整形外科・リハビリ病院が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

クリニック・治療院 OGメディック

PT・OTが身につけたい転倒予防の知識。リハビリで求められている評価と介入

高齢化社会を迎える今、解決しなければならない課題は山積しています。
近年は転倒によって骨折や寝たきりに直結するケースが増加しており、リハビリ領域においても予防的な介入を意識する必要があります。
今回は、高齢者の転倒について原因を整理し、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が活用できる評価や介入の視点をお伝えしていきます。

転倒の背景にある「内的要因」と「外的要因」

高齢者の転倒について考えるときは、まず転倒を引き起こす原因について理解を深めておく必要があります。
転倒リスクと一言で表しても、背景にはさまざまな要因があるからです。
一般的に転倒要因について論じるときは「内的要因」と「外的要因」に大別されるため、こちらに従って違いを確認していきましょう。

●本人の特性に起因する「内的要因」

転倒リスクを考える上では、まず個人の特性や状態に起因する「内的要因」について整理する必要があります。
内的要因の代表的な例は筋力やバランス機能の低下であり、個人に起因する要素であることが特徴です。
そのほかに、視覚障害・注意障害・薬剤による影響なども内的要因に含まれます。
転倒リスクの内的要因に関してはリハビリで対処できる部分も多いため、患者さんのニーズに応じたアプローチを行います。

●環境的な条件による「外的要因」

床の滑りやすさや部屋の明るさ、障害物の有無など、環境的な面で転倒リスクを高めるファクターについては「外的要因」と呼びます。
転倒を引き起こす可能性がある外的要因は、できるだけ排除していく必要があります。
実際の生活環境においては床の電源コードや小さな段差など、数多くの障害物があるため必要に応じて環境整備を行っていきます。

転倒予防のためにPT・OTが活用したい評価法


転倒リスクを高める要因は多岐に渡るため、多角的な評価が必要になります。
今回は、数ある評価法のなかでもPTやOTが臨床ですぐに使えるスケールに着目し、いくつかの検査方法をご紹介していきます。
すでにご存じの評価法もあると思いますが、いま一度正しい検査方法やカットオフ値を確認してみてください。

●片足立ち

片足立ちは非常に簡便な評価法であることから、日々の臨床において有効に活用していきたいところです。
高齢者の理学療法診療ガイドラインのなかでも、推奨グレードA?Bの評価法として含まれています。
測定結果が5秒以内の場合は転倒ハイリスクとされており、簡便でありながら転倒リスクを探る手がかりになります。

参考:
身体的虚弱(高齢者)理学療法診療ガイドライン

●TUG

TUGは「Timed Up & Go Test」の略です。椅子から立ち上がって3m離れた地点にある目印を歩いて回り、再び椅子に戻るまでの時間を測定します。
通常の歩行速度での試行も可能ですが、最大歩行速度で実施した方が転倒リスクとの関係は深いと考えられています。
安全面に配慮しながら、「できるだけ早く歩いてください」という教示でタイムを測定してみましょう。
カットオフ値は13.5秒とされていますが、8.5秒以上では約20%に転倒経験者が含まれるというデータもあります。

参考:
島田裕之,古名丈人ら:高齢者を対象とした地域保健活動におけるTimed Up & Go Testの有用性.理学療法学33,2016

●FRT

FRTは「Functional Reach Test」の略であり、こちらは簡便なバランス検査の一つです。
片方の腕を90度に挙上し、前方に向かってどこまで手を伸ばすことができるか距離を測定します。
Duncanらの報告(1992)によると、FRTの結果が15.2cmを下回る高齢者では転倒の危険性が高くなると示されています。
FRTは特別な道具が必要ない検査法として利便性が高いですが、測定における誤差を最小限にするためにリーチ測定器の導入も視野に入れてみましょう。

参考:
Duncan PW, Studenski S, et al.: Functional reach: predictive validity in a sample of elderly male veterans. J Gerontol47, 1992

転倒予防に効果があるリハビリの種類

リハビリにおける転倒予防では、まず転倒要因を分析することから始めます。
観察評価や患者さんの雰囲気だけで判断するのではなく、先にご紹介したTUGやFRTなどの評価スケールを用いて客観的に分析していくことも必要です。
リハビリにおいては、患者さんの転倒を引き起こすさまざまな因子を分析し、それに対するアプローチを行うことが求められます。
具体的にどのようなアプローチが効果的なのか、最近の見解をご紹介していきます。

●転倒予防に使える運動の種類

2015年に日本転倒予防学会誌に掲載された「高齢者の転倒予防の現状と課題」のなかでは、転倒予防に有効な運動の種別が次のように分類されています。

  • 1) 歩行、バランスそして機能訓練
  • 2) 筋力増強、抵抗運動
  • 3) 3D訓練(3次元方向の一定した繰り返し運動)
  • 4) 一般的な身体活動
  • 5) 柔軟
  • 6) 持久力訓練

この総説のなかで、筋力増強訓練やバランス訓練を単独で行うことには効果が期待できないと述べられています。
近年は筋力やバランスの訓練など、複数の要素を組み合わせることによって効果が期待できるという見解が主流になってきているのです。
単純に筋力トレーニングなどを繰り返しても、逆に筋骨格系の障害を引き起こす可能性があるだけで、転倒予防効果は不十分と考えられています。
リハビリにおいては、単一の要素にフォーカスするのではなく、転倒に関連する複数の機能に対して包括的に介入していく姿勢が求められています。
また、3D訓練に該当する代表例としては「太極拳」が知られています。
近年、太極拳が転倒予防にもたらす効果については世界的にも注目を集めており、特に転倒リスクが低い方には効果があることが証明されています。

参考:
大高洋平:高齢者の転倒予防の現状と課題.日本転倒予防学会誌1, 2015

●環境調整で転倒予防をサポート

転倒リスクを高める外的要因についても、リハビリのスタッフが対策を検討していきます。
環境調整に関しては、患者さんの個別性に合わせて対応していく必要があるため、大規模な調査研究は実施しにくいという側面があります。
しかし症例報告では、環境調整が転倒予防につながったというケースも散見されます。
たとえば、第52回日本理学療法学術大会では、環境調整が転倒予防に貢献したという事例が紹介されています。
この報告では70代の女性に対し、リハビリテーションの一環として環境調整を行っています。
まずは生活動線の確保を行いましたが、その後も1カ月に3回の転倒が確認されました。
転倒した場面について詳しく分析したところ、電話対応に向かう際に多く転倒していることがわかりました。
それを受けて電話子機を導入した結果、慌てて屋内を移動する必要がなくなり、転倒回数が減少したと報告しています。
この症例報告からは、患者さんのライフスタイル・個別性に応じた環境調整の必要性を学ぶことができます。
転倒が起こる時間や場所などを分析することによって、生活場面のどこに転倒のリスクが潜んでいるのかを明らかにすることが可能なのです。

参考:
宇都宮 稜,井上 達貴:環境整備による生活動線の確保が転倒,介護負担軽減につながった1症例.第52回日本理学療法学術大会抄録集,2016

まとめ

PTやOTは、リハビリ業務の一環として転倒予防に向けたアプローチをしていく必要があります。
従来のように単調な筋力トレーニングをしていれば良いという時代は終わり、近年は多角的な介入が求められています。
まずは客観的な指標を使って評価をすることが前提ですが、実際の介入においては機能訓練や環境調整を合わせて包括的な支援を心がけていきましょう。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)