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患者さんのケア

脳外科看護師から整形外科・リハビリテーション科の看護師さんへ伝えたい、脳神経外科患者さんのアセスメントポイント

整形外科、リハビリテーション科は脳神経外科と関わりの深い診療科です。
それゆえ、脳外科視点のアセスメント能力も必然と求められるようになります。
本記事では、意識レベルの評価を中心に、患者さんの症状を正確にアセスメントすることの重要性を筆者の経験を交えてお伝えします。

脳卒中は再発しやすい!基礎疾患に注意

整形外科・リハビリテーション科には脳梗塞や脳出血などの後遺症で入院・通院されている患者さんも多いでしょう。
脳梗塞や脳出血のエピソードは過去のものと捉えられがちですが、決してそうとはいえません。
脳血管障害のなかでも、脳梗塞や脳出血に代表されるいわゆる「脳卒中」は、常に患者数の多さや介護が必要になる原因の上位となっています。
医療費においても脳卒中が占める割合が大きいなど、実にさまざまな問題を抱えています。
そしてこれらの問題には、脳卒中の再発率の高さが大きく影響しているといえます。
筆者が脳神経外科に勤務していた約10年の間にも、多くの患者さんの再発を目の当たりにしてきました。
2回、3回と再発を繰り返し、寝たきりあるいはお亡くなりになる患者さんもいました。
なかには、回復期のリハビリテーション中に再発した患者さんもいます。
それにしても脳卒中は、どうしてこんなにも再発しやすいのでしょうか?
その理由は、ベースとなる疾患によるところが大きいです。
脳卒中の基礎疾患には、高血圧や動脈硬化、高脂血症、糖尿病など、生活習慣に関係しているものが多いのです。
これらの疾患をコントロールするには服薬治療だけでなく、生活習慣を見直し、かつその生活を継続しなければなりません。
基礎疾患のコントロールがうまくいっていないとき、また複数の基礎疾患を持っているときは再発リスクがさらに高まります。
こうした傾向を念頭に入れ、もし脳卒中後の患者さんが急変したら、再発も疑ってアセスメントをしてみてください。
整形外科・リハビリテーション科にいらっしゃる脳卒中後患者さんは、再発のハイリスク群なのです。

急変?意識レベルを正確にアセスメントすることが大切

どの診療科においても行われるフィジカルアセスメント。
脳神経外科で最も重要なのは、意識のアセスメントです。
意識のアセスメントにおいては、意識の状態がどうあるのかを、正確に経時的に、観察・評価していきます。
このとき、看護師によって評価が変わってしまうようではモニタリングの意味がありません。
アセスメントは、統一された観察項目のもとに評価する必要があり、そのために脳神経外科ではJCS、GCSなどのスケールが広く使用されています。
この2つのスケールについて以下で解説していきます。

●JCS(Japan Coma Scale)

JCSでは覚醒しているかが評価のポイントになります。

Ⅲ 刺激で覚醒しない 300 痛み刺激にまったく反応しない
200 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる
100 痛み刺激を払いのける動作をする
Ⅱ 刺激で覚醒する 30 痛み刺激を与えつつ呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する
20 大きな声または揺さぶることにより開眼する
10 普通の呼びかけで容易に開眼する
Ⅰ 覚醒している 3 自分の名前が言えない
2 見当識障害がある
1 だいたい清明だが、今ひとつはっきりしない

このほかにR(不穏)・I(失禁)・A(自発性喪失)などの情報を付加してJCSⅡ-20-Iなどと表します。

●GCS(Glasgow Coma Scale)

GCSは開眼・言語・運動の3つのポイントで点数をつけ、合計点で評価します。
経時的に評価して点数の推移をみることで、わずかな変化に気づくことができます。

開眼(E)
Eye Opening
自発的に開眼する 4
呼びかけで開眼する 3
痛み刺激により開眼する 2
まったく開眼しない 1
最良言語反応(V)
Best Verbal Response
見当識はある 5
混乱した会話 4
不適当な会話 3
理解不明の音声 2
まったくない 1
最良運動反応(M)
Best Motor Response
命令に従う 6
痛みを払いのける 5
痛みに対し四肢を引っ込める 4
痛みに対し異常屈曲(除皮質姿勢) 3
痛みに対し異常伸展(除脳姿勢) 2
痛みにまったく反応がない 1

