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クリニック・治療院 OGメディック

  • 中村慎也

    公開日: 2020年10月30日
  • 患者さんのケア

上腕骨近位端骨折後のリハビリについて!整形外科で働く理学療法士が解説します

上腕骨近位端骨折は高齢者の骨折で橈骨遠位端骨折、圧迫骨折に次いで、3番目に多い骨折です。
骨折後は保存と手術が選択されますが、多くは保存が選択されます。
一定期間の固定を経て骨癒合の経過とともにリハビリが開始されますが、上腕骨近位端骨折の予後は早期のリハビリが重要であるといわれています。
今回は、上腕骨近位端骨折のリハビリについて臨床の中で特に留意すべき点を紹介していきます。

上腕骨近位端骨折後の治療とリハビリ

上腕骨近位端骨折は保存と手術が選択される

上腕骨近位端骨折は保存と手術が選択される

上腕骨近位端骨折は50歳以上の割合が85%を占めており、3:7で女性に多い骨折です。
転倒による受傷機転が多く、低エネルギーのため転位が少なく多くは保存治療が選択されます。
残り約20%が複雑骨折などにより手術が必要になります。
医師による診察でレントゲン像やMRIの検査後に保存か手術かが決定されます。

●保存療法について

骨折部にレントゲン上で転位が少ない場合の多くは保存療法を選択されます。
骨癒合までの間は三角巾を使用し固定期間があります。
年齢、性別による差はありますが、約3週間固定します。
この期間からリハビリは開始されることが多く、良肢位の指導、肩甲帯や肘関節、手関節、手指といった患部外の拘縮予防を進めていきます。

●手術療法について

骨折部の転位が強い場合や、骨折部の血行が損なわれている場合は手術が選択されます。
術式はコッキングプレートでの固定、人工骨頭があります。
手術後も固定期間はありますが、固定力が強いため保存にくらべ固定期間が短いことが多いです。

早期からのリハビリが重要!

早期からのリハビリが重要!

骨折後は保存療法、手術療法ともに固定期間がありますが、この時期は上肢の同一姿勢が続くため肩関節を中心に肩甲骨、肘関節、手関節の拘縮を予防していくことが重要です。
また、筋肉も緊張しやすく軟部組織の柔軟性を確保していくことが重要です。
そして、固定による複合肩関節のアライメントの変化に留意しなければいけません。

●ポジショニングの重要性

固定期間は日中固定時と就寝時のポジショニングが非常に重要になります。
固定方法によりますが、三角巾の装着時に患者さん本人で行うと、首から垂れ下がってしまっている状態になる場合が多いです。
複合肩関節の正常アライメントを理解して指導していくことが重要です。
また、この時期は肩への不安感や、恐怖心に伴い肩関節周囲の筋緊張が高まりやすいため、ポジショニングは非常に大切です。

○正常アライメントを意識した三角巾の注意点

肩甲帯

上方への牽引を確実に行います。
上方への牽引が弱いことで肩甲帯が下制位となり肩甲骨が下方回旋位になります。
下方回旋位の状態が続くことで肩峰下圧が上昇するため痛みが増強しやすいといわれています。

肩関節

腋窩にタオルなどを挟み、肩関節約30°外転位となるようにします。
外転0°の状態を避けて固定を行うことで肩上方軟部組織の伸長ストレスを軽減するようにしましょう。

○就寝時のポジショニング

仰臥位

体幹軸と平行になるように患側上肢下にバスタオルなどを入れます。
肩関節軽度外転、軽度屈曲位になるようにバスタオルなどを入れます。

側臥位

仰臥位と同様に肩関節軽度外転、軽度屈曲位となるようにバスタオルなどを入れます。
いわゆる抱き枕のようにポジショニングします。

周辺関節へのアプローチを忘れないこと

周辺関節へのアプローチを忘れないこと

●代償運動が出現しやすい

骨折による侵襲と不活動による影響でリハビリ開始早期は僧帽筋上部繊維や、肩甲挙筋の肩甲帯挙上筋群の過剰収縮、前鋸筋の収縮不全により、上肢挙上を肩甲帯挙上で代償する運動パターンが多くみられます。
この代償による運動パターンを定着させないために正しい筋収縮を早期から再教育していき、肩甲帯の安定性を確保していくことが重要になります。

