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#看護 #診察・診断

認知症をひとくくりにしない。病型ごとに異なる関わり方。看護で予後も変化する

日本の65歳以上の認知症患者さんは600万人といわれています。
私たち看護師も、実際の働く現場で認知症の患者さんが多いと実感します。
認知症患者に対する看護は、病型によって多少異なるのです。
この記事では、認知症の疾患別の看護についてお伝えします。

患者さんの認知症の病型を把握していますか?

認知症の種類・原因疾患

1)認知症とは

認知症は、脳の機能的・器質的な不可逆性の変化により起こる病態で、認知機能の低下により日常生活に支障が出るものをいいます。

2)認知症の原因疾患

神経性疾患であるアルツハイマー型認知症、脳の疾患である脳梗塞・脳出血が代表的なものですが、このほか悪性腫瘍である脳腫瘍、髄膜炎などの感染症、代謝性疾患も認知症疾患になりえます。
日本で認知症の原因となるのはアルツハイマー型認知症が最も多く、ついでレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症です。

アルツハイマー型認知症の看護

記憶障害・見当識障害・判断力の低下 アルツハイマー型認知症

中核症状には記憶障害・見当識障害・判断力の低下があります。
発症初期には行動範囲が広く、20km以上離れた隣町まで自転車で移動し、迷子になったという患者さんの話を聞いたことがあります。
見当識障害があるため、自分のいる位置がわからず、帰路がわからなくなるのです。
病棟・施設内などでアルツハイマー型認知症の方と関わる場合は、居室からいなくなるなどの恐れがあるので注意して観察します。
病室からトイレに行った後など、自分の部屋がわからなくなることもありますので、患者さんが迷っていないか見守り、誘導が必要です。
このほか周辺症状にもの盗られ妄想、介護・看護の拒否があります。
もの盗られ妄想については、妄想を掘り下げると症状が悪化しますので、やんわりと話を変え、話をそらすようにします。
介護・看護の拒否は入浴・内服などを嫌がるという行動に現れます。
拒否には羞恥心・看護師に慣れていないなど不安を感じている場合もあるのです。
必要な処置・援助なども無理強いはせず、別のことに気をそらしながら、何気なく誘導する方法がお勧めです。
たとえば、入浴を嫌がる患者さんに対し、「今日のお湯加減良いってほかの患者さんが言ってましたよ。少し見に行ってみましょうか。」と誘うような感じで声掛けをします。
こまめに声掛けをすることにより、患者さんが安心感を持ち、看護師の話を聞いてみようかなと思ってもらえることが大切なのです。

レビー小体型認知症の看護

幻視・失禁など症状はさまざま レビー小体型認知症

前頭葉と側頭葉の萎縮を認め、個々の病態によって、幻視の症状が強い方、パーキンソン症状や痺れ、失禁などの症状が強い方などさまざまです。
記憶力の低下はアルツハイマーにくらべると軽度といわれます。
幻視については患者さん自身が一定の方向に指をさして、何もないのに「何かいる」と言うときもあれば、じっと幻視がある方向を見つめて行動が止まる場合もあります。
幻視についても強く否定せず、話をそらすようにしましょう。
記憶力の低下・認知機能の低下はあっても、悲しいなどの感情は残っているので、否定をすると傷ついたり混乱したりして、認知症が悪化するケースもあるのです。
失禁については早めに気づいて保清を心がけ、痺れについては手指のマッサージや手浴などが効果的です。

前頭側頭型認知症の看護

意欲の低下・発語量の減少 前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は大脳の前頭葉と側頭葉が萎縮する疾患です。
ADLは初期には保たれますが、徐々に意欲の低下・同じ道ばかりを散歩するなどの常同行動・発語量の減少などが見られます。
季節感もわからなくなり、たとえば気温の高い夏にセーターを着るなどの行動が見られます。
声掛けをしないと毎日同じ服を着ようとしたり、集団で行うレクリエーションにも参加しない、入浴も面倒だというなどの行動が見られます。
一見だらしなさが強くなるように感じますが、それは脳の萎縮によるもので、症状であることを理解して関わることが必要です。
真夏にセーターを着て多量に発汗し、脱水になる恐れや、同じ食物ばかりを摂取し、栄養状態の悪化を招く恐れがあります。
日常生活全般について、食事・保清・他者とのコミュニケーションが取れているかを観察し、できていない部分はうながす必要があるのです。

認知症は病型別に観察ポイントが異なる

認知症は疾患の病型別に注意すべきところが多少異なります。
患者さんの病型と現在の進行度を把握し、これに沿った対応をする必要があるのです。
いずれの認知症も記憶力の低下や意欲の低下はありますが、感情は健在です。
悲しい気持ちやプライドはあります。
精神的にダメージを受けると病状が悪化することがあるので、患者さんを尊重し、丁寧な対応を心がけるようにしましょう。

参考:
内閣府 平成28年版高齢社会白書(概要版) 3  高齢者の健康・福祉 第1章 高齢化の状況(第2節 3)(2021年5月24日引用)
厚生労働省 こころの病気を知る 認知症(2021年5月24日引用)
健康・体力づくり事業財団 認知症の原因疾患(2021年5月24日引用)
新潟大学脳研究所附属生命科学リソース研究センターバイオリソース研究部門 アルツハイマー病について(2021年5月24日引用)
難病情報センター 前頭側頭葉変性症(指定難病127)(2021年5月24日引用)

  • 執筆者

    島谷 柚希

  • 小児外科・整形外科病棟・総合病院の外来などを経て2015年より医療・看護ライターに。並行して派遣看護師としてデイサービス・整形クリニック・健診機関などで勤務しています。看護師歴は20年以上。看護の知識と実践で得たことを糧に、読者様にわかりやすい記事を届けます。

    保有資格:看護師・介護支援専門員

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