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深部静脈血栓症(DVT)は疼痛があるって本当?経験した看護師が語る、症状のつらさと患者が苦戦する予防法とは

手術や長期臥床などが誘因となって起こる、深部静脈血栓症(以下、DVT)。
予防法は病棟で多く取り扱っている一方、実際にDVTを発症したというケースに合った看護師は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、実際にDVTを発症した筆者が、病態から発症によるつらさ、そして実際に行っている予防法について、ご紹介します。

血栓形成における3つのメカニズムを把握しよう

DVTを理解する上でまず大切なのは、血栓形成に至る3つのメカニズムを把握することです。
そこで血栓形成における3つのメカニズムを解説します。

1)血流停滞

静脈血やリンパ液は、周囲の筋肉の収縮・弛緩にあわせて隣接する静脈の弁が開閉する筋ポンプによって、重力に逆らって心臓方向へ戻ることができます。
しかし、筋ポンプの作用が弱くなり、血流が悪くなると、血小板や凝固因子が血管内皮と接触しやすくなることで、血栓が形成されやすくなります。
病院内では長期臥床や、長時間同じ姿勢を取っていることなどが原因となりやすいですが、それ以外にも妊娠や下肢静脈瘤など、たとえ寝たきりかそれに近い状態でなくても発症することがあります。

2)血管内皮障害

手術や外傷などによって血管内皮が傷害を受けると、その傷を修復するために凝固系が活性化します。
このとき、凝固系が活性化することで血栓が形成されやすくなります。
血管内皮傷害による血栓形成は、主に腹部や骨盤内、下肢に対して手術を行った場合や、骨折、カテーテル検査、外傷によって引き起こされると考えられています。

3)血液凝固能亢進

悪性腫瘍や炎症などにより放出されるサイトカイン(さまざまな刺激によって白血球などの細胞から放出されるタンパク。マクロファージやTh1細胞などがそれにあたる)や、血液凝固システムの破綻などによって凝固能が亢進されることで、血栓が形成されやすくなります。
血液凝固能を亢進させる病態としては、悪性腫瘍や感染症、脱水や熱傷、骨折や手術などがあげられます。

これら3つの要因のうち、特に骨折、手術、妊婦の場合は血栓形成のメカニズムの複数を兼ねているため、DVTをより発症しやすい状況になります。
よってこれらの事例では事前に間欠的空気圧迫法や弾性ストッキングを着用することで、発症を防ぐ必要があります。

●災害時は特にDVT発症に注意が必要な理由

災害時は、血栓形成によるメカニズムに当てはまりやすい状況下であるといえます。
先ほどあげたメカニズムに災害時の状況を当てはめてみると、

  1. 1)活動性が低下するため、血流が停滞しやすい
  2. 2)災害時に打撲等外傷を負うことで、血管内皮が傷害されている
  3. 3)水分補給が十分に行えないために、凝固能が亢進されやすい

となり、DVTを発症しやすいことがお分かりいただけるかと思います。
実際に筆者も東日本大震災で被災し、避難所で2週間ほど生活しました。
筆者の場合は原発被災だったために避難先は居住地より遠く離れており、日中は家の片づけを行うといったこともできず、狭い場所でじっとして寒さに耐えるような状態でした。また、水道が止まっていたためにトイレの回数も制限されており、物資不足から飲み水の確保も難しいなど、血栓を発症しやすい条件がそろっている環境下での生活を、余儀なくされました。
熊本地震においても、車中泊を余儀なくされた方がエコノミークラス症候群を発症したことが原因で死亡したと推測されるケースが報告されていることから、災害時は看護師として、この3つのメカニズムを正確に把握した上で、予防方法を導きだすことが求められます。

DVTを発症しても、見た目上変化がないこともある

DVTを発症すると、下肢の腫脹やうっ血による皮膚の色調変化、他にも表在静脈の怒張などがみられる、とされています。
しかし実際には、下肢の色調は正常から青紫、赤紫まで重症度によってさまざまであるほか、足部を背屈させることによって腓腹部(ふくらはぎ)に疼痛が出現する「ホ―マンズ徴候」が現れないこともあるなど、目に見える症状だけでは判別が難しいケースもあります。
筆者がDVTを発症した際、現れた症状としては強い疼痛のみだったので、始めは神経疾患を疑われ、MRI検査まで行いました。
検査上異常所見が見られなかったため、念のためと行った血液検査でDダイマーが高値を示しており、静脈エコーにてやっと確定診断となりました。
筆者の場合は疼痛という症状がありましたが、DVTを発症しても疼痛等の症状が全くなく、血液検査によってはじめてDVTを発症していることがわかったケースもあるため、看護師として常に患者さんはDVTをいつ発症してもおかしくないことを念頭に置き、異常の早期発見に努める必要があると考えます。

弾性ストッキング着用よりも、飲水習慣を身に着けるほうが大変!?

DVTの予防として最も一般的なのは、弾性ストッキングの着用ではないでしょうか。
筆者はDVT発症後、季節にかかわらず日中は必ず弾性ストッキングを履き、再発予防をしています。
しかしそれ以上に対策として重要なこと。
それは、飲水習慣を身に着けることです。
血液凝固能亢進の原因として、脱水が挙げられていますが、皆さんの中にも、仕事が忙しすぎる、あるいはトイレに行く回数を減らすため、水分を十分に取らない、という方もいるのではないでしょうか。
実際に筆者も飲水習慣がなく、仕事中の水分補給は夏でも500mlのペットボトル1本で間に合ってしまうほどでした。
DVT発症後、飲水をこまめに取らなくてはいけないと頭では分かっていても、仕事中などはついいつも通り仕事をしてしまうため、気が付くと1日あたり500ml未満の飲水量で終わってしまうことがありました。
よって、あえて2リットルのお茶をたくさん買い、2リットルのお茶を朝開封して夜寝る前に飲み終わるよう、意識することでようやく、飲水習慣をつけることができました。
このように、飲水習慣をつけることはさまざまな工夫が必要となるため、患者さんへDVT予防についての指導を行う際は、ぜひストッキング着用以上に水分補給を意識することを重点的に指導してもらえたら、と思います。

まとめ

DVTを発症した時、筆者はまだ20代後半でした。
主治医は、看護師で発症したケースは珍しいとしながらも、水分不足による脱水と、治療のために飲んでいた中等量ピルが発症の原因ではないかと推測していました。
筆者が処方してもらっていた婦人科では、定期的な血液検査がないことで発見が遅れたため、治療によるピルを処方してもらう際には、必ず血液検査を定期的に行っている婦人科にて処方してもらうことを、強くお勧めします。

参考:
岡庭豊:病気がみえる Vol.2 循環器:メディックメディア社:東京:2017:pp302-307
岡庭豊:病気がみえる Vol.6 免疫・膠原病・感染症:メディックメディア社:東京:2016:p11
毎日新聞 熊本地震 関連死3割が車中泊 「健康確認、態勢確立を」(2018年3月12日引用)

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