頻繁に意識レベルの評価を行う診療科の看護師であれば、スケールの内容は覚えているものですが、評価の機会が少ない診療科では難しいのではないでしょうか。
2012年のBRAINのなかで吉崎は、
意識の3本柱は、

  1. 1)呼びかけへの反応
  2. 2)見当識
  3. 3)運動反応

であると述べています。
スケールに慣れていない場合は、まずこの3点についてアセスメントしてみると良いでしょう。
また、脳卒中の病院まえスケールであるCPSS(どれか1つでも異常を認めたら脳卒中を強く疑う)を使った評価は、脳神経外科病棟以外の看護師でも理解しやすいので、ナースステーション内に掲示するなどして活用することをおすすめします。

筆者が経験した事例から、思考過程を振り返る

事例)脳出血で入院した弘子さん(仮名)70歳
筆者が脳神経外科病棟に移動した直後に経験したケースです。
弘子さんは小さな脳出血で入院、保存的な治療をすることになりました。
入院時の意識は清明で、はじめての入院に戸惑っていました。
降圧剤を内服していますが、自営業で朝は忙しく飲み忘れが多かったとのことです。
入院翌日、筆者が検温で病室へ行くと、弘子さんは眠っていました。
声をかけると開眼しますが、すぐに目を閉じてしまいます。
「お変わりはないですか?」と問いかけても、もごもごとはっきり答えません。
急な入院で緊張していたでしょうし、ただ単にとても眠いだけのようにも見えます。
そこで先輩看護師に相談して一緒に見てもらうことにしました。
先輩看護師はすぐに意識レベルの判定を始めました。
JCSでは声かけですぐに開眼するのでⅡ-10、GCSでは声かけで開眼するのでE3点、いくつか質問したところ見当識障害があったためV4点 、口頭で両上肢の拳上を指示してもできず、痛み刺激でようやく看護師の手を払いのけるような動作がありM5点と判定し、EVMの合計は12点でした。
筆者はJCS、GCSによる評価によって、はじめて弘子さんに意識障害があることが分かりました。
すぐに弘子さんの意識レベルが低下していることを主治医に報告し、頭部CTの結果出血の拡大が認められました。

検温時、弘子さんは布団をかけて眠っていたため、筆者は運動反応のことまでは考えられませんでした。
また、声をかけたときの話し方に少し違和感があったものの、その場が脳神経外科病棟でなければ 、意識の評価が必要であると判断できたかは自信がありません。
脳出血で入院していること、そこが脳神経外科病棟であったこと。
この2つの情報があったからこそ「意識の評価をしたほうが良い」という考えに至ることができたのです。
弘子さんは頭痛と右手足の軽い脱力感があり、脳外科を受診しました。
頭痛だけなら内科を受診していたかもしれませんし、脱力感だけなら整形外科を受診していたかもしれません。
診療科によってアセスメントするポイントの優先度は違います。
しかし、患者さんの症状を多角的にアセスメントできなければ、急変を見逃してしまうこともあると実感した出来事です。

まとめ

脳神経外科疾患の急変は、初期対応が予後を左右するといっても過言ではありません。
実際に2006年からISLS(脳卒中初期診療)、2007年からPSLS(脳卒中病院前救護)という2つの教育コースが開催され、その重要性が広く認識された形になりました。
医療関係者だけでなく一般にも啓発活動が行われている今、病院内で起きた急変の初期対応に時間を要すことがあってはなりません。
脳神経外科のみならず、他科の知識向上への取り組みが必要であると考えます。

参考:
なんとなくはもう卒業!今日からわかる神経所見のとり方.BRAIN,医学出版,東京,2012,pp509

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