からの情報ばかりを重要視し過ぎないようにするということです。
たとえば、リスクだけ考えてしまうと、極論不動にして安定させれば最悪を回避できます。
一方で、不動による筋委縮や、関節可動域制限を作ることにもつながります。
このため、患者様を取り巻く所見を総括して、現状では何が一番必要なのかを判断することが最も重要となります。
患者様に術後のリハビリを頑張ってよかった!と思っていただけるように、知識を深めてみてはいかがでしょうか。

参考:
日本整形外科学会/日本手外科学会 橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017(2020年7月27日引用)
日本整形外科学会/日本手外科学会 (旧版)橈骨遠位端骨折診療ガイドライン 2012(2020年7月27日引用)
一般社団法人 日本骨折治療学会 骨折の解説 橈骨遠位端骨折(2020年7月27日引用)

  • 執筆者

    菊池 隼人

  • 理学療法士として、整形外科に勤務する傍ら、執筆活動をしています。
    一般的な整形分野から、栄養指導、スポーツ競技毎の怪我の特性や、障害予防、 自宅でできる簡単なエクササイズの方法などの記事を書くのが得意です。
    仕事柄、介護部門との関連も多く、介護の方法を自分が指導することもあります。

    保有資格等:理学療法士、福祉住環境コーディネーター2級

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