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話題のマインドフルネスで心をスッキリ!精神科医療・リハビリへの応用可能性を探る

皆さんは「マインドフルネス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
日本では「瞑想法」としてブームになっていますが、実は医療や心理学の分野で非常に注目を集めているものです。
実際に体験してみると、物事に集中できるようになったり、ストレスを解消できたりすることが実感できる方が多いです。
今回は、Google社が実践している取り組みを一部ご紹介したうえで、マインドフルネスを精神科医療・リハビリに応用していくことができる可能性について探っていきます。

世界各国で実践されている「マインドフルネス」で期待できる効果

毎日の生活の中で、人間が頭を使って過ごす時間は非常に長いです。
今日の出来事について考えたり、明日の予定を立てたり、不快に感じたエピソードを思い返したり…。
頭の中がこうした考えでいっぱいになっていると、無意識のうちにストレスは感じますし、心が疲弊していきます。
自分の心を健康に保ったり、集中力を高めたりする目的で、世界各国で「マインドフルネス」が実践されています。
マインドフルネスとは、そもそも「Mind(=心)」と「Fulness(=満たされること)」という2つの言葉を組み合わせたものであり、過去や未来のことではなく、「今」という瞬間に意識を向けるものです。
マインドフルリーダーシップインスティテュートによると、「今をありのままにしっかりと認識するという心の在り方」と定義されています。

Google社に学ぶ!マインドフルネスの考え方と実践例

毎日を忙しく過ごすビジネスパーソンからも、マインドフルネスの考え方は注目を集めています。
有名なエピソードとして、Google社の社員がマインドフルネスに取り組んでいるというものがあります。
Google社におけるマインドフルネスの位置づけや実践方法を解説していきます。

●Google社のユニークな取り組み

Google社といえば世界の大企業ですが、世界各国のオフィスでユニークな取り組みをしています。
どうすれば社員がストレスなく過ごせるかを重視した会社であることはよく知られており、無料の社員食堂があったり、愛犬を職場に連れていくことができたりと、働くための環境が充実しています。
Google社の取り組みの中にユニークなものは多く存在しますが、社員研修の一環として実施しているマインドフルネスのプログラムは注目を集めています。
マインドフルネスによって、ストレスの軽減、クリエイティビティやリーダーシップの向上を目指しています。

●Google社の「Search Inside Yourself」

Google社では2007年に開発した「Serch Inside Yourself」というマインドフルネスのプログラムに取り組んでいます。
日本語でも「サーチ・インサイド・ユアセルフ」というタイトルで本が出版されており、マインドフルネスの実践法がいくつも紹介されています。
この本のなかには、単純にぼんやりと「瞑想する」という方法論ではなく、さまざまなバリエーションでマインドフルネスの実践方法が書かれています。
筆者が比較的取り組みやすいと感じた例を一つご紹介します。

●まずは、じっと床に立ち、体に注意を向ける。
●床に接地した足にかかる圧力を意識する。
●片方の足で一歩前に踏み出し、続いて反対の足を前に出す。
●足を上げるときには「上げている、上げている」と心のなかでつぶやいても良い。

この例はなにを意味しているのかというと、「今」という瞬間に注意(意識)を向け、「マインドフルな歩行」を実践しているといえます。
普段、特になにも意識せずに歩いていると、ほかのことへ注意が向いたり、あれこれと考えを巡らせたりしている方も多いことでしょう。
自分の体の動きに注意を向けるように意識してみると、多くの事柄に注意が分散されなくなります。
この実践は、過去や未来のことではなく、「今」という瞬間で心を満たすことで、ストレスの軽減や集中力の向上に寄与するというものの代表例です。

●意外と難しい?マインドフルネスを体験してみよう!

