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インスリン拒否、自己流、間食…糖尿病患者さんの困った行動に対して、看護師はこう対応してみよう!

生活習慣病と呼ばれる糖尿病。
合併症の発症および悪化を防ぐためには、継続した治療および療養が必要となりますが、なかには患者さんの困った行動に悩んでしまうこともあります。
そこで今回は、筆者が実際に経験したケースを元に、医療従事者が悩みやすい糖尿病患者さんによる困った行動への対応方法をご紹介します。

糖尿病だと?

退院間近なのに、家族がインスリン注射を拒否!

退院間近なのに、家族がインスリン注射を拒否!

脳梗塞で、利き腕である右手に麻痺が残存しているAさん(70代・男性)。
これまではご自身で行っていたインスリンの注射ですが、右手に麻痺が残存しているため、インスリン注射における空打ちやボタンを押すなどの細かい動作が行いにくくなってしまいました。
そこで奥さんに、インスリン自己注射の補助をお願いすることになったのですが、そのお話しをした途端、奥さんの表情は一変。
「注射を手伝うなんてとんでもない。怖いし、関わりたくない。やれというのなら退院させず、そのまま施設を探します」
そう告げてきました。

●まずは見学から始めてみる

インスリンの導入にあたっては、患者さんご自身であっても、針を自分に刺すことが怖いという理由でインスリン自体を拒否する、というケースはよく見られます。
それが自分自身ではなく、家族に対して行うものならなおさら、その恐怖は相当なものでしょう。
では、どうすればその恐怖を払拭することができるのでしょうか。
一番のいいのは「インスリン注射=怖い」というイメージを払拭することです。
そこで、まずはインスリン注射の場面を見学してもらうことから始めてみましょう。
注射に対して怖いと感じている方の多くが、「注射=予防接種のように太い針で刺すから痛い」というイメージをもっています。
そのため、実際にインスリン注射の様子を見てもらうことで、「インスリン用の針は髪の毛と同じくらい細い」こと、そして「針が細いので痛みを感じることは少ない」の2点を確認してもらいます。
そしてこの2点を知ってもらうことで「これだったらできるかもしれない」と思ってもらうことが大切です。

●拒否が強い場合は家族の補助以外の方法を考える

見学をしてもなお、「私には無理です」と拒否が強いケースもあります。
このとき、病院側としては退院に向けて「帰るためにはなにが何でも家族に手技を獲得してもらわないと」と考えてしまいがちです。
しかし本当にそうでしょうか?
実は「インスリン注射は治療として必須だが、家族が拒否している場合、そのインスリンを家族以外が行う」という方法もあります。
実際に筆者が担当したケースでは、主治医と相談し、インスリン注射の回数をまず1日4回から1日1回へ変更しました。
そして、インスリン注射の補助を奥さんではなく、平日はデイサービス、土曜日はかかりつけのクリニック、日曜日は近隣に住むお嫁さんへ依頼しました。
インスリン注射は本人および家族が行うものと思いがちですが、それはあくまで医療者の考えであり、「どうしても打ちたくない」という家族の思いを無視してしまうことになりかねません。
医療は患者さんと、その家族が主体です。
そのことを踏まえたうえで、対応を検討する必要があります。

自己流の療法を多数取り入れてしまう

心筋梗塞の既往がある、Bさん(60代・男性)
糖尿病と診断されてから、朝起きてすぐの散歩や糖分制限食など、ご自身が糖尿病に対して良いと思ったことは積極的に取り入れられる一方、看護師が渡す糖尿病についてのパンフレットには見向きもせず、「俺は俺のやり方でやる」と拒否されてしまいます。
奥さんも「この人は頑固で、一度自分がこうだと思ったらほかはなにも目に入らなくなってしまう」と困っている様子です。

●患者さんの療法をまずは受け入れる

糖尿病という疾患は、生活習慣と直結しやすい病気であるゆえに、症状改善にはご自身の「改善したい」という意欲がなにより重要です。
今回のケースでは、確かに自己流ではあるものの「糖尿病を良くしたい」という思いは人一倍ある患者さんだといえます。
よってこの意欲を維持したまま、さらに良い療法を取り入れてもらうことが、医療者側の目標となります。
そこで筆者は、パンフレットとともに「ご自身では、この部分をどのようにやられていらっしゃるのですか?」と、まずはこちら側から伝達するのではなく、Bさんご自身の考えを受け取るようにしました。
そして患者さんの思いをひととおり伺ったあと「現在は朝起きてすぐに運動されていますが、朝ごはんを召しあがったあとに運動されると、効果がより期待できますよ」と、あくまでご本人の考えを否定しないようにしながら、より効果の上がる方法として、推奨されている方法を提案するようにしました。
そうすることで、Bさんも「そうか、そうするとより良いのか」とすんなりこちらの指導を受け入れてもらえるようになりました。
自分の考えを真っ向から否定されてしまうと、誰しも良い気持ちはしません。
一度患者さんの思いを受け止めることが、大切になります。

喫茶室で偶然、間食を発見!

喫茶室で偶然、間食を発見!

Cさん(50代・女性)はとても社交的な方です。
同じお部屋の患者さんとも談笑する姿がよく見られ、面会時間にはお友達がいつも面会に来ています。
ある日、筆者が患者さんのお迎えのために偶然通りかかった喫茶室にて、お友達と一緒にケーキを食べているCさんを見つけてしまいました。
Cさんは血糖コントロールが悪いからと内服コントロール中であり、もちろん間食は禁止です。
先日も食事指導にて3食きちんと食べ、間食は控えましょうというお話をしたばかりだったのですが…。

●本人へ直接指摘はしない

間食を見つけたとき、つい「間食は禁止されていますよ」と指摘したくなってしまいます。
しかしここで指摘してしまうことは、患者さんにとってまさに「痛いところを突かれる」行為であり、責められていると感じてしまうことから、その後の信頼関係に大きく影響を与えかねません。
そこで筆者は、あえてその場ではなにも言わずにそっと立ち去るとともに、まずはチーム間、そして主治医へ間食があったという情報の共有を行いました。
ケーキを食べたという事実は、食前の血糖測定にてすぐにわかってしまいます。
そこで、次の血糖測定時に「あれ?いつもより少し血糖が高いようです。どうしたんでしょうか」と、あくまでご本人には間食を見つけた事実は伏せつつ、「なぜ血糖値が上がったのか」を、Cさんご自身に振り返ってもらう機会をつくりました。
直接指摘しないことで、Cさん自身に「間食をすることで血糖値が急上昇し、悪影響を及ぼしやすい」ということに気づいていただくようにしたのです。
この一件以降も、夕前血糖が不自然に上がることが何回かありました。
しかしその都度、直接間食のことには触れず「今日はとても高いですね。なにかありましたか?」とご自身で振り返ってもらうようにしたことで、少しずつその頻度は減り、最終的には急上昇することはなくなりました。

まとめ

糖尿病は、周囲がどんなに環境を整えたとしても、結局はご自身およびそのご家族がどれだけ日々の暮らしに取り入れることができるか、にかかっています。
あくまで医療者は患者さんとその家族の援助を行う立場であり、主役ではありません。

どうしたら受け入れてもらえるか?ではなく、患者さんやその家族にとってどうすれば一番良い結果が得られるのかを考える。
ここが糖尿病看護の難しいところであり、またやりがいを感じられる部分ではないでしょうか。

参考:
安酸史子他:「ダメ」と言わない患者指導!できるナースのテクニック:糖尿病ケア 2014年9月号:pp29-36 pp46-51
藤田成祐:血糖コントロールの疑問Q&A:ナース専科 2017年11月:pp47-49

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