point
代償運動パターンを定着させないように、早期から肩甲帯挙上を抑制する僧帽筋中・下部繊維、安定性に関与する前鋸筋の選択的なアプローチが重要になります。

リハビリ内容と留意点

リハビリ内容と留意点

○三角巾装着時期

骨癒合を考慮し肩甲上腕関節の運動は控えなければいけません。
そのため、拘縮を予防する目的と、筋萎縮を予防する目的で主に、患部外の肩甲帯、肘関節、手関節、手指に対して介入していきます。

point
特に肩甲帯周囲の筋肉の柔軟性を確保することが重要です。

○三角巾抜去早期

医師の指示のもと、動かせる範囲内で肩甲上腕関節の可動域を出していきます。
不安感などによる筋緊張が高くなりやすい時期のため、他動での可動域訓練が良いとされています。
また、この時期は固定期間の影響で肘関節の伸展制限が出やすいため、同時に肘関節の可動域訓練も行います。

point
筋緊張が低下している状態で行うことが重要です。

○骨癒合確認後

この時期は可動域制限の指示が解除され、積極的に介入していく時期です。
痛みに合わせて自動運動も取り入れていきます。
リハビリ介入以外での自主トレも積極的に指導します。

point
代償運動が出やすい時期であるため、鏡を利用し筋再教育を図っていくことが重要です。

※リハビリプロトコルが施設、病院単位で散見しているのが現状です。
また、リハビリ内容が骨折型に左右される部分が多いですが、以上の内容は、保存、術後ともに臨床上重要になります。

リハビリ機器を用いて効率化させる

前述した通り、上腕骨近位端骨折は早期に可動域を獲得していくことが非常に重要です。
骨折後は不安感や恐怖心で筋緊張が高くなりやすいため、他動的に可動域拡大を図っていくことが重要になります。
リハビリ機器を使用することで効率の良いリハビリが可能となります。

○肩腕挙上運動梯子

直線型36段と湾曲型46段の2種類の梯子となっています。
患者さんご自身で他動的に挙上の可動域運動が行えます。
段数を数えつつ行うことで客観的にも評価できるためリハビリに対するモチベーションの維持もできます。
前方挙上も行えますし梯子に対して横向きで行うことで外転の可動域の拡大も図れます。

○オムニローダー交互滑車運動器

電気制御式負荷機構を備えた交互滑車運動器です。
肩腕挙上、自動介助運動に加えて抵抗運動を安全に行えます。
運動負荷、回数の設定も可能であるため定量的なリハビリが行えます。
また、運動速度の目安となるピッチ音報知機能も搭載されています。
※ある程度の可動域が確保されている状態で行う必要があり、痛みに合わせて行うことが望ましいです。

○肩関節回旋運動器

肩関節の可動域の拡大、筋力の強化を目的としています。
挙上、伸展、外転、内転を行えるため多方面の可動域、筋力の改善が可能です。
高さの調節も可能であるため、患者さんに合わせて調節が可能です。
※ある程度の可動域が確保されている状態で行う必要があり、痛みに合わせて行うことが望ましいです。

リハビリ介入以外でも自主トレとして指導することで効率の良い肩関節の機能改善が見込めます。
機器を利用する場合は上腕骨近位端骨折後の状態をセラピストが十分に評価し、正しいフォーム、使い方で利用することがより重要です。

参考:
篠崎俊郎, 野口蒸治, 他: 上腕骨近位端骨折に対する保存療法の検討. 整形外科と災害外科56(3): 499-502, 2007.
福島秀晃, 森原徹, 他: 肩関節屈曲における前鋸筋下部線維、僧帽筋下部線維への選択的運動療法の試み. 総合リハビリテーション37(2): 145-150, 2009.
OG Wellness 総合カタログ2020(2020年10月25日引用)

  • 執筆者

    中村慎也

  • 大学卒業後、回復期リハビリテーション病院で理学療法士として従事し、現在は整形外科クリニックにて勤務しています。非常勤として訪問看護ステーションで訪問リハビリも行っています。
    これまで、総合病院へ研修、勉強会等、積極的に取り組んで参りました。
    急性期?慢性期に至るまで幅広く経験させて頂いた経験を生かし、誰が見てもわかりやすく根拠のある記事をお届けしたいと思っています。

    保有資格:理学療法士、福祉住環境コーディネーター2級

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