上述した「マインドフルな歩行」を実際にやってみると、「その瞬間」に注意を向けることは意外と難しいものであることが分かるはずです。
筆者の場合、最初のうちは自分の体に意識を向けていても、途中で時計の針の音が気になったり、その日の夕食について考えたりしてしまいました。
一度で要領を得るのは難しいため、日常のちょっとした場面で繰り返し実践し、少しずつコツをつかんでみてください。
ちなみに、座っているときには、お腹が膨らむ・縮む動きだけに注意を向けてみることも実践しやすいのでおすすめです。
サーチ・インサイド・ユアセルフの著者は、トイレに行く際などちょっとした時間に実践し、安らぎを感じたり、創造的思考ができる状態を作ったりしているようです。

普段の生活の中で、あれこれと考えが頭をよぎる瞬間はありますし、ときにはその思考がネガティブなものになることもあります。
マインドフルネスの実施によって、思考をスッキリさせ、心をリフレッシュさせることができるといえるでしょう。
実際のマインドフルネスではその瞬間の「感情」にフォーカスすることも行いますが、まずは自分の体の動きへ注意を向ける練習をしてみると取り掛かりやすいです。

医療・リハビリでも広がる可能性 マインドフルネスの臨床応用を考える

マインドフルネスをうまく活用できると、ストレスの発散・集中力の向上・リラックスをはじめ、創造的思考を保つことにも直結します。
こうした実践を医療・リハビリの現場に応用していける可能性について考えていきます。

●マインドフルネスは精神科の治療に役立つ?

マインドフルネスによって得られる効果は心理的なものが中心となるため、精神科医療への応用に関心を持っている方が多いです。
筆者の知人作業療法士が、自分でマインドフルネスをやってみたところ患者さんにも応用できそうだと感じ、勤務先の病院で実施するリハビリでも部分的に取り入れていると述べていました。
精神科の作業療法では、手工芸や運動、集団活動などを通して必要なリハビリを行っていきますが、その患者さんに必要であればさまざまな方法(作業)を用いることができるのです。
精神科の患者さんでは、思考・認知がゆがんでネガティブな感情を持ってしまったり、不安や焦燥に駆られていることも少なくありません。
たとえば、うつ病の患者さんでは、過去の失敗のこと・将来への不安ばかりが頭をよぎってしまうことも多いですが、そうした思考から解放される必要があります。
マインドフルネスによって、不安や抑うつの患者さんが、過去・将来に関わるネガティブな思考から解放され、安らぎを得ることができる可能性も考えられます。
マインドフルネスは、精神科でよく行われる認知療法・自律訓練法にも通ずるものがあるため、応用される可能性は十分にあるでしょう。

●マインドフルネスの科学的根拠に関する見解

マインドフルネスで心理面への効果があったとする報告も多く存在しますが、Van Damら(2018)は、マインドフルネスの効果に関するレビューのなかで、否定的な見解を示しています。
過去のマインドフルネスの研究を調べてみると、研究デザインにおいて対照群を設置していないこと、そもそもマインドフルネスの方法が標準化されていないことなどが課題として浮かび上がりました。
方法論的な課題が多くあったことから、応用に関しては懸念があると報告しているのです。
一言で「研究」といっても、研究デザイン・対象者・サンプルサイズ・介入方法など、さまざまな要因の影響を受けるため、こうした要因を統制している研究では質が高いと評価されます。
世界各国では、個人の経験というレベルでマインドフルネスの効果を実感している方は多いので、今後は科学的な見地からさらなる効果検証が期待されます

まとめ

マインドフルネスについては、書籍やテレビでも多く取り上げられるようになり、注目度が高まりました。
臨床応用に関心のある方は、まず自分で挑戦してみると、その効果やコツなどを捉えることにつながります。
実際にトライすることで、精神科をはじめとして、医療現場への応用可能性を探ることができるのではないでしょうか。
患者さんへの応用について考えられることはもちろん、自身の心がスッキリしたり、集中力がアップしたりといった効果も得られるかもしれません。

参考:
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート マインドフルネスとは(2018年3月14日引用)
チャディー・メン・タン: サーチ・インサイド・ユアセルフ 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法. 柴田裕之(訳), 英知出版, 東京, 2016, pp.97-99.
Van Dam NT, van Vugt et al.:Mind the Hype: A Critical Evaluation and Prescriptive Agenda for Research on Mindfulness and Meditation.Perspect Psychol Sci13(1):36-61,2018.(2018年3月14日引用)
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